第9話 ライトヘル
「敵が来る前に準備終わらせないと」
まず、敵が通るであろう場所に土魔法で土を柔らかくし、水魔法で土に水を多めに浸透させて地面をドロドロにする。
これで敵の進軍速度を落とせる。
あとは、この周囲の気温を下げよう。水魔法と風魔法を使って冷気を生み出す。
地面が凍ったら元も子もないので気温は5℃くらいにしておく。
これで寒い中ぬかるんだ地面を進まないと行けなくなった。
「準備は終わりにして城壁に戻りますかね〜」
俺は城壁に戻り兵達に作戦を説明した。
〜数時間後〜
レアル・ムルシア王国軍視点
「先遣隊による食料略奪計画は失敗したようだが、所詮主力兵の居ない雑兵ばかりだ。今日中にエリオスは我々のものになるだろう。」
「そうですね、王子殿下。ですがエリオスには先遣隊を破った者が居るようなので注意が必要です。」
「うむ、そうだな。しかし我が精兵レアル・ムルシア王国軍の大半がこの地に集結し、因縁のブルーム王国を倒すために準備してきた。負けることはあるまいよ。」
「そうですね、この兵士の数を止められるとすれば人間の型から外れた化け物か神ぐらいです。」
かくして、レアル・ムルシア王国軍五万八千の兵がブルーム王国への侵攻を開始した。
レアルム・ムルシア帝国が来る前に準備を終わらしたカミトは最後に決断を迫られていた。
「準備を終わらせたけども、あの大軍を退けられる魔法を使いたいけどルール違反なんだよなー。」
「使ったら上司になんて言われるか…。どうしようか。ここまで助けてほったらかしにするのも違うしなー。」
ブツブツ言いながら考えてると
「どうしました?カミトさん。」
「いや~、あの大軍を退ける魔法を使うか迷っていて」
「使うのを躊躇うほどのリスクがあるんですか?」
「まあ、そうですね」
「であれば、無理して使わずに王都に戻っていただいても大丈夫ですぞ。カミトさんは旅人ながら我が国民を助けてくださった。それだけでも十分です、あとは我々エリオス警備兵二千にお任せください!」
「救援軍が来るまで誇り高く必死に守り抜いて見せます!」
正直、ここに残って迎え撃ちたい。けどただの通りすがりの旅人にこれ以上助けてもらったらエリオスの守備を任せられている彼らの誇りを傷けてしまわないだろうか。
「わかりました。ここは守備兵の皆さんにお任せします。」
「感謝します。では、またいつか会いましょうカミトさん。」
「いつかではなく、必ずね。」
こうしてカミトはエリオスの街へ離れ近くの丘に身を下した。
そしてカミトは、レアル・ムルシア帝国五万八千の大軍を撃滅する大規模魔法ライトヘルを使用した。