第一部:俺の場合/なにもない朝
【案内係】
『鋼鉄製雑務型道人/安内さん』
「この物語はフィクションです。
実際の地名、団体名、人名、職業など、その他諸々は現実のものと『一切』関係ありません。
この物語には専門用語が少しばかり多いですが、ご安心下さい。
要は『戦闘メインではなく大きくなった武装○姫の物語』と思っていただけたら幸い…だそうです。
それでは【Iって夢かい!?】。
お楽しみ下さいませ…」
――雨が降っている。
いつもは涼しくて、冷たくて。
いつもは軽くて、こころなしかわくわくしてて。
でも、でも。
――雨が、降っている。
今は寒くて、冷たくて。
今は重くて、気持ちも重くて。
『九十九機関の強化ユニットの実験の失敗…なのよね?』
『噂では若い研究員が先走ったらしい…それに気付いた夫妻が』
『他の職員を逃がし、夫妻は逃げ遅れた…か』
『逃げた職員は無傷。研究所そのものは残っているけど…』
『もうやめてあげて』
『・・・そうだな』
周りの話す声が聞こえるけど、
いや、聞こえたけど、意味はない。
聞かされたからと言って、あの人たちが返ってくるはずがない。
事実、死体の欠片すら帰ってきてないと聞いている。
目の前には死体の無い、墓と言うには意味を成さない、綺麗な石の置物。
大好きだった祖母の葬式の時と似ている。
――数日すれば、お土産と笑顔を連れて、僕を「ただいま」って、
――抱き締める。そんないつもの光景。
でも。でも。でも。
――雨が、降って…
「…っ。夢、か…」
――一年前から変わらない朝。
――俺以外誰もいない、家の朝。
普通の家庭なら『道人』の一体二体いるはずだが、
俺の家は違う。
――俺は、家に一人で良い。
【道人】。
日本の、とある遺跡から発掘された特殊な力を放つな鉄【御魂鋼】、
そして、その鉄の力を抑制する木【陽諸木】。
その二つを材料とし、作り出されたのが【九十九機関】。
それを動力源とし、意思を持って動く道具。
否、それは道「具」ではなく【道「人」】。
道具型生体アンドロイド。それが【道人】。
道人がその主…【使い主】と共に世界に広がったのが、
およそ二十年ほど前のこと。
嘘か本当か、最古の道人のような存在は戦国時代まで遡るとの噂もある。
そんなことは兎も角。
父さん達は【九十九機関】の強化ユニット、
【八百万ユニット】の研究者だった。
――その研究は失敗。あの人たち二人を犠牲に、
――八百万ユニットの研究開発は一時凍結された。
母方の伯父さんが「発端である若い研究員は辞めた」らしい。
逃げたのか、辞めさせられたのか。
今となっては…いや、今でも「どうでもいい」。
あの人たちの分まで生きる?――百以上まで生きろというのか?
意志を受け継ぐ?――…無いな。当人達目標はあったけど道草多いって言ってたし。
思わず鏡を見る。
一年前も「表情筋の動きが少ない」と言われていたが、
今では更に無表情になっている気がする。
笑う――薄ら笑いじゃないか。
怒る――目つきが少し悪くなっただけだな。
悲しむ――何時もと変わらん。
大いに笑い…――おい誰だ這い寄る混沌呼んだのは。
最後のキラースマイル(悪意無し…?)に落ち込みつつ、
俺は学校の準備をする。
始業式だから昼には終わるだろう。
――昼は…うん。面倒だからインスタントでいいか。
いつも通りの日々が始まる。
小学六年、齢十二。
俺こと、【羽堂輝嗣】の日常が。
完全オリジナルです…多分。(被ってないといいなぁ…)
応援して頂けたら幸いです。