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存在感

逃げ帰った家にはしばらくしたらすっと実菜が現れた。


「ねえ、優大丈夫なの。美鈴には私が上手く説明しておくからさ」

「ああ、すまんがもう帰ってくれないか」


俺は今自分がパーフェクトな人間であるという自分へのバリアに釘が一本突き刺さったと感じていた。今まで一度も揺るぐことのなかった壁。触れさせもしなかった壁。実はその壁は釘一本で完全に大きなひび割れが何本も入ってしまった。


なあ実菜、頼むからもう少し一緒にいてくれないか。俺は知っている。実菜は致命傷の俺を見捨てて帰るような女じゃないだろう。ついでなら飯でも食いに行こうとか、誘ってくれてもいいんだぞ。


「そっか、じゃあ今日は帰るね。美鈴も待たせてるし」


あっけないほど簡単に玄関のドアが閉まり静寂が訪れた。


「え、ええ」


俺が勝手に手のひらの上で動かしていたはずの実菜が、俺でなく美鈴を選んだ。

むなしくてテレビの音を求めると夜にかけて雨が降るらしい。


何かを思い出そうとして、けれども疲労困憊は全身に襲いかかり、俺は目を閉じた。


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