第6話 謁見の間
副団長のダルトとその仲間の騎士団達と一緒に王都を目指している。
神なので地形や国の名前などは分かるのだが、現地の人にしか分からない情報もあるので、色々と情報を聞き出してみた。
ブルーム王国は現在、西に位置するレアル・ムルシア王国と小競り合いが続いており、いつ大規模な戦争になってもおかしくない状態らしい。
なので、王都に駐在する騎士団の殆どは国境に出向いているが、悪魔の発生頻度が多くなったため国境の騎士団の兵力を可能な限り割いて、悪魔討伐に当てているということだった。
他にも魔法についても聞いてみた。
この世界の魔法の分類は一般的には水、火、土、風、雷、闇、光、治癒となっている。ただこの属性以外の魔法を使う人がごく稀に居るらしく一概にこれが全てとは言えないらしい。
魔法を使えるようになるには使いたい属性に触れることで使えるようになり、水属性の魔法だったら水に数時間触れれば使えるようになる。
なので殆どの人は水属性を使えるのだが、使えても数十分で攻撃に使えるほどの威力は出せない。
まだ魔法の研究は進んでいないため、持久力や威力を高めるためにはどのような方法が良いかは解明されておらず、使いたい属性に多く触れるという大雑把な方法しか一般的には知られていない。
そのため、火、雷、闇からなる攻撃的属性などの身体に重大な影響を及ぼす属性の使い手は少ない。
火属性は火傷すればするほど熟練度はあがり、雷属性は雷に打たれれば使えるがそもそも雷が人に直撃することは殆どなく、打たれても死ぬことが多い。
そして、男の子の誰もが好きであろう闇属性の魔法はずっと暗闇に居ないと使えないらしく、太陽の光を浴びないため、慣れないうちは体調を崩しやすく性格も暗くなりなにもやる気が起きなくなり殆どは廃人になる。
この3つの属性は使い手は少ないため習得することが出来ればどの国に行っても重宝されるようだ。
他にも、どうすればその属性を使えるようになるのか分からない属性もある。光と治癒だ。
この属性を使えるものは攻撃的属性より使い手は多いが、発生条件が分かっておらず、突然使えるようになるらしい。
一応この世界の神様なので発生条件は分かっているのだが、教えたら世界中から目立ちそうなのでやめておく。
「おっと、話しているうちに王都に着くぞ」
有用な情報を聞いていたら王都に到着した。
そういえば、俺を王都に迎えてどうするんだろう。お礼に泊まる場所を教えてくれる程度なら有難いんだが、騎士団に誘われたら面倒だなー。
入ると訓練や騎士団の仕事で調査する時間無くなるから入りたくないんだよね。
考えているうちに王城の前に来てしまった。
(嫌な予感がするなー…)
副団長に連れられ城の待合室的なところまで来た。
「私は国王に報告してくるのでそれまで待っていて欲しいのだが大丈夫か?」
「はい、大丈夫ですよ」
城の中まで連れられてVIP対応のようなもてなしをされたら断れるはずないだろ!と思いながら返事をする。
「良かった。では行ってくる」
そう言い、ダルトは謁見の間に向かった。
メイドさんが淹れてくれた紅茶、作ったお菓子を神様になってから無くなった味覚という感覚を堪能し感動しているとお呼びがかかった。
「カミト様、王がお呼びですので謁見の間までお願いします。」
「謁見の間ですか…分かりました」
これから言われることは何となく想像がつく。どう断ろうか。
呼ばれたので謁見の間に向かい扉を開けた。
この世界の作法の教育を受けていないので、知っている知識(偏見)で挨拶してみる。
「ご機嫌麗しゅう、国王様。私は旅人をしていますウジガミ カミトと申します。今日のお日柄はとても良いですね」
※ちなみにこの日は曇りである
周りの家臣であろう人達には怪訝な顔をされ、ダルトはなんだか青ざめてる気がするが気にしない、だって教えられてないからね。
気まずい雰囲気が流れていると
「まぁ、良いだろう。貴君の無礼は許そう。実力はあるそうだしな」
「我の名はオブィリーデ・ブルームである。このブルーム王国の国王である。此度の活躍はそこの副団長から聞いている。悪魔を討伐してくれて感謝する。」
「どういたしまして」
「本来なら褒美を与えたいところなのだが、今のこの国の状況だとろくな褒美を与えられない。そこで、貴君にこの状況を打開してもらいたいのがお願いは聞いて貰えないだろうか?もちろんこの状況を打開出来たなら大きな褒美を与えることを約束する。どうだね?」
速攻で断ってもいいのだが、一応お願いを聞いてみようか。
「先にお願いを聞いても?」
「いいだろう。お願いと言うのは西のレアル・ムルシア王国との小競り合いを無くして欲しいのだ。」
「ほう…」
「手段は問わない。最悪相手の国王を暗殺するでも良し、相手の兵を皆殺しにするのも良し、まぁ、本音は相手同盟を申し込んでくる状況を作って欲しいんだが、とても難しいことだから無理して同盟を申し込めなくても良い。とにかくこの状況を終わらして欲しい。」
「んー……」
レアル・ムルシアの国王や兵を殺してすぐに終わらせても良いが、それは一時的に改善するだけであり、いずれ戦争は避けられなくなるし、そんなことしたら上司に存在消されるから、引き受けるなら同盟関係を結ばせる方向で頑張るしかないよなー。
情報が少なすぎて可能性があるのか分からないから少し情報収集してから返事することにしよう。
「申し訳ありません、国王。引き受けたいのは山々なんですが、私はこの国に着いたばかりでこの国はおろか相手の国の情報もありません。この状況では返事できないので、もう少し情報を集めてから返答してもよろしいでしょうか?」
「いいだろう。だがそんなに長いこと待てないので3ヶ月以内に返答してもらうがいいか?」
「もちろんです。そんなに長い時間はかけません。」
「では、頼んだぞ」
ブルーム国王と約束を交わした後にすぐに西に向かった。