表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/20

Step 10 セカンドコンタクト・イントロダクション

スローワルツ、ファーストターンからセカンドコンタクトへ移ります。

ニューヨークの新聞記者が記録した音声メモ。日本ブランドのレコーダーにあったものは、フェルダー一族に連なるとある女性の証言で…?

第18話 イントロダクション:eine Einführung





(テープの擦過音。紙の上を鉛筆が走る音)



(男)えー、テス、テス…はい、OK

 それでは始めたいと思います。よろしいですか?


(女)ええ。わたしはリラックスしているつもりですよ。本社でプレゼンしている最中に左右の履物がちぐはぐなことに気付いた時ぐらいには。


(男)あははは…それは頼もしい。

 これからする質問のうちいくつかは、貴女にとって辛い記憶や苦痛をよびさます可能生があることを、くどいようですがもう一度ご確認下さい。


(女)人は泣きながら生まれ、悔やみながら生きて、惜しまれて消えていくもの…いつ後悔してもなきにひとしく、未來に怯えたとてはじまらない。


(男)シェイクスピアですか?


(女)ううん、今度兄が上演する芝居のセリフよ。自分で初めて脚本まで書いたの。その言葉を聞いたら慢性自信喪失症から立ち直れるかも。


(男)確か、ネダーランダー劇場にかかる予定でしたね。前売りはプラチナチケットと化して いるとか。同僚がファンでして、どうにか手を尽くして一枚手に入れたと狂喜乱舞しておりました。ニューヨーカーあたりの記者でしたらそんな苦労も無いのですが…

 脱線してしまいましたね。では、お願い致します。

 貴女の御氏名と御出身を。


(女)ダニエラ=フェルダーです。もし入れてくださるなら、「フォン」と。生まれはステイツだけど、まだ オーストリアには地所があるから。戦争の後の手続きって面倒よね。権利は主張しないと消えてしまうものだからといって…

 あら、先走っちゃったかしら?


(男)いいえ、マドマゼル。脱線は大いになさってください。その方が内容が充実したものになります。


(女)私、上司からもアドリブが多いってダメ出しされるのよね。実力が伴って いないのに、すぐ調子に乗ってしまうから。…あらそれ、よく見たらうちの商品なのね?


(男)日本製は安くて電池がよくもつので重宝しております。いえ、良い意味で、ですが。


(女)分かりますよ。安いという点で売り込むのは大変なんですよね、なかなか。東洋人の会社を胡散くさく思う悪習が、この「自由の国」ですら根強くてイラッとすることもあって。


(男)戦争中は、ゲルマン系の苗字というだけで石を投げられたそうですね。知り合いの話ですが。


(女)それだけじゃ済まなかったですね。男の子にはすれ違いざまスカートを引っ張られてからかわれるし、女の子には仲間外れにされておままごともお茶会も誘われなかったし。家族が多かったから寂しくはなかったんですが、でなければ本当に辛かったと思いますよ。


(男)ご家族は、えーと…


(女)父、母、兄が3人、姉が2人、弟が1人、私…


(男)9人でいらっしゃいましたか。


(女)いえ。10人です 。家族はその人を入れて10人。血は繋がらないのですが、とても大事にされています。


(紙をめくる音)


(男)戸籍には入っていないのですね…お名前を。


(女)イアン大おじさま。みんな大おじさま、って呼んでいます。




『ニューヨーク・サン』コラムニストの録音テープより

ラベル:1962,6,15

第二次大戦中、ドイツ系のアメリカ人は大変な嫌がらせを受けていたそうです。(日系人も同じくです。)

歴史は大きくうねり始めます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ