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お題シリーズ3

長い子猫の夢

作者: リィズ・ブランディシュカ



 数週間前。


 飼っていた猫のにーちゃんが亡くなってしまった。


 その猫は、赤ちゃんだった時に「にーにー」と鳴いていたからにーちゃんと名付けた猫だ。


 にーちゃんは、長いこと生きていたから寿命だった。


 前々から獣医さんには長くないと言われていたけれど、それでもショックを受けた。


 亡くなった直後は悲しくなんてなかったのに。


 色々とやる事があったから、心配してくれた友人や家族に笑いかける事もできた。


 けれど、やるべき事を終えて時間があいてくると、悲しみがどっと押し寄せてきた。


 会いたい。


 また会いたい。


 にーちゃんの体をなでたり、ごろごろ甘える声を聞きたい。


 悲しみは日常の中で突然やってきては、ゆるやかに去っていく。


 それは、ふとした瞬間。


 にーちゃんのご飯をやろうとしてはっとしたり、遊び道具が家具の隙間に入っているのを見つけてびっくりしたりした時になる。


 そのたびに涙が溢れて、とまらなくなった。


「にーちゃん、一目でいいから会いたいよ」


 私は、一日ににーちゃんを思い出して何度も泣く事があった。


 そんな悲しみの日常がやってきた中で、夢の中に、にーちゃんがでてきた。


 私の元にやって来た時みたいに、子猫の姿で「にーにー」と鳴いて甘えてくる。


 老猫で生きていた頃みたいに、おっとりのんびりとした様子じゃなくて、好奇心旺盛でおてんば。


 私は「にーちゃん!」とその子猫を抱きしめた。


 にーちゃんだ。


 間違いなくにーちゃんだ。


 見間違えるはずがない。


 きっと私を心配して、夢に出てきてくれたのだ。


 この夢からずっと覚めたくない。


 私は、それからずっとにーちゃんと一緒に遊んだ。


 どれくらい遊んだか分からなくなるくらい、夢の世界にいた。


 けれど、そのうちにーちゃんが「にぃにぃ」とどこか困った様子で鳴き始めた。


 それは私に「早く目覚めなくちゃだめだよ」と言っているようだった。


 私はにーちゃんを抱きしめて「にーちゃんのいない現実なんかに戻りたくない」って言う。


 けれどにーちゃんはそんな私に活を入れるように、柔らかな肉球で猫パンチ。


「に!」


 と怒ったように一度鳴いた。


 私はしょんぼりしてしまう。


 そうだよね。


 もうこの世にいないにーちゃんに心配をかけちゃだけだよね。


 私は現実に戻る事を決意した。


「ばいばい、にーちゃん。いつもそばにいてくれてありがとうね」

「にー」


 抱きしめていた腕をほどいてにーちゃんを解放する。


 すると、景色が色あせて夢の世界が終わっていくのを感じた。






 目が覚めた私は気分転換に窓をあけて、空を見上げていた。


 きっとにーちゃんは空の上で今も私を見守っていてくれているはず。


 私がしっかりしていないと成仏できないだろうから、心配かけないようにしなくちゃ。


 私はほっぺを叩いて、気持ちを切り替えた。


 その時「にー」とどこからか泣き声が聞こえた。


「えっ?」


 視線を外に向けてみる。


 けれど、どこから聞こえてくるのか分からない。


 気のせいかな、と思ったけどもう一度「にー」。


 子猫の鳴き声が確かに聞こえてきた。


 その声は、小さくて今にも消えそうだった。


 もしかしたら、親猫とはぐれた子猫がどこかにいるのかもしれない。


 そうじゃないかもしれないけれど、私は確かめるために外に出ていく事にした。



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