第二話 願いを述べよ
「うわあなんだここ」
ダンジョンに入ると、そこには別の世界が広がっていた。
雲一つない青い空。
生き生きとした緑色の芝生。
それが果てしなく続いている。
草木が一つもないゴルフ場みたいな印象を受けるな。
「さて探索しちゃいますか」
頭に鍋を被り、斧を装備。
さらには諸々入ったリュックサックを背負い、俺は探索を始めた。
「あれ!?」
まず俺はどこを切り取っても同じ景色なので、出口であるゲートを見失わないよにゲート周りを散策しようと考え、ゲートの方を振り向く。
すると、入ってきたはずのゲートはなかった。
その代わりに、
「石像……?」
石像があった。
ローブを着て両手を広げた女の石像だ。
大きさは結構高くて、俺の位置からだとギリギリ頭が見えるくらい。
この空間にはちょいとミスマッチな気がするが……
というかまて、もしかしてコイツがモンスターって奴だったりするか!?
(———願いを)
「うわっ!?」
びっくりした!
なんだ今の声、今この石像喋らなかったか!?
明らか石像の方向から声が聞こえたが……
というか……
(———願いを述べよ)
声しっぶゥ!
なんだよ、なんでだよ。
この石像やけに美しい女性なのに、声がおっさんなんだよ。
そこはもっと妖艶なボイスで来てくれよ。
ってかせめて女性であれ。
(———願いを述べよ)
さっきから願いを述べよってうるさいな……
何度も何度も。
というか説明くれよ。
だいたい願いつったって、何願えば良いんだよ。
(———かつての者たちは、
天を割く『岩』を、
時間を止める『氷』を、
大地を穿つ『風』を、
全てを癒す『水』をそれぞれ願った。貴殿はこの中なら何を選ぶ?)
岩、氷に風に水?
これって一体……ああ、そういうことか!
そういえば先輩が言っていた。
ダンジョンを攻略する探索者には火だしたり風飛ばしたりできる魔法やスキルを使えるようになるらしい。
そしてその魔法やスキルはダンジョンにある石像が与えてくれると。
ひょっとしてこの石像は、先輩の言っていた石像なのかもしれない。
岩か氷か風に水か。
石像が言っていた中で選択するなら水一択だ。
モンスターと戦うってことは怪我もするはずだから回復できる水にする。
あと水出せるなら水道代浮きそうだし。
「じゃあ水を———」
いや、待てよ?
この石像はこの中なら何を選ぶと問いたが、別に挙げた例から選らぶ必要はなくないか?
かつての者たちは願った。
それなら俺も本当の願いを言っても良いはずだ。
俺の願いは……
「俺は運を願います」
運だ。
俺は運でいい。
魔法にはかなり興味を惹かれる。
だが俺にとって運に勝るものは無いんだ。
勝負事において、基本的に知能が高いやつか才能あるやつが強い。
だがそんな強いやつに勝てる方法がある。
それも相手より強くなる必要もない。
普通に考えたらあり得ないが、一つだけある。
それは相手の実力を凌駕する程の運で対抗すること。
つまるところ運が良くなればいいんだ。
モンスターと戦うときにも運がいいと、実力差があっても逃げられる可能性とか高まりそうだし。
ワンチャン勝ちとか狙えるだろ。
そして何より、大当たりが出やすくなって尚且つ継続率高まると思ったからだ。
ようはパチンコで勝てるかなって思った次第だ。
(———貴殿は『運』を望むか。いいだろう)
すると石像が青く発光した。
ついでに俺も同じく発光する。
中々に幻想的だ。
(———望み通り『運』を授けた。願わくば全てのダンジョンの制覇を。では貴殿に幸あれ)
その言葉と共に世界が揺らいだ。
それと同時に俺の意識が途切れた。