万能感
世の中にパーフェクトな人間はいないと言う。だが俺は限りなくそれに近いと自負している。
誰よりも勉強ができる。それくらいならクラスに一人、学年や学校では複数いるはずだ。
だが決まってそんな奴らはプライドが高すぎる。いかに優れているかを常に自負し、顔や口に出さない奴は心の中にラッピング付きでしまってある。人と比べて自分が優位に立つことが嬉しくて仕方がない。ライバルが現れても、完全に打ちのめされるまでは自分の勝利を信じて果敢に挑み続ける。ただ、完全に打ちのめされると身も心もボロボロになり、再起不能になるような、弱いメンタルの持ち主であることが多い。
ブランドや金に物を言わすことに全力を尽くす奴もいる。
全身に数百万の服や鞄、装飾品を身につけ、視覚的に自分の価値を換金したらすごいのだと見せつける。もしくは整形して自分を限界より美しく見せようとする。
だがそういう奴らは常に怯えている。自分に自信がないからだ。自分の詳細を隠すために目先の貴金属にもしくは服に鞄に目線を集中させる。自分でなく、自分の経歴が、財産が、外見がいかに素晴らしいかをアピールする。気がついたら、持って生まれた玉のような輝きが、しわしわのレーズンになっている。彼ら彼女らにできることと言えば、自分のレーズンをいかに綺麗に隠すこと。あとは他人のレーズンよりも少しはマシであると祈り怒り震えるだけである。
そんな奴らに憎まれることも貶められることも面倒くさい。慕われるとさらに困るので、俺は決して目立たない。
普通の外見にシンプルな服装、普通すぎて誰かと比べられることもない。比べられるほどの深い人間関係は持たず、友達は多いが親友はいない。だが突然足をすくわれたら綺麗に着地できるし、知能が必要な質問には全て答えることができる。スポーツだって万能だし、自分をどの角度から見ると美しく見えるか、地味に見えるか熟知している。
知識も外見も恵まれ、性格や心の挙動には磨きがかかっている。
そう、俺の基準の中で俺はパーフェクトなのだ。ただ一つのことを除けば。
俺が信頼できる女性は森ヶ咲実菜、ただ一人だけだ。




