表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノートの片隅、好きの言葉  作者: みづき
一章 秋の風
1/6

一話

かなりベタな感じだと思います。それでも良いと思う方はどうぞ。

無断転載などしないよう、お願いします。

 秋の終わり、心地よかった風の温度が肌寒く感じる頃。

 室内だというのに肌寒いこの教室で、長時間いるのはきつい。

 ブレザーの下に着込んでいたカーディガンの裾を伸ばし、手をすっぽりとその中に収めた。

 規定の温度に達していない為、暖房のつかない教室で行われているのは委員会だ。

 話し合いが行われている中、身を縮め、細かく震えている少女――高藤梨紗(たかとうりさ)

「どうしたの?」

 そんな梨紗を見かねてか、隣に座る少年は優しく声をかける。

「寒いんです!」

 尋常ではない寒さに苛立ちを覚え、ついきつい口調で言い返した。

 しかしそんなことは気にも留めず、少年は軽く笑う。

「まぁ、今年一番寒いって言ってたからね」

「笑い事じゃないです!……こんな時に暖房もつけないなんて、暖房の意味ないじゃん」

 さらに身を縮め、梨紗は不満の声をもらす。

 身を縮めた時に綺麗に伸ばされた黒髪が揺れ、冷たくなった頬に触れた。冷たい頬に触れた髪が、少し温かく感じる。

「先輩は……寒くないんですか?」

「ん?俺?大丈夫だよ」

 これといって防寒着も着ていない少年――否、先輩の制服を見て梨紗はため息をつく。

「元気ですねぇ」

 それが呆れなのか、関心なのか、どっちとも取れる声色でつぶやく。

「っていうか、先輩、ひとつ聞いていいですか」

 配れられたプリントを眺めていた先輩が、視線を移す。

「私保健委員ですけど、今回の委員会って何のためにやってるんですか?」

 先輩はきょとんと梨紗を見る。

 そして手に持っていたプリントを目の前でひらひらさせ、言葉を紡ぐ。

「書いてあるでしょ?寒いから怪我する人多くなるだろうってことで、今後の対策」

 急に寒くなってきたのだ。筋肉が固まり、怪我をする人が多くなるだろう。

 それを対処するのも、保健委員の役割だった。

「そんなの保健の先生がすればいいじゃないですかー」

 机にもたれ、項垂れる姿を見て先輩は微苦笑する。

「じゃあなんで保健委員入ったの」

 その言葉に、うっと言葉が詰まった。

「では、これで委員会会議は終わりです!」

 話している間に終わったのだろう。その言葉に皆立ち上がり、やれやれという表情で帰る支度をする。

「じゃ、梨紗ちゃん。お疲れ」

 先輩は軽く微笑み、席を立った。

「……お疲れ、さまです」

 先輩が教室を出て行くのを見計らって、聞こえないほど小さな声でつぶやいた。

 きっと、知らないのだろう。

 いや、知るはずもない。

 自分が、わざわざ保健委員になった訳を。

 ――西嶋新(にしじまあらた)。それが、先輩の名。そして、好きな人の、名。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ