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レモンピューレー公爵家の四姉妹長女は冒険者貴族の我が家にて楽しく発明します!便利なモノでいつでも快適にグルメだって再現したい  作者: リーシャ


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05魔導電話

 子供たちは、絵本の世界に引き込まれるし。大人は、歴史書や学術書に描かれた精巧な図鑑に感動していく。知識を彩る公爵家としても、知られることになる。


「ねぇ、お母様は考えたのだけど、朱色のインク、私のドレスにも使えないかしら?」


 いつものティータイム。お母様が、ユミスが持ってきた朱色のインクを眺めながら提案する。


「あら、良い考えですわね。キャロル姉さま、どうですか?」


 ユミスがキャロルに視線を向ける。


「んー、服に色を定着させる魔導具かぁ……面白そう」


 周りには、いつも家族の笑顔と、新しいアイデアにワクワクする空気がある。

 ゆるくて、最高に楽しい異世界での生活が、これからもずっと続いてほしい。


「次は、色を自由に変えられる服を作る魔導具とかにしよう」


 家族全員が目を輝かせた。母は早速、服を選ぶと自室へと帰っていく。姉妹達は自然で見送る。


「ピリリリリ……!」


 どこからか、奇妙な音が響いた。公爵家のティータイム中なので、キャロルは持っていたスコーンを落としそうになった。


「今、何か音がしませんでしたか、キャロル姉さま?」


 ユミスが不思議そうに首を傾げる。ミーチェとソフィアも、顔を見合わせてきょとんとしている。


「うん、聞こえた。これ、実は今開発してる新しい魔導具の、試作機の音」


 ポケットから手のひらサイズの小さな箱を取り出した。箱には、複雑な魔力回路と、小さな円形の板が取り付けられている。


「え!?それが新しい魔導具ですの?」


 ミーチェが目を輝かせ、ソフィアも興味津々といった様子で箱を見つめる。


「魔導電話のテレフォン」


 紹介すれば当然、知らない三姉妹はさらに目を丸くした。


「魔導電話って……一体どんな魔導具なんですの?」


 ユミスが問いかける。


「離れた場所にいる人と声で会話できる魔導具。これがあれば、お父様やお母様が遠征中でもいつでも連絡が取れるようになる」


 説明にユミスはハッと息を呑む。


「そ、それは……素晴らしいですわ!冒険に出た家族の安否を、その場で知ることができるなんて」


 お父様とお母様は頻繁に危険なダンジョンに遠征に出かける。その間、公爵家ではいつも二人の無事を祈りながら、情報が届くのをひたすら待つしかない。

 伝令を飛ばしても情報が届くまでに数日かかることも珍しくない。魔導電話があれば、不安が解消されるのだ。


「でも、声の情報を遠くまで届けるってどうやるんですの?」


 ミーチェが素朴な疑問を口にする。なかなかいい質問が来た。


「それがね、魔導電話のキモで。音の振動を魔力に変換して魔力線を通して遠くまで送る。受け取った側でまた魔力を音の振動に戻す、って仕組みで」


 試作機の円形の板を指差す。


「この板が音の振動を拾う魔力変換器。ここに繋がってるのが、音の魔力を運ぶ魔力線。原理は簡単なんだけど安定した通信をするのが結構難しくてさぁ」


 魔導電話の開発にかなり前から構想を温めていた。安定した魔力変換と長距離での魔力伝達の技術が確立できていなかったためこれまで着手できずにいたのだ。


 どこでも行ける扉風、転移装置や虹色の写字機の開発を通して得られた新たな魔力理論と技術の進歩が挑戦する自信を与えた。


「魔力線の耐久性が問題ですわね。少しの衝撃で、魔力の流れが途切れてしまいます」


 工房で、ユミスがため息をついた。魔導電話の試作機は声の送受信はできるようになったものの、魔力線が非常にデリケートですぐに切れてしまうのが課題として浮上。


「うーん、もっと頑丈で魔力伝導率の高い素材はないかなぁって」


 頭を抱えていると、ミーチェが閃く。


「そういえばこの間、お父様が持ち帰った魔物の腱すごく丈夫でしたわ!魔力もよく通すって」


「え!それ、どこにあるの!?」


 ミーチェは、お父様が持ち帰った素材の整理を手伝うことが多く思わぬところで開発のヒントを与えてくれる。

 ソフィアは試作した魔導電話の音声を熱心に聞いていた。言葉は少ないが発する「ピー」というノイズのような音は、魔力変換の不具合を示すサイン。


「ソフィアが変な音を出したってことはまだ調整が必要ってこと。もうちょっと魔力回路をいじってみる」


 ソフィアの些細な反応が調整の方向性を示してくれる。


 数週間後、魔導電話の試作機が完成。丈夫な魔力線と安定した魔力変換器のおかげで、公爵家の敷地内であればどこにいてもクリアに会話ができるようになった。


 ついにお父様とお母様が遠征に出かける日。完成したばかりの魔導電話の試作機を二人に手渡した。


「これがあれば、いつでも連絡が取れますから!ちゃんと使ってくださいね」


「なに!?おお!これは頼もしいな!」


 お父様は目を輝かせお母様も嬉しそうに魔導電話を受け取る。数日後。公爵家のダイニングルームで、キャロルたちがティータイムを楽しんでいると突然持っていた魔導電話が「ピリリリリ!」と鳴り響いた。


「あっ、お父様から」


 慌てて魔導電話を耳に当てると遠くから少しノイズ混じりではあったが力強い声が聞こえてきた。


「キャロルか!聞こえるか!?」


「うん。聞こえるよ、お父様。無事でよかった」


 キャロルの声が弾む。ユミスとミーチェ、ソフィアも食い入るようにキャロルを見つめている。


「ああ、こっちは順調だ!そちらは変わりないか?」


「うん!みんな元気。お母様も元気?」


「ええ、私も元気よ。キャロル、そちらは皆、風邪など引いていない?」


 お母様と思しき声も聞こえてくる。離れた場所にいる家族の声がリアルタイムで聞こえてくる不思議さと感動に、三姉妹は言葉を失っていた。

 通話が終わり、魔導電話を置くと、三姉妹が駆け寄る。


「すごい!本当に声が聞こえましたわ!」


 ユミスが興奮したように言う。


「お父様とお母様、元気そうでよかった!」


 ミーチェが嬉しそうに飛び跳ねる。ソフィアも満面の笑みでキャロルを見上げていた。魔導電話の成功は、瞬く間に世界中に広まった。

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