プレゼント
取られるようなものは無いと思いながらも、家の防犯はしっかりしたいと思います。もし、強盗なんかが襲ってきたら、その時は返り討ちにしてやりたいすね。
すぐに警察に連絡がいくシステムなんかいいですね。やはり、身を守るのが第一です。でも、反撃するための道具なんかも......。
学者の男は、古い友人の家に呼ばれていた。改めて見てもすごい豪邸だった。
大企業の株の多くを保有している友人は、ほとんど働かなくても、遊んで暮らせるだけの金を持っていた。前回、訪問した時は、様々な高級腕時計や宝石、高級外車を散々自慢されて、あまりいい思い出は無かった。
自分の背丈の倍ほどもある門を目の前にして、彼は金に困っていない友人をうらやましく思った。研究には金が必要なのだ。
今回も、自慢に付き合わないといけないのかと、少し憂鬱な気分になる。
門についているインターホンを押すと、友人の声がして、しばらくすると門が開いた。
「オマチシテオリマシタ」
門が開くと、待っていた女性の人型ロボットがお出迎えしてくれた。これは、彼が友人にプレゼントしたものだった。
「ドウゾコチラニ」
ロボットに連れられ、池に架かっている橋を渡り、100メートルほど歩くと、やっと建物の中に入れた。
「オアシモトオキヲツケクダサイ」
ロボットにコートを預け、中に入りしばらく歩くと、様々な装飾がされた光り輝く部屋の真ん中で、見慣れた友人が椅子に座って待っていた。
「久しぶりだな」
友人は男の顔を見ると、にこやかに笑う。
「急に家に呼ぶなんて、なんかあったのか?」
男は尋ねた。前回、訪問した際は、家に置いてあった宝石が盗まれたとかで、学者である男に助けを求めた時だった。
彼はその時に、いろいろな発明をして、友人にプレゼントとして防犯グッズを渡したのだ。先ほど、彼を出迎えてくれたロボットもその一つだった。
「いや、今日は久々に顔を見たくなっただけだ。なんせ、お前のプレゼントのおかげで、もう強盗を1人捕まえたのだよ」
「ロープボックスか......」
「ああ」
ロープボックスとは、男が発明したものの一つで、宝石箱のような見た目をしたその箱を開けると、中からロープが飛び出してきて、開けたものを縛り上げるというものだった。
その箱の外観を、科学的に人間の目を惹くようにしたのだ。強盗も、真っ先にそれを開けたに違いない。
「ちゃんと動いたようで安心したよ」
「俺も強盗を捕まえられてよかった。最近は、お前の発明を眺めるのが趣味みたいなもんだ」
「それはありがとな」
「今の時代、何から何まで家でできる。会議もテレビでできるしな」
その時、ロボットがコーヒーを持ってやってきた。男はそれを受け取り、ロボットに礼を言う。一方、友人の方は受け取らなかった。
その代わり、ロボットが飲ませてくれた。
「お前な、そういう目的であげたんじゃないぞ」
男は、少しあきれながら言う。
「まあ、いいじゃないか。それにな、お前からだけじゃなくて、他にも色々プレゼントしてくれる人がいてだな......」
そう言って、様々な機能を持ったプレゼントの話をしてくれた。
「まず何といってもあれ」
そう言いながら、窓の外の塀を見る。
「この豪邸に侵入しようとすると、警察に直接連絡がいく仕組みになっている」
「ほーん、それは便利だな」
男が感心していると、今度は近くの棚に目を移す。
「あの中には、偽札がたくさん入っている。しかもただの偽札じゃない、爆弾なのだ。もし、強盗に金を要求されたとしても、あれを渡すつもりだ。ちゃんと俺の指紋には反応しないようになっている」
友人はにやにやと悪い笑みを浮かべながら言った。
「それは強盗も災難だな」
男は、札束を手にして、いろんな意味で舞い上がってる、強盗の悲劇の姿を思い浮かべていた。
「さらにな、この家全体にすごい仕掛けがあるんだ」
「まだ何かあるのか」
「実はな、俺が強盗に拘束されたとしても、ある動きをするだけで起爆する爆弾を、家のあちこちに仕掛けてある」
男は身構えた。
「安心しろ。コンピュータは俺の動きしか感知しない。今日みたいに客人が来る時に、いちいち起爆スイッチを切っておくのは大変だからな」
「そんなすごいシステムがあるのか」
「ああ、完璧なシステムだ。具体的には言えないが、手や足を縛られたり、口を塞がれたとしてもできる簡単な動きにしてある」
「それは......」
「さらに、ポーズによって起爆する爆弾が違うからな。目さえ隠されてなきゃ、強盗を木っ端みじんにできる」
「恐ろしいな......」
「なあに、正当防衛だよ。俺の身柄を拘束するようなことさえしなければ、そこまではしない」
「ふーん、でも塀があるから大丈夫じゃないのか?」
「いや、侵入してくるのは、塀からとは限らないからな......」
友人は鋭い目つきになった。何かあったのだろうか。男は、部屋のあらゆる所を見て、並べられた腕時計や、壁に掛かっている肖像画なんかも爆弾なのだろうかと思った。
しばらく雑談をして、二人がそろそろ飽きてきた頃、友人がタクシーを手配してくれた。
「今日は楽しかったよ、また近々会おうな」
「そうだな、またすぐ会えるさ」
ロボットが頃合いを見計らったかのように、コートを持ってきた。
「今日は見送ってくれないのか?」
男が友人に訪ねると、
「......まあな」
とだけ言う。その顔はどこか寂しそうだった。完全な安全を手に入れて、これ以上何が望みなのか、男には理解できなかった。
外に止めてあるタクシーに乗り込み、運転手に行き先を伝える。タクシーが動き出してもなお、しばらくその豪邸の塀は続いていた。
男はそれを見ながら、友人との楽しいひと時を思い出していた。
学者である彼にとっては、ポーズをするだけで起爆する爆弾も気になったが、少したりとも動こうとしなかった友人を思い出し、呟く。
「今回は、少し気分がよかった」
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