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働きアリの休日

作者: 東京多摩

 築数十年の木造の家の自室に、蟻の行列が出来ていた。

 体長1CMにも満たない黒々した体で、私の部屋に放置されていたスナック菓子を齧りとり、来た道を帰っていく。

 何も考えず寝転がりながら蟻たちを見ていると、ふとこの蟻たちはどこから来ているのかと疑問が出てきた。

 立ち上がり、スナック菓子の袋をから出ていく蟻を目で追っていく。

 机を降り、畳を藺草の筋目の通り行軍し、白い壁紙の張られた垂直な壁を登ると少しの隙間が空いていた窓から外へ出て行った。

 そこまで確認すると、私はサンダルを履き、家の玄関からぐるりと回り外から私の部屋の窓を通り動く蟻の行列を確認する。

彼らは何も言わず、黙々と歩き近くの藪の根元にある我が家へと吸い込まれていく。

 そして、また餌を置いた者からもう一度外へ這い出てきて、私の部屋を目指すのだった。

 その中で、一匹だけ物を咥えて出ていた蟻がいた。

 黒く小さい物を強靭な顎でつかみ、ぞろぞろと私の部屋を目指す蟻からは離れていった。

 少し遠くまで歩くと、蟻は咥えていたもの、仲間の死体を置くと、そのまま巣穴へと戻っていった。

 私はその死んだ蟻に土をかけ、小石を置いて簡素の墓を作ってやった。

 彼は何を思い、働き、そして死んだのか。

 土の下の蟻は何も言わず、行列を作る蟻たちも何も言わない。

 私も口を開かず、ただ時折吹く風が木の葉をさらさらと揺らすだけだった。

 

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