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S.shooter  作者: バームクーヘン
激動の運命
13/29

life12.妖怪編-ポール・サイド・レディ

どうしよう。


それが今の砂弥の心境だった。

色々と対策は考えてみるが、すべて悪い方へ行く。


口裂け女はじっとこちらを見ている。

私の動きを待っているのだろうか。


それなら迂闊に動けない。

あいつは私がどんな動きをしても、必ず私を殺せるよう対策を立てているに違いない。


・・・脚の震えが大きくなる。


もう立っているのも辛くなってきた。


次の瞬間、私は元来た道に走り出した。


まともにやり合って勝てる気がしない。

あーいうヤバい奴は誰かに任せるに限る。


ただでさえ私、0点になってしまったんだから。

ここは安全に・・・


と思った所で一つの疑問が頭を過ぎる。


「そういえば白馬、ボスを倒さないと点数が消えるって言ってたっけ」


つまり、ボスを倒さないと全てやり直しということか・・・


私は足を止め、意を決して後ろを振り向いた。



こいつを・・・

こいつを倒さないと・・・


狭い通路の中、砂弥と口裂け女は対峙した。







「そーれ!やぁっ!」


「ッチィ!」


一方裂空とさっちゃんは一騎打ちで戦っていた。

互いに攻撃を当てれず、平行線を辿っていた。


「おらっ!」


裂空が剣を振り、衝撃波を飛ばす。

さっちゃんは鎌を回転させて盾にし、衝撃波を防ぐ。


もう一度さっちゃんは鎌を振り、円形の刃を飛ばす。


裂空は剣に力を溜め、刃を消し飛ばす。

さっちゃんはその余波を鎌を振り下ろして切り裂く。


くそっ。これじゃいつまでたっても終わらない!


裂空は心の中で舌打ちをする。


その時、さっちゃんは今までで一番大きな刃を明後日の方向に飛ばす。


「何だ?」


その刃は裂空達の周りを回転し続け、徐々に回転の中のスペースが狭くなっていく。


「タイミングよく斬ればなんとかなるか・・・」


裂空が剣を構えた時、


「クー・・・」


突然田美が呼び止めた。



「田美ちゃん?」


裂空は驚いて振り向く。

一体どうしたのだろう。


「これ・・・使ってみて」


そう言って田美は袖の中に隠していた物を取り出して、裂空に差し出した。



「これは・・・」


上手く使えば勝てるかもしれない。

田美ちゃんの手からそれを預かり、剣を構える。




「ぜーんぜん動かないなぁ・・・早く頸動脈切りたいね〜」


さっちゃんは大鎌を頬ですりすりほお擦りする。


その時、回転する刃で出来ていた竜巻が内側から爆破して崩壊する。


そしてすかさず裂空は爆風から飛び出し、さっちゃんに切り掛かる。


「そうこなくっちゃ♪」


さっちゃんは大鎌で裂空の剣を受け止める。

そして裂空を遠くに振り飛ばし、それを追いかける。



一種の賭けだな・・・


そう思って剣を構え、あいつの鎌を受け止める。

剣を押してバランスを崩させて、剣を振るう。


それは鎌で受け止められ、今度は俺が押し返される。


迫り来る鎌を避け、頭目掛けて剣を振る。


しゃがんで回避され、その体制のまま横回転してくる。

おそらく足を切るつもりだろう。


ジャンプで回避し、両手で剣を握り、あいつ目掛けて振り下ろす。


それを読んでいたのか、簡単に鎌で受け止められる。


今がチャンスだ。

大鎌を踏み台にして高く飛び上がり、空中に舞い上がる。


「さっさと堕ちてよ〜」


さっちゃんも飛び上がり、裂空に迫って来る。


俺は剣で鎌を引っ掻け、体を回転させて地面にたたき落とす。


しかしさっちゃんは空中で体制を整え、地面に着地する。


「おらぁっ!」


剣の刃に力を集める。

刃が光り輝き、眩しい光を纏った時、剣を投げつける。


剣は回転しながらあいつに向かってゆく。



さっちゃんはそれを鎌で弾いたが、バランスを崩してしまう。


「でも、剣を無くしたらあいつも・・・」


そう思い裂空を見ようとした。


が、



「え・・・」


頭に何かが刺さったような感触がした。



「・・・」


俺の作戦・・・というより思い付きが上手くいった。


まずはどうにかして奴の体制を崩して、さらに奴の目線も逸らす。


で、その隙に・・・


田美ちゃんから貰ったナイフを刺す。




「あ・・・」


さっちゃんは呆然としていた。

自分が死ぬなんて想像も出来ないのだろう。


俺は空中に弾き上げられた剣をキャッチし、落ちる勢いを利用して、奴に剣を突き刺す。


頭の上から、剣が突き刺さり、鮮血が辺りに撒き散れる。


その後さっちゃんはバタリと倒れ、二度と動く気配はなかった。


「田美ちゃん、ありがとう。これのおかげで助かったよ」


田美ちゃんにナイフを返した。

しかし意外だった。田美ちゃんがナイフ使いだったとは。


「ううん、私は今使えなかったから・・・」


田美ちゃんの両腕を見る。

鎌で斬られたのか、服に血が滲んでいる。


俺は顔を自然にしかめた。何で田美ちゃんが怪我をする前に見付けられなかったのか。


頭に暖かい感触が伝わる。

顔を見上げると、田美ちゃんが俺の頭を撫でていた。


「クー・・・ありがとう」


「いや・・・っと、そ、それよりも、田美ちゃん。怪我してんだからこんなことしちゃ駄目だよ」


照れ臭かったのもあるが、何より田美ちゃんに何かあったら大変だ・・・


と、ここでもう一人のことを思い出す。


「おっさん、大丈夫か」


「ああ、私のことは心配しなくていいよ。それより東北道さんの止血が優先だよ」


そう言われればそうだ。

軽傷でも早めに治療しなきゃ。


「田美ちゃん」


おっさんと一緒に止血をしながら、田美ちゃんに話し掛ける。


「これからは・・・これからは、俺が田美ちゃんを守るから」


「・・・私も、クーを守れるくらい強くなる」


田美ちゃんはそう言ってくれたけど、やっぱり俺が田美ちゃんを守らないと。



これを一平は近くで見ていた。


二人ともお互いに顔を合わせてないから分かってないだろうけど、顔が赤く染まっている。


まだまだ素直じゃないなぁ、と一平は思わず笑いそうになった。


この二人を見守っていこう。

そう、さりげなく誓った。








砂弥と口裂け女は対峙していた。

どう動けばいいのだろう。


黙っていても始まらない。

私は口裂け女に向かって飛び出した。


「はあっ!」


銃を銃剣に変え、口裂け女に切り掛かる。

口裂け女はそれをバックステップでかわし、手を上にかざす。


その瞬間、口裂け女のマニキュアで真っ赤に染まった爪が伸びる。

それを私に向けて思いっきり振り下ろす。


私は横に転がって回避し、銃口を口裂け女に向ける。


が、突如右側から嫌な予感を感じて、銃からバリアを出す。


次の瞬間、バリアに何かがぶつかる。


それは先程私が避けた爪だった。

恐らく地面に減り込んだ後、そのまま横に持ってきたのだろう。


だとしたら結構なパワーがある。

一発でも直撃すれば致命傷になるかもしれない。


バリアで防ぎつつ、また私は横に転がっていった。


口裂け女の爪は壁を破壊し、深く突き刺さる。

口裂け女は爪を元に戻し、私に駆け寄って来た。


桃太郎程ではないが、かなりのスピードだ。

動きをよく観察する。

相手がどうくるのか・・・

私は銃剣で左側に銃を振る。

そして、口裂け女の爪と銃剣がぶつかり合う。


すると口裂け女は私を蹴り上げようと足を振る。

私はギリギリで距離を取り、再び銃を構える。


相手の身体能力が強すぎる。

これじゃ接近戦は不利・・・


銃で押し切るしかない。


銃から火球を撃ち、それが数発命中して口裂け女は後ろに転がる。


すると口裂け女は爪を振り回し、辺りを適当に破壊する。


煙が充満し、奴の姿が見えなくなる。



「面倒なことを・・・」


とりあえず風でも撃って煙を消そう。

そう思って銃を向けた瞬間。



「!?」


鈍い音と共に体に重い衝撃が伝わる。

同時に何かが体から流れ出る感触がした。


体を見ると、臍の左側を黒い物体が貫通していた。


やがて煙が晴れ、物体の正体が分かる。

それは伸びた口裂け女の髪だった。


爪だけじゃなく、髪まで伸ばせるのか。


髪は勢い良く引き抜かれ、全身を貫くかのような痛みと共に大量の血が体から飛び出す。


「ぐふっ・・・」


私の体は力無く倒れ込む。

力が入らず、立ち上がる気力も湧かない。


段々と視界がぼやけてくる。

口裂け女の気配も近付いて来る。


もう、今度こそ死んじゃうのかな。

体が冷たくなる感覚とともに私は意識を手放した。






銀はモニタールームでじっと待っていた。

落ち着かないのか、絶えず貧乏ゆすりを繰り返している。


「砂弥・・・大丈夫かしら」


「本当に心配性ね・・・砂弥ちゃんがそんな簡単に死ぬ訳無いじゃない」


乃璃香が銀に言ったが、銀の様子は全然変わらなかった。


「貴女平気なの!?砂弥が死ぬかもしれないのに」


「平気な訳無いでしょう。でも、騒いでも何も変わらないわ」


乃璃香は静かに、それでいて力強く答えた。


そして、空を仰ぐかのように天井を見上げた。


「信じるしかないのよ。あの娘を」







ぼんやりとした中、皆の顔がはっきりと浮かび上がってきた。


「砂弥、気分はどう?」


白馬は優しい顔でいつも親切にしてくれた。


「ほら、さっさと歩きなさいよ」


ルーンは素っ気ない態度が多かったけど、本当は優しい人だった。


「砂弥ちゃん、銀は何発でも叩かないと分からないわよ」


乃璃香さんはいつも楽しい時間を過ごしてくれて、本当のお姉さんみたいだっ。


「赤梨さん、皆を頼んだよ」


山吹先生は皆を見守ってくれてた。


「おい、赤梨、起きろ」


緒存君はぶっきらぼうだけど、実際は優しくて・・・


「赤梨さん・・・私も手伝います」


田美は大人しいけど、ひたむきでいい子で・・・



「砂弥・・・」


銀は、変態だし馬鹿だし・・・


でも、私を熱くしてくれる。

いつだって、あの人を見るだけで胸の鼓動が激しく、止まらなくなって・・・



帰るんだ。

大切な・・・仲間達の所へ!!






意識が現実に引き戻される。

力が入らない身体を奮い立たせて強引に立ち上がる。


視界がはっきりしない。

足もフラフラしてきた。


私はさっき刺された所に指を食い込ませる。


「っ!!」


全身に鋭い痛みが走る。

同時に、それのおかげで意識がはっきりした。


口裂け女を睨みつけ、傷口から手を引き抜く。

そのまま銃を握りしめて銃剣に変える。


激痛がある内が勝負だ。

それに、きっとこの傷じゃ長くは持たない・・・


そして私と口裂け女は同時に駆け出した。


口裂け女は爪を1m程伸ばし、私に振りかざす。

私は銃剣で受け止め、反撃に斬り返す。


互いに中々攻撃が当たらず、衝突音だけが響き合う。


その時、口裂け女が髪を伸ばしてきた。


爪を銃剣で弾きつつ、髪をスレスレでかわしつづける。


口裂け女の横に飛び込むように転がり、その後ろを髪が刺して行く。


地に手を付いて体を支え、逆立ちの体制を取って脇腹に回転蹴りを叩き込む。


奴が怯んだ隙に腕を思いっきり地面から押し離し、口裂け女の頭上まで飛び上がる。そして、口裂け女の顔面を蹴り飛ばし、奴が転がり回っている隙に氷の弾丸を追撃に打ち込む。


しかし口裂け女は直ぐに起き上がり、氷の弾丸を全て手で叩き壊す。

私はすかさず電撃を発射する。


電撃は口裂け女には届かず、さっき口裂け女が砕いた氷のかけらに感電する。

氷は口裂け女の周囲に飛んでいたため、それに感電した電撃は口裂け女を閉じ込める牢となる。


無論直ぐに破られてしまうので、急いで口裂け女に近づく。


さっきのように隙は見せない。

迫り来る髪を避けながら、口裂け女に近付き、巨大なビームを放つ。


直撃した口裂け女は壁まで吹き飛び、壁にめり込む。


でも奴に隙は出来ていなかった。

また髪を伸ばし、私を刺し殺そうとする。


私は通路の壁に向かって走り出す。

当然髪は私目掛けて襲い掛かって来るが、それが狙い。


私は壁を蹴って回転しながら空中に飛び上がる。

体が丁度地面に逆さになった所で銃を口裂け女に向け、誘爆レーザーを発射する。


レーザーのひとつが口裂け女の右手に当たり、その瞬間、レーザーの当たった所が爆発する。


口裂け女の悲鳴と共に、左足に何かが絡み付く感触がした。


口裂け女の髪が私の足を捕らえていた。


口裂け女はすぐさま髪を縮め、私を引き寄せる。

そして、左手の爪を再び伸ばす。


私を切り刻むか、串刺しにでもするつもりなのだろう。


させないけどね。


誘爆レーザーを数発撃ち、銃を左手に持ち替えて髪を左側へ押し込む。


放たれたレーザーは口裂け女の爪に命中し、爪を爆破する。


それで怯んだのも加わり、私が髪を押したことで口裂け女の体制が崩れる。


右手の拳を握り、先程まで引っ張られていた勢いを利用して思いっきり口裂け女の顔を殴り付ける。


殴られた口裂け女は口から血を吐き、地面に仰向けに倒れる。


その上に乗り、口裂け女の左足と右腕を足で押し付け、銃口を口裂け女に向ける。





「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」



光弾を口裂け女の全身に乱射し、弾が当たる度に鮮血が辺りに撒き散らされる。


「はぁ・・・ふぅ・・・ふぅ」


体中の力が抜け、地面に膝を付く。全身返り血まみれになってしまった。


そしてそのままバタンと倒れ込んだ。


「もう・・・・・・寝よ」


再び私はそこで意識を手放した。








「砂弥・・・・砂弥・・・・・・砂弥!」


誰かの声がする。

ゆっくり目を開けると銀の顔が視界に入った。


どうやら転送が間に合ったらしい。


「よかった・・・本当によかった」


銀は私を抱きしめる力を強める。

銀の暖かさが全身に広がる。


ああ・・・やっぱりこの温もりが1番だ。

私の体中を幸せで満たしてくれる。この人が私の居場所、私の・・・幸せ。


「銀・・・・・」


私は、そっと銀の頭を撫でて銀に身を任せた。


二人は、モニターを見ることなく、互いを感じ合った。




赤梨砂弥 65点







「やっと一段落か・・・あー疲れた」


裂空はその場にドスンと座り込んだ。

そして振り返り、口を開く。


「おっさん、怪我治ってるか?」


「うん。問題ないよ」


一平は微笑みながら返事をした。

それを見て、裂空はホッとしたように息を吐いた。


「・・・おっと、私はこれで帰るとするかな。じゃあね、空君」


一平は何かに気付いたそぶりをすると、口元を緩めて自分の部屋にさっさと帰ってしまった。


その時、背後から声が聞こえた。


「クー」


ハッとして振り返ると、そこには田美がいた。


「田美ちゃん!怪我とかは!?ちゃんと・・・治ってる?」


「うん・・・平気」


田美ちゃんはそうやってにっこりと笑った。


初めて会った時はこんなに綺麗に笑える子だとは思ってなかった。

でも、今は違う。


きっと田美ちゃんの笑顔が、今の俺の生き甲斐なんだ。


「田美ちゃん・・・」


「・・・なぁに?」


「ちょっと・・・抱きしめていい?」


「・・・いいよ」


俺はそっと田美ちゃんの体を包み込んだ。

ああ、田美ちゃんってこんなに暖かかったのか。





砂弥と裂空は、暫しの間、それぞれの想い人の温もりに身を委ねた。

想いが永遠であると信じて・・・・・

さっちゃんがここで退場するのは寂しかったです。

しかし再登場は出来ません。


口裂け女もゲストとしては惜しかったです。


ボスの中でも記憶に残る敵になれば幸いです。



次回はいよいよ節目・・・というか折り返し地点です。


では、また次回で。

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