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S.shooter  作者: バームクーヘン
激動の運命
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life16.アメリカン編-止まない雨

あれから何日経ったのだろう。

殆ど外に出てないから分からない。


今の私には分からない。


どうして私は生きているのだろう。



自立しているつもりだった。


離れていても、心で繋がっていると思ってた。



そんなのはただの思い上がりだった。


私はいつだって銀に依存してた。


貴女がいないと、私は何も出来ない。


だから帰ってきてよ。


お願い。銀。







「砂弥ちゃん、どう?」


乃璃香が歩いて来た。

砂弥の部屋の前には、既にルーン、飛石、花菜の三人が集まっていた。


「全然駄目。ドア閉めっぱなしで開けようともしない」


ルーンがお手上げとでもいいたげに手を挙げる。


「・・・そう」


乃璃香は少し考えたが、砂弥の部屋のドアの前に立った。


そして、ドアをコンコンとノックする。


「砂弥ちゃん。辛いのは分かるけど、でも、いつまでも閉じこもってても仕方ないでしょう?早く出て来て・・・」


そこまで言いかけた所で、カチャリと鍵が開けられる音がする。


ドアはゆっくりと開かれ、そこから砂弥が顔を俯かせて出て来る。


「どうして・・・」


砂弥から今にも消え去りそうな小さい声がでる。


「どうしてそんな冷たい事言えるの!?私がどんな思いで銀と引き離されたか、乃璃香さんが分からないはずないでしょ!?」


砂弥の怒号が乃璃香に向けられる。しかし、乃璃香は一歩も退かず、砂弥に冷静に言い返す。


「それは分かってるわ。でも、銀の事を考えるなら、私は尚更貴女を甘やかす訳にはいかないの。ここで貴女が死んだりしたら、何のために銀が犠牲になったと思ってるの?」


そこまで言った時点で、乃璃香はしまったと口を閉じる。


「私が情けないからだよ・・・私が弱かったからだよ!」


砂弥は皆を押し退けて走り去って行く。


「砂弥ちゃん!」


乃璃香の制止も聞かず、どこかへ行ってしまった。






裂空は廊下を歩いていた。

今日は外でバスケをしようとしていたのにこの土砂降りで台なしだった。


このイライラをどうしてやろうと思っていると、田美が廊下に立っているのが見えた。


田美ちゃんを見たとなると事情は変わる。


イライラが吹き飛んだところで田美ちゃんに話し掛ける。


「田美ちゃん、何してんの?」


「あ、クー・・・」


田美は驚いたのか、窓の外に向けていた視線を慌てて裂空に向ける。


「クーは・・・輝合石さんのこと、どう思う?」


田美ちゃんは急に俺に質問してきた。


「それは・・・考えないようにしてたんだよ・・・」


俺は田美ちゃんから目を背けた。


山吹から輝合石が死んだ・・・いや、殺されたことは聞かされていた。


それを初めて聞いた時は何とも言えないものを感じた。


輝合石とはあまり親しくはない。



だが、数ヶ月前から顔は知っていたし、赤梨達と楽しそうに遊んでいる姿は時々見かけていた。


だから、俺にとって身近な人間であることに変わりはない。


そもそも、この世界に来た時点で全員仲間のはずだ。


互いに生き残りを懸けているは分かっているが、それでも仲間のはずだ。


どうしてこんなことになったんだろうか。


今回のミッションで、黒楼学園、ガリオン校とサバイブスクール、聖ゼウス学園との溝は決定的になってしまった。


特に、こちら側は輝合石を直接手に掛けた、フランシア・スケルアルに強烈な批判を持っていた。


向こう側はフランシアを盲信しているのが大多数のため、こっちの意見は聞く耳持たない。


フランシアは元々カリスマがあった。


既に100点クリアを8回、それを毎回武器に変えるという姿勢は、強者に憧れるあの二校にとって絶対的な存在だ。


俺も少しはフランシアを尊敬していたが、今回のミッションで引っ掛かるものを感じた。


いつも善人の様な振る舞いをするフランシアがどうして輝合石を殺したのか。


考えても答えは出ない。



その時、田美ちゃんが俺の体にしがみついて来た。


「私・・・恐くなったの。もしかしたら、クーも死んじゃうんじゃないかって・・・そう考えたら、不安で・・・」


田美ちゃんの手が更に強く俺を握る。


田美ちゃんが泣いているのは分かった。

俺の制服に田美ちゃんの涙が滲んでいたから。



その不安は俺にもあった。


此処に来た以上、いつ死ぬかは誰にも分からない。


こんな状況で田美ちゃんを好きになるのは間違いなのかもしれない。


死別したら、どちらも傷付くし、それは周りにも影響を与えてしまう。



それでも、田美ちゃんと別れるなんて、考えられない。


「・・・側にいるから、きっと」


絶対に保証出来るわけじゃない。


ずっと一緒にいるなんて約束は出来ない。

俺が生き残れるかは分からない。


それでも、田美ちゃんだけは守りたい。


特別な出会いや出来事があった訳じゃない。

それでも、俺は田美ちゃんが好きだ。



恋をするって、こんなものかな。と、柄にもなく思ったりした。








さっきからずっと雨に打たれている。


私の体を無数の雨が突き刺す。

実際に突き刺す訳ではないが、感触はそれに近い。


あの日、雨が降っていれば銀は助かったんだろうか。


それとも、雪、いや氷が降れば助かったかもしれない。


それとも悪化するだけだろうか。



いくら考えてもどうしようもない。


銀は死んだ。


死んでしまった。




私の目の前で。



その事実はどれ程の時が流れようと変わらない。


この雨に全て流して欲しい。


私の痛みも、苦しみも、悲しみも。何もかも。



「風邪、引くわよ」


不意に後ろから声が聞こえる。

その声の主は分かっている。


「・・・・・」


「此処にいても、誰も助けてくれないわよ」


乃璃香さんはそう言うけど、私はそんなこと出来そうにない。


雨に打たれている方がまだ自分をごまかせる。


「四条さんね、前のミッションから、ずっと訓練してるんだって」


それは知っている。

白馬は自分のせいで銀が死んだと責任を感じている。


白馬が生きていて良かったとは思う。

これで白馬も死んでしまったら、銀が無駄死になってしまう。


それに、私にはどうしても白馬のせいに出来ない。

自分の力不足が許せない。


私は乃璃香さんの横を通り過ぎて行く。


行き先はないが、何処かにフラフラしていたい気分だった。


乃璃香さんも黙って私の隣で歩いて来る。




銀、やっぱり寂しいよ。










気付いた時にはモニター室まで来ていた。


どうしてこんな所に来てしまったんだろうか。


私は部屋の中央にある巨大モニターに近付く。



モニターを見上げ、私は拳を握る。


何で私達がミッションをしなければいけないのか。

誰がこんなことを始めたのか。


死んだ者は幸せに生きてはいけないとでも言いたいのか。


私が暫く抑えていた感情の高ぶりをモニターに向ける。


その時、ずっと私の側で黙っていた乃璃香さんがモニターを見て何か気付いたのか、前に出た。


「ちょっと、100点クリア以上の特典を表示して頂戴!」


特典・・・

ああ、そういえば銀がミッション免除で此処に残るのを選べって言ってたっけ。

今となっては、そんな気は起きないけど。





待て、選べ?

もしかして、ミッション解放以外にも何かあるってこと?


私がそう思った時、モニターが特典一覧を表示した。

そこには・・・




100てむいし゛ょう、みっしょむからかいほう。


100てむいし゛ょう、つおいぶきをてにいれる。


150てむいし゛ょう、し゛ょうけむつきて゛memoryのにむけ゛むをさいせいする。


250てむいし゛ょう、memoryのにむけ゛むをさいせいする。



ちゅうい、とくてんつかったら0てむからやりなおし。


そう表示されていた。


非常に分かりにくいが、表示されている内容は理解できた。


つまり・・・



「死んだ人間を再生できるの・・・?そうだわ、確か銀の時もこれが出てたはずよ」


乃璃香さんは過去のことを思い出したのか、そう呟いていた。



私が目指すのはたったひとつ。




「取ってやる・・・」


絶対に取らなければならない。

何があろうとも。



「絶対!次のミッションで!200点以上取ってやる!絶対!!」


私はモニターをドンドンと叩く。


そして、顔を上げた。

目から涙がこぼれたが気にすることはない。


絶対に次のミッションで200点以上取る。



私は、目に溜まった涙を手で拭った。

ようやく終えました。


やっぱり日常編は執筆しにくいです。


では、また次回でお会いしましょう。

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