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この「本格ミステリ」が読みやすい!  作者: 庵字
和製エラリー・クイーン『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎 著
9/84

『法月綸太郎の冒険』プレビュー

 三冊目は、これです!


法月綸太郎(のりづきりんたろう)の冒険』 法月綸太郎 著


 タイトルと作者名を目にしたあなた。この作品は、法月綸太郎なる人物が探検隊を結成し、アマゾンの奥地に獣人を求めた壮大なる自叙伝的冒険譚! ではありません。「法月綸太郎」とは、作者の名前であり、また作中に登場する探偵の名前でもあるのです。これはアメリカのミステリ作家、エラリー・クイーンと同じ手法です。本作(法月綸太郎シリーズ)は他にも、探偵綸太郎の職業が作家。父親が警察官。など、クイーンと同じ設定を持っています。(あとは、ショタっ子召使いのジューナの代わりもいれば……何でもありません)


 さて、法月綸太郎といえば、非常な寡作で、ミステリファンの間では「悩めるミステリ作家」のニックネームで知られています。作家として本格ミステリの実作品を書くことはもちろん、ミステリに関する優れた評論をいくつも発表しており、ミステリ界の頭脳とも言うべき重鎮です。寡作ゆえに発表される作品に外れがないことでも有名な法月作品の中から、初心者向けにひとつ選ぶとするなら、やはりこれでしょう。本作は短編集です。ミステリ作品の短編集に「冒険」とは違和感を憶えるかもしれませんが、『(探偵名)の冒険』というのは、シャーロック・ホームズやエラリー・クイーン時代から続く、ミステリ短編集の由緒あるネーミングなのです。


 収録作品は以下の七作品「死刑囚パズル」「黒衣の家」「カニバリズム小論」「切り裂き魔」「緑の扉は危険」「土曜日の本」「過ぎにし薔薇は……」

 中から、「死刑囚パズル」のあらすじをご紹介しましょう。


~あらすじ~

 ある拘置所で死刑囚の刑執行が行われようとしていた。手錠をはめられて目隠しをされ、踏切台の上に立たされた死刑囚は首を絞縄に通される。あとはもう足下の踏切板が落下することを待つのみ。が、突然死刑囚は喉から苦悶の叫びを漏らし、激しく体を痙攣させる。死刑囚はその首に縄を食い込ませる前に絶命していた。

 調査により、死刑囚が最後に飲んだお茶の中に毒物が混入されていたことが判明した。放っておいても数分後に死刑執行がされてしまう死刑囚は、なぜわざわざ殺害されたのか? 探偵法月綸太郎が捜査を開始する。


 刑執行直前の死刑囚を殺す、という前代未聞の犯罪を前に、綸太郎の推理が冴えます。

 本短編集は二部構成になっており、四作目の「切り裂き魔」以降は「図書館シリーズ」と銘打たれ、ここで私の一押しキャラクターである、シリーズレギュラーの図書館司書、沢田穂波(さわだほなみ)が登場します。この沢田穂波のルックスについて、本文から拝借してみましょう。


 色白だが、意外に気が強そうな顔だちである。前髪を上げ、額を空けているために余計そう見えるのだろう。あまり度の入っていない大きな黒い縁の眼鏡をかけているのは、わざと不美人に見せようとしているのだろうが、ほとんど成功していない。


 光の速さで萌えますね。理知的でクールな綸太郎が、この穂波に軽くあしらわれる場面などは、「綸太郎、お前ちょっと代われ」と言いたくなります。

 最初の三編はガチガチの本格。後半四編は、ちょっとライトなキャラミス(しかし、そこで展開される論理と解決はガチです)として、一冊で二度美味しい短編集といえるでしょう。「死刑囚パズル」を読み始めて、「ちょっと重いな」と感じられた方は、「切り裂き魔」から読み始めてもいいでしょう。


 それでは、お読みになられたら、また、「ネタバレありレビュー」でお会いしましょう。

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