エピローグ
あのカミカゼには悪魔が乗っていた
どんなにうまいパイロットでも、急降下突入時には機首上げの前に操縦悍を動かしてしまうものだ
それなのにあのカミカゼは突入時まで補正以外には使わなかったんだ
あれは…きれいだった
あれに乗っていたパイロットが空中戦を挑んで来たら
俺は勝てなかっただろう
逆に
俺があのカミカゼパイロットだったら
俺は死んでいるだろう
並みの…いや一騎当千のエースパイロットが、最新鋭機で挑んできてもアメリカの防衛網は崩せないだろう
それを、奴はやってのけたんだ
相手はクフィルに乗っていた
そのクフィルはどこからともなくあらわれてワシントンについた途端上昇して、逆落としに攻撃してきたんだ
奴がホワイトハウスに突入するとき、俺らは何もできなかった
ミサイルは撃った
だが、F-15のAN/APG-63レーダーは進行方向に垂直に動いている物体は捕捉しにくい
AIM-120は使えない。
サイドワインダーは撃った。だが、届かなかった
急降下で堕ちていく機体は墜とそうとしなくても墜ちる。
だから、墜ちていく機体を落とす武器はない
急降下するクフィルに追いつけなかったんだ
奴が突入する瞬間を俺は見ていない
スプリット・Sで逃げたんだ
ただ、やばい と思ったんだ
すごかった
ホワイトハウスが火に包まれ
そこからドーム状の火が広がって
俺はアフター・バーナーを開いて逃げた
衝撃波が天使の輪のようだった
すごい勢いで衝撃波が広がって
逃げ切れなかった
いきなり突き上げられるような衝撃
赤いドームはワシントンを包み込んでいた。
俺は基地に帰った
夢を見てるみたいだった。
基地について、誘導路から抜けて、エプロンに停まった
いきなり涙がこみ上げてきた
泣いた
大泣きした
夕日が
揚がっていた