クフィル
一週間待つのが死ぬほどきつかった。
.....悪かったね、子供で。俺だってまだ15才だもん。子供だもん。
あれだ、遠足の前の子供だ。
待ちに待った今日、ゆっくりと朝食をとって自分を焦らす。
でもジープに乗った時刻はいつもよりずっと早かった。
焦ってるんだろうな。
仕方ない、素直に急ごう。
車を走らせた。
# # # #
例の飛行場に着いた。
ガレージに向かう。
あくまで落ち着いて動く。
ノックして入る
クフィルには既に燃料が入り、すぐに発進出きるようになっていた。
商人に金をわたし、契約書にサインを書き、操縦席に乗り込み、エンジンを始動し、ガレージを出る。
滑走路のはしまで移動し、スロットルを開く。
アフターバーナー オン
ロケット ブースター オン
加速
加速
加速
負荷
操縦悍を引く
簡単に浮く
ロケット ブースターを切り離す
翼をふって
機首上げ
背中に負荷
上昇
空しか見えない
どこまでも上がっていける気がして
上がっていける
きっと
きっと
上がって行けるだろう。
限界まで上がったらどうなるのだろう。
上がって
上がって
雲にはいって
出口にちかづいて
点だった光は
どんどん大きくなり
トンネルから出ていくときのように
周りが光に包まれ
操縦悍を引いて
背面になりゆっくりと
堕ちていく
高度計は狂ったように回る
速度計は一定のスピードで周り
地面がみえ
横を見ると地平線
後ろに空
操縦悍を引いて
基地のところに向かう
エンジンを止め
無線を切り
風切り音だけ
基地に滑空して着陸した。
# # # #
次の作戦は明日だった。
ハンガーへ向かう。
暗いハンガーの中でライトに照らされたクフィルが照らし出される。
エアダクトの芸術的な曲線が美しい
柔らかくも強い輪郭は名前の通り
子獅子だ
機体をさわる。
冷たいジェラルミンが心地よい
翼の上によじ登り
操縦席のなかに入り
目を閉じる
僕はパイロットで
空を飛び
人を殺して
食堂で
飯を食べ
部屋で
寝る
それ以外に
何が
必要
なのだろう
『人殺しはよくない』
誰かがいっていた
じゃあお前は人殺しだ
お前は人殺しだ
食べていけず
死んでいったやつを
僕は知っている
10円で助かった命を
僕は知っている
10円のガムを買うことは
命と
ガムを
天秤にかけ
ガムをとった
ということなのだ
僕がやっているのは
間接的なのを
直接やっているだけなのだ
なにも知らない人殺しが
平和と叫ぶ
なにも知らない人殺しが
戦争反対
僕は笑った
なにも知らない人殺しと
少しだけ知っている人殺しを
僕は笑った
腐りきった世の中と
美しい空を
暗いハンガーのなかで
僕は笑った