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僕の彼女は押しに弱い  作者: あんぜ
四章 日常(平和な話だけです)

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幕間 二学期末試験

 ちょっと時間が戻りますが十二月の期末試験です。

「来週から期末試験だね。試験中の予定だけど……太一くんはどうする?」


 昼の休み時間、自販機でお茶を買った帰りに渚が試験期間中の予定を聞いてくる。

 ただ、半分くらいは彼女も分かって聞いている。


「う~ん、遅くはならないようにしたいけど、やっぱり日が暮れるの早いから渚の家でいい?」


「うん、わかった。お菓子焼けるよう準備しておくね」


 渚の家に行ってお勉強会――なわけではない。単に試験期間中は早く帰れるから午後をお家デートに充てようと言うだけの話だった。いや、中間試験では確かに勉強会のつもりで集まったのだけれど、渚と二人で居ると全く捗らないことに気が付いたのだ。


 そういうわけで期末は最初から諦めて、試験期間中はお家デートとした。


「渚の作るお菓子はおいしいから夕飯が入らなくなるのが難点だね」


「普段は甘いものを控えてるの。太一くんと一緒の時くらい付き合って?」


「そっか、わかった」


 そして諦めていると言うのは別に試験を諦めているわけではない。校内試験は二人とも、夜に勉強すればそこそこ良い点が取れていたし、それぞれの得意分野なんかは満点近かった。全国模試なんかはちょっと力を入れるけれど、模試は普段の実力が物を言うタイプの試験だから、慌ててやってもそう差が付かないことを二人とも心得ていた。



 ◇◇◇◇◇



 じゃあ――と教室に戻って来て渚と別れる。

 相馬はノノちゃんと購買に行っているから、教室に戻るのは僕らより少し遅め。

 僕は普段通り田代や山崎、相馬と一緒に弁当を食べた。


 それぞれの教科の試験範囲が出揃うと、昼休みもみんないくらかお勉強モードに入っている。


 二学期も末となると、それぞれ勉強するグループができていて、グループ内に得意なメンバーが居ない教科は別グループから出張したりノートの貸し出しを行ったりしていた。ノート作成に拘るやつはとことん拘っているし、地理や化学、生物といった分野が得意な男子は女子の注目を集めたりしていた。


「田代くん、地理のノートの試験範囲、写させてもらってもいい?」


 そう控えめに声をかけ、僕らの元へやってきたのは同じクラスの女子二人。


「うん、いいともよ」


 そういってノートを二人に差し出した田代はちょっと得意げ。さらに――。


「あ、私も後でいいかな?」


 ――と声をかけてきたのは宮地さん。田代はニッコニコで――どうぞどうぞ――なんてカッコつけて言う。


 実は、前の業間にも田代の地理ノートは話題になっていた。さらに生物のノートも女子に貸し出されているはず。田代は普段があんなだから誤解されやすいが、授業中のノートはこまめに取る上、授業中に先生が述べた重要ポイントも網羅した参考書顔負けの色付きのまとめノートを作っている。この2つの選択科目では田代は常に上位に居た。


「田代、試験期間中だけは女子に人気だよなあ……」――山崎が妬ましげに言う。


「俺のイケメン具合が皆に知れ渡って困るなあ」


「まあ、そうだね……」


「惜しむらくは鈴代ちゃんと全く選択科目が被ってなかったことだ……そこを一歩、太一に譲ってしまった」


 大した自信だったが、僕も渚と被ってるのは物理だけ。地学は選択する生徒が少なすぎて化学がほぼ固定のようになってしまっている。社会の選択科目については渚は日本史を選択していた。


「いや、僕も地理だし。物理と化学は同じだけど」


「だから一歩っつっただるぉ?」


「あー、はいはい」



 ◇◇◇◇◇



 さて、男子の田代と双璧を成す、女子の意外なノートまとめ名人がれいの三人組のリーダー的存在、笹島 七虹香(ささじま なじか)だった。笹島は日本史を選択していたが、やつのまとめたノートは女子の間でもわかりやすい、覚えやすいと評判だった。さすがに男子にまで流れてきたことはないので目にしたことは無いが、渚が感心していたくらいだから出来がいいのは間違いない。


 ただ、日本史は得意な女子が多く、必ずしも笹島がトップに居るわけでは無い。渚、それから山咲さんもかなり上位に居ると言う話。話――というのも、順位が張り出されたりするわけではないので本人に聞かないとわからないのだ。プライバシーがどうので公表されなくなったらしい。


 そしてあの笹島がそれなりに勉強ができるというのも偶然ではなく、1-Aと1-Bは入試の際の点数で振り分けられ、本人希望のもと集められた進学コースではあった。僕は入試の面接の際に何と無しにマークしただけだったけれど、成績上位者が集められたクラスとは考えもしなかった。普通に考えたら当たり前なのだけれど、当時の僕は考えなかったのだ。


 ただまあ、それでも高校に入ってからの授業態度や勉強具合によっては一般クラスに落ちたりはするのだろう。二学期末になると成績が振るわないクラスメイトには焦りが見える者もいた。


 三村なんかもその一人。姉ナントカ先輩が居なくなってからというもの、彼女の立場は弱くなってしまったのか、渚なんかに対してもちょっとおどおどしてしまっている。今も笹島や萌木に教わって試験範囲を再確認したりしているようだ。



 ◇◇◇◇◇



「はぁ~、明日から通常授業か~」


 渚との充実した試験期間を過ごせた僕は、最終日の渚のお菓子が焼き上がるのを二人で待っていた。田代たちからは打ち上げに行こうと誘われたけれど、――やっと鈴代とゆっくりできるから――と適当こいて逃げてきた。


「今日の数学の試験はどうだった?」


「ケアレスミスがなければほぼ満点だと思うけど」


「そっか。私、図形問題がちょっと不安かも」


「図形だけは数こなすしかないよね。模試とかで差が出やすいし。今のうちに見直しとく?」


「うん、じゃあ」


 そう言って始めたはずの数学の試験の図形問題の復習は、問aから問cまで見直したあたりでHの角度を求められ、渚の部屋で答え合わせすることになってしまった。



 そんな感じで僕たちは期末試験を終えた。

 結果はまあ、いつも通りだったと思う。



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