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この「本格ミステリ」が読みやすい!  作者: 庵字
魔法少女探偵登場『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』東川篤哉 著
23/84

『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』ネタバレありレビュー

魔法使(まほうつか)いは完全犯罪(かんぜんはんざい)(ゆめ)()るか?』いかがだったでしょうか。

 軽快な文章とクスリとするギャグで、ストレスなく、さくさくと読み進められたのではないかと思います。

 さて、プレビューで触れた「本作が倒叙形式である理由」皆さんはお気づきになったでしょうか。そうです。それは「本作の推理が『魔法』を担保にしたうえで成り立っている」という危険さを排除するためなのです。

 全ての事件で、主人公小山田(おやまだ)は、マリィの魔法による犯人の自白を得て、それを保証する証拠探しに奔走することになります。通常のミステリですと、「証拠発見→推理→犯人推測」もしくは、「推理→犯人推測→証拠探し」となる手順の「犯人推測」が一番前に来て、それを本作は「魔法」に丸投げしてしまっているのです。もし本作が、通常の犯人が伏せられた形式の小説だったら、読者の目にはどう映るでしょうか?

 捜査が暗中模索のところ、マリィが「魔法」を使って容疑者のひとりから自白を得る。小山田はその自白を前提に証拠探しに入る。出てきた証拠を犯人に突きつけてとどめを刺し犯人逮捕。めでたしめでたし。

 非常に胡散臭くなること請け合いです。マリィが「魔法」によって自白をさせたなら、また、小山田が得た証拠もマリィ(もしくは別の魔法使いの仕業)による捏造された証拠。最後に犯人が観念するのも「魔法」による操り。「これは魔法を使った冤罪事件ではないのか?」という可能性が払拭しきれないまま、物語は終わってしまいます。これを回避するために東川(ひがしかわ)は「倒叙」を使ったのです。前もって犯人が犯行を行うところを読者に見せておくことにより、「犯人は間違いなくこいつです。マリィの魔法に誤謬はなく、作中に冤罪の可能性はありません」と作者(神)が保証しているわけです。

 では、収録作を振り返ってみましょう。


「魔法使いとさかさまの部屋」

 エラリー・クイーンの『チャイナ(だいだい)の謎』ばりのさかさま部屋の理由は、片腕が不自由な犯人が犯行を行えたはずがない、という物証を担保するために作られたものでした。

 犯行現場以上に異様に思えるのは、主人公小山田の椿木綾乃(つばきあやの)警部に対する倒錯した愛情でしょう。三十九歳という絶妙なお年頃の独身女性に危険な愛情を抱く小山田。どうしてこんなエキセントリックな設定を思いつき、そして書いてしまったのか。こんなマニアックな設定に、私以外何人の読者が共感を持ったのか疑問なところです。


「魔法近いと失くしたボタン」

 コメディの宿命。本シリーズには、時事ネタを扱った笑いが随所に織り込まれています。なるべく賞味期限内に味わいたいです。数年後に本作を読む若い方は「ビリーズブートキャンプって何?」と疑問を持つかもしれませんね。

 犯人が死体を搬入するシーンで、「最後の決め手」に感づかれた方もいらしたのではないでしょうか。


「魔法使いと二つの署名」

 犯人が完璧にコピーした「署名」そのものではなく、それを使った筆記具から計画が崩れ去る。という展開に意外性がありました。犯人が自分しか知り得ない情報をもとに、多くの似たようなものの中から思わず犯行に使用されたものを手にしてしまう。倒叙ものでは王道の展開ですが、本作でも効果的な形で使われていました。倒叙ものを書く作家は、必ずこれをやりたくなるんですね。


「魔法使いと代打男のアリバイ」

 本作は珍しく、マリィが使った魔法による「魔法が打たせた本塁打?」が事件解決に一役担うという、魔法が事件内容に関与する展開となりました。この話がきっかけで、マリィは小山田刑事の家に住み込みで働くことになり、本シリーズは第二作『魔法使いと刑事たちの夏 』に続刊します。

 本作を読んで、面白いと感じられた方は、ぜひ続刊も読んでみて下さい。


 それでは、次回の本格ミステリ作品で、またお会いしましょう。

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