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S.shooter  作者: バームクーヘン
虚空の楽園
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life8.御伽話編-俊光侍

気分はまだ晴れない。

あの馬鹿のせいだ。


でも何であいつにこんなに怒らなきゃいけないんだろう。

何故だか知らないけど無性にイライラする。


こんな気持ちはミッションですっきりするに限る。


今か今かと待ち続けたミッションもあと少しで始まる。

今日のこの日をどれだけ待ち焦がれたことか。


早く。


早く早く早く。



まだ始まらないのかとイライラしていると、ルーンが話し掛けて来た。


「赤梨さん。落ち着いてないね。ミッションが不安なの?」


「全然。むしろ早く始まってほしいくらい」


「どうして?早く100点取って開放されたいから?」


「違う。ずっとミッションしていたいの」


「・・・変わった人」


不思議そうな顔をしてルーンは私の側から離れた。

何であんな当たり前のことをわざわざ聞いたのやら。


私にはコレしかない。

ただミッションで戦う事しか残ってない。


戦わない私なんて誰も必要としない。



そう思った時、モニターが現れた。


やった。

これで戦える。

私が私でいられる。



でもモニターは今までにない事態を引き起こした。






赤梨砂弥





私の名前しか表示されていなかった。

周囲に動揺が走る。



「何コレ?」


「どういうこと?」


皆がざわざわしている中、白馬とルーンが近寄って来た。


「何だか大変なことになったわね」


「私は別に一人でいいよ」


一人でも構わない。

大体いつも肝心な時は一人で戦ってきたんだ。

今更人がいなくても何も変わりはしない。


「まぁ、もしかしたら他の学園の生徒がいるかもしれないし・・・」


「とりあえずミッションが始まったら様子を見たらいいんじゃない?」


二人がごちゃごちゃと何か言ってくる。

うっとうしくなったので、二人を振り払う。


「私は一人で良いんだって!余計なことしないで!」


辺りの騒々しさは一瞬静まり返り、そしてまたざわざわしだす。



「一人でミッションなんて、何考えてるのかしら」


「わからないわよ、あの子連続でラスボスを倒した実績があるもの」


「え、本当?」


また煩くなってきた。

集中するために深呼吸し、銃を取り出して気持ちを落ち着かせる。


そういえばあいつの姿が見えない。


やっぱりあいつはいい加減な奴なんだ。

だから私の所にこれないんだ。



そうこうしている間に、転送が始まる。

いよいよだ。

此処で私は100点取って更に強くなるんだ。


そんな中、ふと二人を見る。

淋しそうな、切なげな表情をしている。


「赤梨さん・・・」


白馬は心配げに私を見ていたが、やがて私の視界は消えた。








目を覚ますと私は竹林に居た。

レーダーを見ると既に私の近くに敵が迫っている事が分かった。

赤い点だけで青色・・・生徒を表す点は見当たらない。


どうやら本当に私一人だけのようだ。

なんにせよ好都合だ。

私だけで大量に点が取れる。


私は銃を構え、銃口に刃のエネルギーを作り出す。

マーメイドの時の通り、切れ味抜群だ。


次の瞬間、竹の裏側から数匹の熊が飛び出して来る。


二匹の熊はバックステップで避けて、最後の熊の持っているまさかりを銃剣で受け止める。

銃剣を上に振り上げてバランスを崩させて速攻で熊を切り裂きバラバラにする。

二匹の熊は再び襲かかって来る。


私はバラバラにした熊の血を目隠しにして動き、熊が私を見逃した一瞬の隙を突いて熊の脇腹に銃剣を突き刺す。


最後にきた熊に向かって、銃剣に熊を刺したままビームを発射する。

熊はそれを避けたが攻撃のチャンスには変わり無く、熊の口に銃口を突っ込んで発射し、頭を爆散させる。



はやくも三体倒した。

これは100点到達の山場だろう。

此処さえ越えれば後少しだけだ。





暫く歩くと奥に何かの明かりが見えた。

ぼんやりではなく、はっきりと輝いている。

明かりの元に近寄ってみると、一本の竹があった。


これは何だろうと近寄ると、金色に輝く竹の中からいきなり人が飛び出して来た。

どうやって中に入っていたのか。など考える隙もなく、竹から出て来たひとに踏み倒された。


高価そうな着物を何着も重ね着し、気品ある長髪は腰まで伸び、竹から出て来た所からして、いかにもかぐや姫のようだ。


しかし、かぐや姫とは格段に違い、顔は真っ白でオタフクソースのような感じの顔をしている。

はっきり言うと全然美人でない。


尚もかぐや姫は私を踏むのをやめず、ジャンプも加えて更に強く踏み付けてくる。


「おっほほほほ!不細工!不細工!お前不細工!私美しい!おっほほ!!!」


横に転がって回避し、銃を構える。

かぐや姫は私に近付きハイキックを繰り返す。


「おっほほほ、不細工死ね!不細工死ね!」


かぐや姫の足を銃で受け流し、そのまま相手の懐に潜り込む。

そしてくるっと回転する勢いにかぐや姫の背後に回り込み、銃剣を背中に突き刺した。


また人を刺した感触が手に伝わる。

別に自分の手で直接触っている訳でもないのに、妙にはっきりと分かる。

別に気にする程の事でもないが。


かぐや姫の背中を蹴り飛ばし、突き刺さっている銃剣から引き離す。


ふと見ると、近くに海がある。

海にあまりいい思い出が無いがレーダーを見る限りそこに敵がいるようだ。

仕方なく海に行くことにした。



レーダーに表示された点の側に来てふと崖を見下ろすと、何匹もの小鬼が一匹の亀を寄ってたかってボコボコにしている。

よく聞いたことのあるシチュエーションだが構っていられない。

今のうちに仕留めようと銃を向ける。


が、それよりも早く、小鬼達の体が弾けとんだ。


一瞬何が起こったのかと思ったがどうやらあの亀が原因のようだ。

亀の背中からレールガンが現れ、全身にバリアを展開して二足で立ち上がる。


随分未来的な亀だと思いながら、亀のいるところに飛び降りながら銃を撃つ。

しかし銃弾はバリアで防がれ、亀は背中のレールガンを私に向けて発射する。


私は銃を前に構え、銃口からビームシールドを出す。

菱形に広がるシールドの中央に相手の弾が当たり、消滅する。


尚も亀はレールガンを発射してくる。

ダッシュで回避し、隙を伺う。


レールガンの発射先が私の前方に向けられる。


地面を蹴り上げ、爆風を利用して加速し、前転して衝撃を無くす。


そして、亀がこちらに狙いを定める前に銃を向け、亀に冷気を発射する。

亀の全身が氷で覆われ身動きができなくなる。

動きが止まった亀に銃口を向け、トリガーを引く。


一本のレーザーが高速で発射され、亀に当たった瞬間に爆発する。


亀の鋼の体と氷がバラバラに砕け、辺りに散らばる。

今回はやけに敵が多い。

でも私は負けない。

死にもしない。


私が生き残れないはずがない。



その時上空から気配を感じ、とっさに銃を撃つ。

すると巨大なキジが落下してきた。

さっき感じた気配はこいつだったのか。


そのキジの背中から犬と猿が飛び掛かって来た。

こいつらも敵なのか。


先に猿が来ているから、右足で思いっ切り左に蹴り飛ばし、次に飛んで来た犬の口を銃剣で突き刺し、素早く振り回してバラバラにする。


さっき蹴り飛ばした猿がヨロヨロと歩いて来る。

まだそんな気力があったのか。


二度と動かぬよう銃弾を二、三発撃ち込む。

銃弾は頭や心臓に命中し、猿はぐたりと倒れ込む。


ようやく一段落。

そういえばラスボスは誰なんだろう。

そう思ってレーダーを取り出そうとすると



「!!!」


背筋が凍るかと思うくらいの殺気を感じた。


恐る恐る振り向くと・・・




「おまえか?わがしもべたちをころしたのは」


黒い長髪をポニーテールのように結び、されど顔と体つきで男と分かる。

身につけている鎧や鉢巻きに描かれている桃といい、まるで桃太郎だ。

そいつは憎悪の瞳と表情で私を睨んで来るが、話す言葉はまだ子供のような高い声だった。


「こたえろ。おまえか?おまえだなー」


のろのろとスローペースで言う話し方は放たれている殺気とのギャップが激しく、それが逆に恐ろしさを際立たせている。



待て、今私は何を思った?


あいつが恐い?



そんなことない。

私があんなの恐れる訳無い。


そう自分に言い聞かせ、手の震えを止め、銃を構える。


そして、牽制に銃を撃つ。その瞬間、桃太郎は何回を現れたり消えたり見える高速移動を繰り返し、いつの間にか私の間近に接近していた。


いや、正確には近くに来たという感覚はなかった。

無意識に後ろに下がり、距離をとろうとしたが、既に遅く、一瞬目の前に閃光が見えた。



変だ。

何かあったと思ったが、別に変わった所はない。


ならばすぐに反撃しないと。

そう思い銃を構えようとした時、左腕にチクリとした痛みがした。


よく見ると、何かが宙を舞っている。


それは・・・


間違いなく私の左腕だった。


桃太郎は既に鞘から刀を抜刀していた。

高速移動と共に刀を振るったのだ。


その事実を理解した時、私は言いようのない痛みに襲われた。


「あ・・・・・」


痛い。



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。



私は思わず地に膝を突き、銃を持った右手で左腕の付け根を抑える。

そして上を見上げる。


桃太郎の視線が私を見下ろして、鋭く突き刺さる。

それは私に恐怖を与えるには十分過ぎて。


「ああああああああああああ!!!!」


地面に火と雷を同時に撃ち、それを横に振り払って爆風を大きく作り出す。

その煙を目くらましに使って必死に逃げ出す。


近くの竹林に再び入り、隠れようとする。


後ろから竹が切り倒される音がする。

それは徐々に大きくなり、少しずつ私に接近しているのが分かった。


「嫌だ。嫌。嫌・・・」


速度を上げて走り続ける。

嫌だ。死にたくない。



その時、右から何かが通り過ぎたと思ったら、回りの竹が右から順に切り倒された。


後ろを振り向くと既に桃太郎が近くに立っていた。


「っ!っぅ!?」


声にならない悲鳴を挙げて左にダッシュして逃げる。


しかし桃太郎はすぐに高速移動で追いかけ、私の左側を通り過ぎると、同時に左腕の付け根を押さえていた私の右手の指を全て切り落とす。


「ああああああああ!!!!」


血まみれの右手で何とか銃を握る。

しかしトリガーを引くのは困難で、この状況は私の死を意味していた。


桃太郎は私の右腕を掴み揚げ、刀を振り上げる。


「しね」


もう駄目だ。


そう思った時


視界と体の感覚が消えていく感じがした。

まさか、転送?


「おい、これはなんだ?」


桃太郎が戸惑うのもつかの間、私の転送は終了した。








転送された私はすぐに地面に倒れ込んだ。


白馬とルーン、そして乃璃香さんが私に駆け寄って来る。


「赤梨さん!」


「貴女、大丈夫?」


その言葉も今の私には理解出来ない。

ただ耳を通り抜けていくだけだ。


「砂弥さん。しっかりして。何があったの?」


乃璃香さんが私に聞いてくる。

私は・・・



部屋中にモニターが現れ、今回の結果が表示される。




赤梨砂弥 0点





無情にもそれははっきりと表示された。


0点。

それは失敗を意味する。



同時に、


私が逃げ出したことを意味する。




「やだ、あんな偉そうなこと言っておいてコレ?」


「仕方ないわよ。こんなもんだって」



回りのひそひそ話は包み隠せず私にはっきりと伝わる。


きっと皆、私に失望しているのだろう。

いや、それよりも・・・



「皆どきなさい!邪魔よ!!」


乃璃香さんが私の肩を支えて一緒に立たせる。


「・・・一先ず部屋で休みなさい。無理しちゃ駄目よ」


乃璃香さんはそう励ましてくれたけど・・・


私はもう駄目だ。

言い訳出来ない。





私は


私は怖くなって逃げ出したんだ。



私は逃げ場を求めるかのように乃璃香さんに寄り添った。

それでも恐怖は消えない。

今までより戦闘シーンを頑張りました。

少しキツイ模写も入りはじめましたが、まだまだ軽いですね。


もう少し頑張ろうと思います。





四条白馬 CV.小清水亜美


ルーンワーク CV.桑島法子





では、また次回で。

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