第六話 囚われの騎士
牢屋が並ぶ薄暗い部屋を三人の男女が歩く、神無と玲奈そして…先程首元に短刀を当てられ顔が青い日本人のユウヤだ。
「こっこんな事して許されると思うなよ!俺は勇者何だぞ!転移者で選ばれた人間何だぞ!」
「勇者はツボ割るくらいなら許されるが先の横暴は許されんぞ」
「そうそう、少し調子に乗りすぎだよ勇者様」
喚く転移者をあしらいながら、目的の場所に行く…二人は既に奴隷商の亡骸から首輪の鍵と金を取り其で首輪を外したのだ。
「この……奴隷の分際で」
二人にあしらわれるユウヤは顔を真っ赤にしながらそう吐き出す。
「凡人の分際で」
だが直ぐ様神無にそう言われ、手を怒りで震わせながら腰に差している剣に手を掛ける。
「止めた方が良いよ勇者様、僕ら君の事殺しちゃうよ」
そう言いながら、玲奈はユウヤの目の前に居た……首にはやはり短刀が突き付けられていた。
神無はそんな二人を無視して歩き続ける、玲奈は続けてユウヤに言う。
「君の腕じゃあ僕らは斬れない……どころか鞘からも抜けないだろうね、余り変な真似しない方が身の為だよ勇者様……ちょっと神無待ってよ!」
言い終えればスッと短刀をコートに戻し、神無の後を追って行った……その後ろ姿を見ながらユウヤはペタリと冷たい地面にへたりこむ。
顔は恐怖で歪み、涙を流していた。
先の玲奈の表情……目が一切笑って居なかった、まるで研ぎ澄まされた刀の様だった。
力を得ただけの凡人 ユウヤには分からないが玲奈は彼に気絶しない程度で素人でも探知できる位の絶妙な殺気を放っていた。
先に歩いている神無は自分に向けられていない殺気を感じながら、目的の牢屋を見る。
其処には薄汚いボロに包まれた、美人が居た……うずくまって居るため良く分からないがおおよそ…スタイルの良い体型をしているだろうと推測出来る。
「誰だ?」
女は顔を此方に向けながらそう言った、目には敵意があった。
「そうだな……助けに来たっと言うべきだな」
そう言いながら、徐に大典太光世を抜き牢屋の鍵を斬る。
「まぁ……助けに来たと言うのだから当然だ、だが奴隷のお前が何故此処に居る?いや……買われたのは想像出来るが…飼い主は何処だ?」
「脅して従わせてる、何せ勇者様だからな首に刃物当てれば直ぐさ」
そう言えば、女は驚いた顔をした
「勇者に買われたのか…其は可哀想にな奴等は常に傲慢な態度を取って従わない奴にはひどい仕打ちさ」
「アンタの様にか?」
「あぁ!元はこの国の騎士団長だったが王は余程勇者殿が好きな用だな」
女はそう言いながら唾を吐き捨てる…その姿を神無は哀れに思っていた…この廊下を鎖に繋がれながら歩いていた時から、主に見捨てられた忠実な戦士の様な雰囲気を出していたこの女の事を気になっていた、案の定彼女は仕えていた主に見捨てられていた……最悪な事に有能な人間の為に捨てられたのでは無く、恐ろしく無能な転移者の為に捨てられたのだ……彼女の無念は戦士の身とすれば痛いほど分かる。
故に神無は大典太光世を鞘に収め、代わりに短刀を抜き身長に彼女の手枷と首輪を切断する。
その後彼女に手を差し向け言った
「さて騎士様、アンタの様な戦士がこんな場所に居て言い筈が無い……良ければ共に来てくれれば嬉しい」
そう言った途端、彼女は神無に跪く。
「仰せのままに我が主」