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この「本格ミステリ」が読みやすい!  作者: 庵字
特別企画『オリエント急行殺人事件』読み比べ!
82/84

入場! 6冊の『オリエント急行』

 本エッセイは「読みやすい」を命題としているため、これまであえて「翻訳もの」を紹介することは避けてきました。ミステリ好きの読者の中でも、翻訳ものを敬遠する方は多いのではないでしょうか。「どうして翻訳ものを読まないのか?」と訊くと、返ってくる答えは「読みにくいから」というのが最多を占めるかと思います。確かに翻訳ものは基本、読みにくいです。外国語で書かれたものを日本語に訳すという段階を踏まえているうえ、登場人物名も全員カタカナで憶えにくいことも理由に挙げられます。

 とはいえ、当然ですが翻訳ものにも面白いミステリは無数にあります。特に「古典」に分類されるものは、現代ミステリの基礎となった優れた作品が数多く含まれています。「読みにくいからって、読まないなんてもったいない」と私は思うのです。

 そこで今回、初めて翻訳もの、海外ミステリを取り扱ってみることにしました。それも、ただ取り扱うだけではありません。「翻訳もの」ならではの楽しみ方をしてみようじゃないかという特別企画です。その楽しみ方とは、「翻訳読み比べ」です。当たり前ですが海外作品は、原語が読めるという方以外は、日本語に翻訳されたものを読むしかありません。この「翻訳」という作業に人の手が入っている以上、同じ原典を用いていたとしても、全てが全く同じ訳文になることなどあり得ません。そこで、同じ作品の翻訳本数冊を比較してみようじゃないかということです。


 この企画に私が選んだのは、「ミステリの女王」アガサ・クリスティの生み出した永遠の名作『オリエント急行殺人事件』(『オリエント急行の殺人』)です。超有名作であることから、本作は多くの出版社から翻訳刊行されています。「翻訳読み比べ」にはうってつけの作品と言えるでしょう。

 今回読み比べてみるのは、六作品。

 まず、クリスティといえば「ハヤカワ文庫」。ミステリ文庫の代名詞「創元推理文庫」。最近に新訳された中から二冊、「角川文庫」と「光文社古典新訳文庫」。変わったところで、児童向けの「偕成社(かいせいしゃ)文庫」。そして、特別ゲストとして、現在流通されていない「新潮文庫」も加えることとしました。


 では、改めて全選手(書籍)に入場してもらいましょう!




「地上最強の『オリエント急行殺人事件』(『オリエント急行の殺人』)を読みたいか―――ッ!」

「オ――――!!!!」


 ワシもじゃ。ワシもじゃみんな!



「全書籍入場です!!!!」


「海外ミステリなら絶対に()けん! アガサ・クリスティ社公認の新訳見せたる。ハヤカワクリスティー文庫『オリエント急行の殺人』(山本(やまもと)やよい訳)だ!」


「ミステリだったらこのレーベルを外せない! 創元推理文庫『オリエント急行の殺人』(長沼(ながぬま)弘毅(こうき)/訳)だ!」


「文庫は安価に買えてナンボのモン! 新刊最安値! 角川文庫から『オリエント急行殺人事件』(田内(たうち)志文(しもん)訳)の登場だ!」


「『いま、息をしている言葉で、もういちど古典を』とはよく言ったもの! 丁寧な注釈が今ページの隅でバクハツする! 光文社古典新訳文庫『オリエント急行殺人事件』(安原(やすはら)和見(かずみ)・訳)だ――!」


「児童向け図書は生きている! 完訳版となり名作が甦った! 偕成社文庫『オリエント急行殺人事件』(茅野(ちの)()()訳)だァ――!」


「絶版の翻訳が今ベールを脱ぐ! 新潮文庫から『オリエント急行殺人事件』(蕗沢(ふきさわ)忠枝(ただえ)訳)だ!」


 以上六作品を読み比べます!

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