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S.shooter  作者: バームクーヘン
夢幻の終焉
27/29

life26.学園編-school

いよいよクライマックスが近付いてきました。


今回、色々な謎が明らかになりましたが、矛盾が出来ていないか心配です。


何かに気付いた人、遠慮なく言ってください。

では、本編をどうぞ。

「・・・」


砂弥は銀、乃璃香の二人と一緒にモニター室で待機していた。


砂弥を挟むようにして、壁際の椅子に三人で並んで座っている。


「多分、これが最後のミッションになると思う」


砂弥は二人に告げた。



「少なくとも、今までと同じにはいかなくなるでしょうね」


「確実に、何かが変わる・・・」


乃璃香に続ける形で銀が話し出す。


「絶対に、生き残りましょう。死んだらだめよ」


銀が話し終わると、二人は硬く頷いた。

絶対に生き残る。


その思いが胸を満たし、生きる気力を倍増しにしてくれていた。



「言う必要はないと思うけど・・・」


砂弥が口を開くと、二人共砂弥を見る。

その顔は強い決意をした女性のようにも、強がっている女の子のようにも見えた。



「二人とも、本当にありがとう。二人のおかげで私は今の今まで生きてこられた。だから・・・」


そこまで言った所で、砂弥の目から涙が零れた。


銀は思わず砂弥を抱きしめた。腕の力がどんどん強くなり、二人の温もりが一層高まる。


「砂弥、砂弥!」


「銀・・・!」


そして、二人で抱き合ったまま、視線を乃璃香に移した。


「・・・大丈夫、大丈夫だから!」


その瞳に涙を浮かべて、乃璃香は二人を抱きしめた。

乃璃香に二人の温もりが伝わって来た。


三人の間で、今までの思い出が滝のように流れ、また次々と思い出されていく。








ガリオン校。


そのモニター室に、裂空、田美、一平の三人が集まっていた。

これからのことについて、三人で話し合っているところだ。


「じゃあ田美ちゃん、おっさん・・・死なないでくれよ」


「うん」


「皆で生き残ろうね」



裂空に、田美と一平が続けて答えた。


「こんな所でお別れなんて嫌だもんね」


田美が呟くと、二人が頷いた。

今まで多くの危機に力を合わせて戦ってきた。


負けられない。

絶対に生きて帰る。


三人の手が、強く硬く重ねられた。









サバイブスクール。


モニター室では、綱切を囲むようにして生存している生徒達が立っていた。



「綱切さん、今となっては貴方だけが頼りです。私達を守ってください!」


生徒が綱切に懇願する。

綱切は、恐怖で震え上がる気持ちを押さえて答えた。


「ああ、お、俺に任せておけ」


そんな余裕あるかよ。

そう思ってはいても、言い出せない綱切だった。









そして、聖ゼウス学院。


フランシアはモニター室に他の生徒が集まっている中、一人で自室にいた。

そして、携帯端末で誰かと話していた。


「じゃあ好きにしたらいいわ。ええ・・・私は好きにやらせてもらうわ。精一杯楽しむつもり」


「・・・では、始めようか」


そこでフランシアは端末の電源を切り、ベッドに放り投げた。


その瞬間、フランシアの体が透けてゆき、転送が始まった。







「いよいよね」


乃璃香の体が転送されていき、武器であるロッドを握り締める。


「すぐに私達も行くから」


「待っててね」


銀と砂弥に答え、乃璃香はコクリと頷いた。

そして、乃璃香の体が完全に消え、周りの生徒達も次々と転送されていく。



砂弥と銀は・・・いつまで経っても転送されなかった。

待てども待てども一向にその気配がない。


「・・・どういうこと?」


砂弥はこの状況に不信感を抱き、銀に尋ねた。

しかし、銀にも真相は分からない。


「ふむ、君達に話したい事があってね。ここに残って貰ったよ」


誰かの声が二人に聞こえた。

声がした方を見ると、そこに一人の男が立っていた。


「・・・理事長」


そこに立っていたのは理事長だった。

掛けている眼鏡がギラリと鋭い光を放ち、砂弥は少し身じろぐ。

が、なんとか踏み止まり、理事長と対峙する。


「・・・どういうことですか。話とは、一体何のことですか」


銀が砂弥の前に出て理事長と向かい合う。



理事長はフッと口元を歪ませて二人を睨む。


「全てだよ。ミッション、敵、君達死者がこの世界に来た理由・・・その全てだ」








「・・此処は・・・」


式之は転送された後、辺りを見渡した。

そこにはいつか見た景色が広がっていた。


「サバイブスクールの校舎?」


そこは確かにサバイブスクールの校舎だった。

以前の文化祭で少しだけだが立ち寄った事がある。その時の記憶とも一致している。


式之には一体何が起こっているのか分からなかった。

その時、後ろから肩を叩かれた。


振り返ると、そこには自分と同じガリオン校の制服を着ている女子生徒がいた。

特別親しい訳でもなかったが、敵意は感じなかったので式之は気を緩めた。


「どうしたの?」


「いえ、用事があるわけじゃなくて」


話を聞く限り、どうやら今の状況に戸惑っているだけのようだった。


「確かに、転送されたはずなんだけどね」


転送されたはずが、場所こそ違えど同じこの世界に飛ばされたのはどういうことなのだろう。


式之が考え込んでいると、女子生徒が急に声を挙げた。



「フランシアさんです!」


前方を見ると、確かにそこにフランシア・スケルアルがいる。


フランシアも、丁度こちらに気付いた。


「良かった・・・フランシアさんに助けて貰いましょう!」


そう言って女子生徒は駆け出したが、式之は何か嫌な予感がした。

まぁ思い過ごしだろう、と思った瞬間


女子生徒の体が弾け飛んだ。



式之には何が起こったのか理解できなかった。

女子生徒のいた場所は血と肉片が飛び散り、こびりついて取れそうになかった。


そして、残った下半身は飛んできたビームによって消し飛ぶ。


ビームが飛んできた方向を見る。



そこには、ビームライフルを構えたフランシアがいた。


フランシアの背後に大型の何かが現れる。

それは砂弥がブースターを装着するのと同じように、フランシアとくっついた。


フランシアは、歪んだ笑みを浮かべる。



「じゃ、お掃除始めますか」


フランシアが装着した機械・・・アマテラスは、フランシアの肩付近から砲台を出す。


式之の目には、眩しいくらいの光が焼き付いた。







一方、黒楼学園のモニター室では砂弥と銀が理事長と対峙していた。


「・・・じゃあ、手始めにどうして死んだはずの私達が生きてこの世界に来たのか教えて貰えるかしら」


銀が理事長に問い掛ける。

理事長は全てを知っていると言った。それが正しければ、今まで謎だったことが明らかになる。


銀と砂弥は同じ思いだった。



「・・・始まりは私の死だった」


理事長が話し始めた。


「病で命を落とした私は、気付けば全く違う場所にいた。そして、私の目の前には大きなコンピューターがあった」


理事長が顔を上げた。

その顔は、遠い昔を振り返っている者の顔だった。



「そのコンピューターを色々調べると、あることが分かった。人の名前が名簿のように次々と追加されていたのだ。私は自分のように死んだ者の名前かと思ったが、それにはおかしい所があった」


「おかしい所?」


砂弥が聞くと、理事長は頷いた。



「死んだ者が表示されているなら、何故私だけが生きているのか、それが誤作動だとしても、まだおかしいことがある」


理事長は話を続ける。


「私しかいないのだから、私が一番最初に転送されたことになる。だからリストの一番上は私でなければいけないはず。しかし、私の上には数名の人物の名が表示されていた。不信に思った私はそのコンピューターを調べた」


「・・・・・」


「そして分かったよ。どうやらそのコンピューターを作った科学者達の名が表示されていたようだ。恐らく、完成させた直後に死んでしまい、使う前に力尽きてしまったのだろう」


「・・・そして、今は貴女がそのコンピューターを使っていると」


銀が問い掛けると、理事長は首を縦に振った。


「ああ。そして私はそのコンピューターの名がschoolであること。死者や生きている者関係なく転送させることが出来ることを突き止めた」



「私達がどうしてこの世界に来たかは分かった・・・じゃあ、あの敵はなんなの?」


今度は砂弥が問い詰めた。

理事長は直ぐに答えた。



「あれはschool内にプログラムされていた仮想空間の住人だよ。実質、ゲームの敵キャラと同じだな」


「じゃあ、最後の質問」


砂弥と銀は理事長を睨みつけて尋ねた。


「・・・どうして、私達はミッションに行かされていたんですか」


「死んだ者をこの学園に転送する・・・そこまではまだ分かります。でも、私達をミッションに行かせる意味が分からない。そんなことをして、一体貴方に何のメリットが?」


砂弥と銀の問い掛けに、理事長は皺の多い顔を静かに、それでいて醜く歪ませ微笑んだ。



「面白いからだよ。君達が死闘を繰り広げたり、逆にあっさり殺されたり・・・見ていて愉快だったよ」


「貴方は、人の命を弄んで楽しいんですか」


銀の言葉を、理事長は嘲笑した。


「言い掛かりはよしてくれ。私は本来永遠に眠りにつくはずだった君達に生きる時間を与えてあげた。称賛されても糾弾される謂われはない」


「ふざけないで!」


砂弥は魔銃を取り出し、強く握り締めた。


「皆あのミッションを恐れて・・・それで、大切な人を失って、あのミッションさえなければ・・・・・」


砂弥は続ける。


「どんな命も自分だけのものよ!それを操って、自分の思い通りに弄んでいい訳ない!!!」


砂弥は理事長に銃口を向けた。

しかし、その瞬間に理事長の姿はフッと霧が掛かったように消えてしまった。



「え?」


「はははは・・・・私が、ノコノコと生身で君達の目の前に現れると思うかね?私はschoolのある別世界にいるよ」


何処からか響き渡る嘲笑う声に砂弥は唇を噛み締める。


「それより、いいのかね?大事な仲間を放っておいて」


その時、物凄い爆音が遠くから聞こえ、二人に振動が伝わった。


二人の頭に不安がよぎる。


「砂弥!」


「うん!」


銀に言われるまま、砂弥は銀の後を追い掛ける。

その様子を見て、理事長はほくそ笑んだ。



「さあ、楽しませてくれよ」






場所は移って聖ゼウス学院の中庭。


そこには、さっきまで生きた人だったものの残骸がいくつか散らばっていた。


薔薇やベンチは赤く染まり、銅像や校舎の壁には人の上半身や腕がしがみついていた。



そして、フランシアの目の前には綱切が腰を抜かして後退りしていた。


「た、助けてくれ、助けて下さい。おるおれ、俺は死にたくないんだ!」


引き攣った声で綱切は懇願した。

自分だけでも生き残りたい。


そのために自分は戦ってきたのだ。名声は欲しかったが、今は何としても生き残りたい。

言いなりになってもいい。


死にたくない。死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない。


綱切の涙を零しながら訴えた。



「確かに、あんたは殺そうが殺さまいが変わんないかもね」


フランシアの言葉を聞いた瞬間、綱切は必死に首を縦に振った。

助かる。助かるぞ!




「じゃあ殺しとくかな」


フランシアが右手を挙げると、それに装着されているアマテラスの右側の先から巨大なピンク色の熱線が放出される。


Pフリーダムのビームサーベルとは比べものにならない程巨大だ。



フランシアはそれを何の躊躇もなく振り下ろした。

地面は砕け、巨大ビームサーベル・・・ミカツキが触れた場所は跡形もなく消えた。


当然、綱切は跡形もなく消え去った。






フランシアはミカツキを解除した。


アマテラスはブースターと同じ用途ながら、肩と腰の超強力ビーム砲台、マンゲツ。

背部の無限ミサイル、ハンゲツ。

同じく背部の多数バルカン砲、オボロヅキ。

正面に配置された攻防兼ね揃えた、ルナティック。


等の数々の武装を積み込ませた超高性能ブースターだ。


それを装着しているフランシアの髪は、悪魔の様な妖しい輝きを放ちながら揺らめいていた。

いや、悪魔なのは髪だけではなかった。


白と白が彩る輝きは総てを威圧するオーラを放っているようだった。



「・・・・・」


既に二十人近い人数を葬ったそれは更なる犠牲を求めて動き始めた。

フランシアの口元が緩み、次の獲物の元へ向かう。





最悪の人間が、ついに牙をあらわにした。

結末を知るものは、まだいない。

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