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この「本格ミステリ」が読みやすい!  作者: 庵字
転生したら爺さん社長だった件『キマイラの新しい城』殊能将之 著
26/84

『キマイラの新しい城』ネタバレありレビュー

『キマイラの新しい城』いかがだったでしょうか。

 ミステリとしてはもちろん、時空を越えた未来都市「トキオーン」に迷い込んだ稲妻卿エドガー、彼を助ける現代の騎士カゲキ、潜入捜査員ルミをはじめ、とても魅力的なキャラクターだらけでした。

 現代に起きた「密室殺人事件」は、エドガー視点で描かれるからこその「密室」であるという仕掛けが面白かったですね(残念なことに、現代の名探偵石動戯作(いするぎぎさく)自身も「密室」だと勘違いしてしまうのですが……)。

 巻末に列挙された膨大な参考・引用文献による圧倒的知識から生み出された、この費用対効果が悪すぎる本格ミステリ。当初は「バカミス」(あまりにバカらしく、アホらしいトリックを用いた本格ミステリ作品に冠せられる称号)などと言われた本作ですが、今の基準で読めば、十分「本格」しているのではないでしょうか(叙述トリックを組み合わせた心理トリックと言えるでしょう)。本作の初刊行は2004年。あまりに早すぎた名作でした。


 冒頭に登場キャラクターの魅力を書きましたが、名探偵石動と助手アントニオも魅力溢れるコンビです。通常の名探偵とワトソンの図式ではなく、「実はワトソンであるアントニオのほうが只者ではない」のです。ですが、アントニオはいいやつで常に一歩引いて石動を立て、よくある「名探偵と彼を崇拝するワトソン」という関係であるかのように見せてくれている(アントニオが実際に石動のことが大好きであることは本当ですが)。実にバランスの取れた名コンビです。


 作者の殊能将之(しゅのうまさゆき)は、2013年に49歳の若さで鬼籍に入りました。ただでさえ寡作作家であったことから、石動(助手のアントニオは出ない作品もあります)が活躍する作品は本作を含めて5作品しかありません。年齢と殊能のスタイルを考えれば、これから優れた、また殊能にしか書けないスタイルのミステリをどんどん生み出してくれたはずでした。


 それでは、次回の本格ミステリ作品で、またお会いしましょう。

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