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お気に入り小説5

義妹に大切なものを盗られ続けた公爵令嬢ですが、第二王子殿下が全部取り返してくれました。

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/06/07

アリディア・ファセル公爵令嬢は泣いていた。


義妹のレイラに盗られてしまったのだ。

大事な母の形見のブローチを。


母が亡くなってすぐに、父が再婚した。

再婚した女性には連れ子がいた。

それがレイラだ。


アリディア12歳。

レイラ11歳。


レイラはアリディアの大事にしている母の形見のブローチを欲しがった。

勝手に部屋に入って来て、物を漁り箱にしまっておいたブローチを手にして、


「お義姉様。これ欲しい頂戴」


「これはわたくしの大事な物なの。だからあげられないわ」


「欲しいの欲しいの欲しいのっ」


その騒ぎを聞きつけて義母がやってきて、アリディアをしかった。


「何て意地悪な娘なのっ。レイラが欲しがっているのよ。あげなさい。貴方は年上なのでしょう」


そう言ってブローチを義母に取られて、レイラに渡されてしまった。

母がいつも着けていたブローチ。

紫水晶のキラキラしたとても綺麗なブローチ。

それを取られてしまったのだ。


「返して下さいっ。これは大切な母の形見なのです」


義母は怒って。


「私が後妻に来たのが気に入らないの?酷い娘だわ」


レイラは嬉しそうにブローチを手にして、


「お義姉様、有難うございますっ」


あげると言っていないのに、ブローチを手に部屋を出て行ってしまった。


あれは大事なお母様の‥‥‥

悲しかった。

悔しかった。

でも、幼いアリディアはどうすることも出来ない。



今度はレイラが、部屋に飾ってあった人形が欲しいと言い出した。

父がアリディアが10歳の誕生日の時にオーダーして作ってくれた大事な人形。

金の髪に青い瞳のその美しい青年の人形はアリディアの宝物だ。


それをレイラが欲しいと言い出した。


「駄目よ。これはわたくしの大事な宝物なの」


「お義姉様。欲しいの。私が気に入ったと言っているの」


レイラは母親に言いつけた。


義母がやって来て、


「レイラが欲しいと言っているのだから、あげなさい」


「これはわたくしの大事な宝物なのです」


父ファセル公爵がやって来て、


「レイラが欲しがっているんだ。お前は姉なのだからレイラにやりなさい」


人形を盗られた。

大事にしていた人形。それをレイラが抱き締めて、部屋から持って行ってしまった。


ああ、なんで?お母様のブローチも、あの美しい人形も、なんでレイラの物になってしまうの。




13歳になった時、アリディアはファセル公爵家から出て、王立学園の寮に入った。


母の形見のブローチだけは戻らなかったけれども、ぼろぼろにされていた人形を捨てられているのをある日、発見した。

人形は修理して、元の美しさを取り戻した。

美しい青年の人形。


寮の部屋に他の隠しておいた宝物と一緒に、人形を持っていき、アリディアは飾った。


公爵家から出たのでもう盗られるものはない。


王立学園と寮を往復する平和な日々が続いた。

17歳になった時、母が生前、決めておいた婚約者という男性が面会に来た。

この王国の学園は男女別なので、同い年の男性でもまるで知らない男性だ。


「ライト・アレーと申します。アレー伯爵家の息子です。正式に両親と共にファセル公爵家に挨拶に今度のお休みの日に伺います」


にこにこしながら自己紹介するライト。

金の髪がキラキラしていてとても明るい男性で。


一目見て、アリディアはライトの事が好きになった。

なんでも生前、母とアレー伯爵夫人との約束で、17歳に子供達がなったら婚約させましょうという事だった。

ライトは次男なので、ファセル公爵家に婿に入る形になる。


義妹のレイラはファセル公爵家の血を引いていないので、さすがの父も自分にファセル公爵家を継がせるだろう。


大嫌いな父だけれども、アリディアはそう思っていた。


会いに来たライトと、寮に設置されている面会室で少し話をした。


明るいライト。

にこにこしていて、とても好感が持てて。


「婿に私が入る形になります。ああ、アリディア様、とても美しい方ですね。キラキラした金髪に青い瞳。私の好みです。貴方と婚約が結べるなんてとても嬉しい」


そう言ってくれた。


「わたくしも嬉しいですわ」


ライトとの縁を神様に感謝した。


週末に久しぶりにファセル公爵家に戻った。

父がアリディアに、


「明日の婚約の件で戻って来たのか。亡くなったお前の母とアレー伯爵夫人との約束だったからな」


義母は父に向かって、


「うちのレイラと結婚させればいいじゃない。この公爵家を継がせれば」


「しかしだな。レイラは私の血を引いていないんだぞ」


「そこは、貴方が上手くごまかして下さいませ。レイラを私との子って事にすればいいじゃない」


「庶子だったって事にすればいいってことか?」


「そうよ。レイラにこの家を継がせて頂戴。アリディア。いいわね。貴方なんて普段、家にいないんだから、今更、戻って来て婚約者???信じられないわ。明日の顔合わせはレイラにやらせます。お前は寮に戻りなさい」


悲しかった。

ライトまで盗ろうとするの?

ライトと結婚してこの家を継ぐのはわたくしではないの?


酷い酷い酷い。


レイラが、アリディアの部屋にやって来て。


「まだ、お義姉様、いたの?わたくしが明日の面会、お義姉様の代わりにでるわ。ライトってとても美しい方らしいわね。楽しみだわーー」


あああ、また取るのね。貴方は又、わたくしから大事な物を取るのね。


ふいに肩を軽く叩かれた。


「アリディア。久しぶりだね」


隣国に行っていた叔父のロイドが心配そうにアリディアを見つめていた。


母の弟のロイド。

母が生きていた頃は時々訪ねて来て、珍しいお土産とかをくれたりした。


アリディアはロイドと庭で話をすることにした。


「わたくしは義妹に、母の形見のブローチや、大切な人形を取られましたの。とても悲しかった。婚約者のライトを義妹が欲しいと言っていて。お母様が整えてくれた婚約者なのです。それを‥‥‥」


「アリディア。家を出て私の家の養女にならないか?ファセル公爵家はアリディアにとって環境がよくない。私の元でなら、アリディアも‥‥‥」


「そうですわね。わたくしは叔父様の元へ行きたいと思います」


隣国へ行く決意をアリディアはするのであった。


叔父と共に、父にその話をすれば、父は、


「アリディアがそれでいいと言うのなら、家を出てもいい。レイラがライトを婿に貰ってこの家を継ぎたいそうだ」


「そうですの。それなら、お父様。手続きが済み次第、わたくしは隣国に行きますわ」


叔父も父に向かって、


「アリディアの事は私にお任せ下さい」


「よろしく頼むぞ」



アリディアは寮に戻った。

二日後の夕方、学園から戻ってきたら、ライトが寮に面会に来ていた。

面会室でライトに会ったら、ライトは、


「アリディア様が私の婚約者ではなくなったと、ファセル公爵様から聞きました。レイラ様が婚約者に変わったと。私の母、アレー伯爵夫人が、 

血筋の証明書をお見せ下さい。レイラ様がファセル公爵家の血を引いているという証明書です。それが無ければ、この婚約はお断り致しますわ 

って言って保留にしてもらった。どこの馬の骨か解らない令嬢が公爵家を継ぐだなんて。何を考えているんだ?親子鑑定依頼を教会でしてもらうように正式に我が伯爵家から依頼したから。もし、ファセル公爵家の血を引いていないのなら、こちらとしても婚約者の変更は認めない。あのレイラという娘、君とは血の関係はないのだろう?」


「無いと思いますわ。義母が父と知り合ったのは、2年程、前ですもの。酒場で働く義母を見初めたんですって」


「私はアリディア様と婚約したいんだ。あんな品のない娘と婚約なんてしたくない」


嬉しかった。

自分と婚約したいと言ってくれて。


アリディアは、


「でも、わたくしは隣国へ、叔父の養女として行くことになっておりますの。ファセル公爵家を去りますわ」


ライトが、


「君はファセル公爵家を継がないのか?」


「あの家にわたくしの居場所はありませんわ」


「そうか‥‥‥そうなのか」


ああ、この人は、ファセル公爵になりたかったのね。女性は公爵位を継げないから。義妹と結婚しても、ファセル公爵家の血を継いでいないと後で解ったら、王家から処罰が下るわ。血って大切ですもの。わたくしはライトに惹かれた。でも、ファセル公爵家に戻る気はない。


「有難うございます。わたくしと婚約したいと言って下さって。でも、わたくしは隣国へ参ります」


「私こそ、ごめん。私は隣国に行くわけにはいかないんだ。私が隣国へ行っても、上手くやっていく自信がない」


悲しかった。

でも、仕方が無い。

ライトにとって大切なのはファセル公爵になることなのだ。


淡い恋心にアリディアはさよならをした。




ライト・アレー伯爵令息は、レイラとの婚約を断った。

ファセル公爵がレイラとの血筋の親子鑑定を断ったからだ。

その件が王家に伝わって、ファセル公爵は厳重注意を受ける事になった。


アリディアは国外へ出る事が出来ず、血筋を守る為に、王国にとどまり、ファセル公爵位の為に婿を取ることになった。


王家が命令をしてきた。エイル第二王子を婿に取るようにと。

王家としてはエイル第二王子をファセル公爵家に婿入りさせたい思惑があるようで。


エイル第二王子はとても紳士的で優しかった。


「初めまして。アリディア様。今日から公爵家に住むことになったエイルです」


エイル第二王子は強引にファセル公爵家に住み込むことにしたようだ。


驚いたのはファセル公爵と公爵夫人、そしてレイラである。


エイル第二王子は金髪碧眼の美男だ。

歳はアリディアと同い年の17歳。


公爵家に戻ったアリディアに対して、エイル第二王子はいつも傍にいて、ファセル公爵達に睨みを利かせる。


「アリディアを粗末に扱う事はこの私が許さない」


レイラが、エイル第二王子に、



「エイル様ぁ。私と一緒にお庭を散歩しません?」


エイル第二王子は、レイラを虫けらのように見ながら、


「話しかける事を許可した覚えはない。お前はこの家を乗っ取ろうとしたのだろう?本来なら、悪質な乗っ取りという事で、牢に入れてもよかったのだが。二度と、私に話しかけるな。ああ、そうだ。お前の部屋を見せるがいい。安心しろ。私一人ではなく、メイド達数人に立ち会わせる」


アリディアやメイド達を連れて来て、エイル第二王子はレイラの部屋に踏み込んだ。

メイド達にレイラの部屋を家探しさせる。


レイラが怒り狂って、


「何をするのーーー」


「紫水晶のブローチだ。それを探せ。必ずあるはずだ」


部屋の隅の箱の中から紫水晶のブローチが出て来た。

何年も見ていない大切な母の形見のブローチ。

それをエイル第二王子は手にして、


「この持ち主はアリディアのはずだ」


「私がお義姉様から貰ったのです」


アリディアははっきりと言ってやった。


「わたくしはあげた覚えはありません。貴方が強引に持って行ったのでしょう。これはわたくしの母の形見です。返して貰うわ」


「酷いっーーー。これは私の物よ」


エイル第二王子は、


「なんて酷い女だ。正式に私が婿入りしたら、この女は領地の片隅に追い出した方がいい。目にも入れたくない」


レイラはエイル第二王子に擦り寄って、


「私はお義姉様に虐められている可哀そうな義妹なんです」


「可哀そうな義妹?その割には部屋は贅沢品に溢れているんだが。アリディアの部屋は大したものはなかった。お前達が贅沢をする傍ら、アリディアには大した物を与えなかったのだろう」


騒ぎを聞きつけて来たファセル公爵は、苦虫をかみつぶしたような顔をした。

ファセル公爵夫人である義母は、


「オホホホホ。アリディアより、我が娘の方が美しくて可愛らしいですわ。愛人にしたら如何?エイル様。可愛らしいレイラならエイル様も満足致しますわ」


エイル第二王子は怒って、


「見たくないと言ったはずだ。この女を。ファセル公爵。話が通じない二人を追い出せ。領地の方の屋敷だ。それも離れにだ。二度と、私の目に触れさせるな」


ファセル公爵は、


「この二人は私の妻と子でして」


「血を偽ろうとしたな。本来ならもっと厳罰にしてもいい位だ。あの娘を牢にいれてもな。それなのにお前はーーー。厳罰にしなかっただけでも感謝しろ」


エイル第二王子は徹底的に父と義母と義妹に言いたい事を言って、義母たちを追い出してくれた。


アリディアは紫水晶のブローチを手にして、とても嬉しく思った。

幼い頃、ブローチを取られて泣いていた自分。

美しい人形を取られて泣いていた自分。

心の傷が全て癒されて行く。

そんな気がした。

そしてそんな頼りあるエイル第二王子の事が頼もしく思えて‥‥‥


エイル第二王子とテラスで外の月を眺めた。


エイル第二王子は、


「苦労してきたのだな。私は曲がったことが大嫌いだ。これからは私がアリディアを守ってみせる。だからうんと私を頼ってくれ」


「有難うございます。エイル様」


「今度の夜会、ドレスを作ろうか。何色がいい?」


「初めての夜会になりますわ。エイル様の瞳の色。ブルーのドレスで臨みたいと思います」


「ああ、そう言ってくれるととても嬉しい。互いにブルーを基調とした恰好で揃えよう」


幸せだった。

一気に幸せが花咲いた。そんな気がした。


二人で初めての夜会に出席をする。


久しぶりにライトに再会した。エイル第二王子は飲み物を取りに行くといって、その時、アリディアは一人だった。


ライトは見知らぬ令嬢を連れていた。

そして挨拶をしてきた。


「お久しぶりです。アリディア様。そのドレス、とても似合っておりますね」


「ライト。久しぶりだわ。そちらのご令嬢は?」


「私の婚約者のミレーヌ・リィド伯爵令嬢です。私はリィド伯爵家に婿に入ることになりました」


「そうですの」


リィド伯爵令嬢が挨拶をする。


「初めまして。ミレーヌ・リィドです。王立学園ではクラスが別でしたから、ご交流がなくて」


とても美しい方。ライトも良い方に恵まれたのね。


ライトはミレーヌが傍にいるにも関わらず、


「結局、君はファセル公爵家を継ぐんだ」


「ええ。王家の命令ですもの。隣国へ行く必要がなくなりましたわ」


「だったら、私が‥‥‥」


「エイル様が行動力があっただけですわ。貴方も頑張ってくれた。レイラとの婚約を断ってくれた。わたくしは嬉しかった。でも、ファセル公爵家の中まで入り込んで、わたくしを救ってくれたのはエイル様。だからわたくしはエイル様と結婚出来る事をとても幸せに思っております」


「私では力不足だったんだな」


「貴方が悪い訳ではありませんわ。伯爵家の令息がお父様に敵う訳ありませんもの」


ああ、わたくしは助けて貰う事を願っていたんだわ。


ミレーヌが微笑みながら、


「焼きもちが妬けてしまいますわ。婚約者の前で言う事かしら?ライト」


「申し訳ない。勿論、君の所へ婿入りすることが私の幸せだ」


そう言ってライトは軽く会釈をすると、ミレーヌをエスコートして、行ってしまった。


エイル第二王子が、飲み物を手に戻って来た。


「昔の恋人かな?」


「婚約者になるはずだった方ですわ。でも、過去の事。わたくしにブローチを取り戻して下さったエイル様の事をわたくしは愛しております」


エイル第二王子は嬉しそうに微笑んだ。




後にエイル第二王子と結婚したアリディア。


エイル第二王子は、ファセル公爵を早々に引退させて、領地の片隅に押し込んだ。

領地の片隅の屋敷にはファセル公爵夫人とレイラが既に押し込まれており。

監視付きで二度と出られないようにさせられて。

細々と生活をしているらしい。

ド田舎だから、王都に来るには馬車に乗ってこなくては来られない距離なので、二度と、三人に会う事はないだろう。



二度と盗られることのない幸せを今宵も噛み締めるアリディア。

愛しいエイル第二王子と共に未来の幸せを夢見て、空の月を眺めるアリディアであった。


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