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第二話 出会い

 駆け出し冒険者の少女が森の中を全速力で走っている。息を切らしながら、なにかから逃げるように。

 「はぁっ、はぁっ」

 少女はもう限界のようで、今すぐにでも倒れてしまいそうだ。

 「あっ、ぐぅっ」

 足がもつれその場に倒れこむ。そして─。

『ウキャッツ!ケッケッケ』

 「くっ……ここまでのようね」

 追いついたゴブリンの群れに囲まれてしまった。

 『ゴーブゴブゴブ』

 「ちょっと山菜を取りに行くだけのクエストのはずが、こんなことになるなんてついてないわ」

 『ケッケッケ、ケヒッ!』

 ゴブリンが手に持っているこん棒を振り下ろす─。


 ※


 一方そのころ伊世カイトはなにをしているのかというと。

 「どーちーらにーしよーかなっと、よしこっちだ」

 棒を倒していた。

 「いやー、最初は森の中に転生って雰囲気あっていいなって思ったけど、よくよく考えれば街の場所とかわからないから結構困るんだな~」

 てくてくと棒の倒れた方へ歩いていく。

 「そういえば家が全焼しちゃったみたいだけど、ちゃんとPCも燃えてくれてるかな」

 HDDが燃えずに残っていたら最悪なことになる。そんなことを心配していると─。

 「ん、あれは……」

 ゴブリンの群れがどこかに向かって一直線に走っていく後ろ姿を見つけた。

 「なんだろ。レベル上げ的なものも兼ねて追いかけてみるか。レベルって概念があるか知らないけど」

 そう言うとカイトは手をなんかかっこいいポーズに構えた。

 「さっきいろいろ試してちょうど使えそうなスキルを見つけたんだ。いくぞ、【アルティメットランニング】!!」

 そう唱えるとカイトはチーターのような速さでゴブリンの群れに向かっていった。


 ※


 ゴブリンに囲まれ、絶体絶命のピンチの駆け出しの少女。ゴブリン達はにたにたと笑いながら少女ににじり寄る。

 「どうせなら、ただ死ぬんじゃなくせめて一匹でも道連れに─」

 「【アルティメットナックル!!!】」

 『ゴブー!!!!』

 白髪の謎の男がすべてを一撃で空の彼方まで吹っ飛ばしてしまった。

 「えっ……」

 少女は混乱する。一瞬で状況が変わりすぎて、何が起こったかわからない。

 「ふぅっ、またワンパンで終わってしまった……」

 この男はいったい誰なのだろう。ゴブリンとはいえあの群れを一撃で倒すなんてことができるくらいだ。よほど高名な冒険者なのだろうかと勘繰ってしまう。

 「トウキョウ……ふふっ」

 なにかをつぶやく少年。

 「あっ、あの!」

 少年がこちらを振り向く。

 「ん……?」


 ※


 「【アルティメットナックル!!!】」

 『ゴブー!!!!』

 ゴブリンの群れを一撃ですべて葬り去る。これがスキルメイカーの力、圧倒的だ。

 「ふぅっ、またワンパンで終わってしまった……」

 あっけない。これがもし少年漫画だったら、自分の冒険者としての名前はそうだな、出身地を考慮して─。

 「トウキョウとかいいんじゃないか、ふふっ」

 そんなことを考えていると。

 「あ、あの!」

 誰かから話しかけられた。ゴブリンに夢中で、人がいたことに気が付かなかった。声のする方へ振り向いてみる。

 「ん……?」

 女の子だ。危ない危ない、もしうっかりアルティメットナックルが当たっていたら、貴重なヒロイン候補が吹っ飛んでしまうところだった。

 「大丈夫かい、お嬢さん。もう心配はいらない。かわいい君を泣かせるわるーい奴らは、このボクが退治しておいたよ」

 「きゃっ♡」

 どうやら少女はすでにメロメロのようだ。

 メロメロになるのも仕方ない。彼女からすれば颯爽と駆けつける王子様のように映ったに違いない。

 「ところで、街への道はどっちなのカナ!」

 「あっちですぅ♡」

 やれやれ、困った子猫ちゃんだ。こんなにメロメロだと、一緒についてきてしまうのではないか。

 「やれやれ、猫を拾うと母に怒られてしまうのだがな。ついてきたいならついてくるといい」

 そう言うと颯爽と街へ向かって歩き出す。女の子は立場をわきまえているのかついてくる気配はない。

 「ふっ、遠慮がちな子だ」


 と、いうのは妄想であり、実態としてはこうである。

 「だ、だだだいじょ……たたたいじじじ」

 「きゃっ」

 ドン引きする女の子。

 「ままま街、街はどっちちち」

 「あ……あっちです」

 そんな目で見ないでくれ…。

 「やれやくあqwせdfrtgyふじこlp」

 「…?」

 「えんりょりょりょ」

 壊れたロボットのようになってしまった俺は、そうして街へ向かって歩きだした。


 ※

 その後─。

 「いやおかしいだろ。いくら不登校期間に引きこもりだったとはいえあんなに噛む!?」

 相当落ち込んでいた。彼の長い不登校期間の間、全然人としゃべっていなかった弊害が出てしまっている。それにしても噛みすぎだが。

 「人に会うたび毎回こんなことをしてたら俺は一気に不審者だ。まずい、なんとかしないと─」

 そんなことを考えていると街の門にたどり着いていた。門前には警備の人が立っている。

 「こうなったら一か八か……【アイアンハート】!!」

 《説明しよう!アイアンハートとは、心を鋼のように強くすることで、例え巨大な龍を相手にしようと、挫けない強靭な心を手に入れるスキルである!!ちなみに、スキルメイカーの効果を誤認しているので無論アイアンハートもプラシーボである!!》

 スキルをかけ終わると、カイトは警備兵のもとへ向かう。

 「こんにちは。街に入りたいのですが─」

 「ああいらっしゃい。身分証とかはなにか持ってるかな」

 「あ、すみません。そういった類のものは持っていなくて、大丈夫ですか?」

 「ああ、いいよいいよ。形式的なものだから。ようこそ、冒険者の街、ビギナーズタウンへ!!」

 すんなりと門を通してもらった。

 いや形式的なものであっても身分証のない人を通しちゃいけないだろ。それにしても─。

 「やはりスキルメイカー、とんでもないギフトだ……!」

 

 カイトは街にたどり着いた!!



 続く

 

 

 

Twitter→ https://x.com/IsekaitoProject

ようつべのほうもよろしくおねがいします!

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