第七話 ユメリアの宝玉
「ダン! どうした。敵か?」
「可愛い子が、いるじゃないか。お前、目がにやけてるぞ。ほれたのか」
「あ、レイにライか。ん、まぁな。そんなとこだ。そこの剣かまえている人がおかしなこというんだよ」
どうやら、現われた二人は、少年の仲間のようだった。同じカッコをしていた。
一人は体格がいい、短髪の筋肉質の男だった。もう一人は長身で金色の長い髪をしていた。
ダンの目利きからすると、長身の美形の少年がどうやらレイで、体格のいい男がライのようだ。
「あ、いけない、ユメリアの宝玉が」
驚いたのか、手がふるえ、夏菜はユメリアの宝玉をコロッと地面に落とした。
その光る宝玉を見て、レイだけが、口を開け、驚きの色を隠せなかった。
「その魔法のローブとそのティアラの紋章はユメリア一族のもの。それにその宝玉、まさか、あなたはユメリアの姫さまなのですか」
レイの口調が変わった。
ダンがバカバカしいといった面持ちで、手のひらを返すジェスチャーをした。
「レイ、お前もまたそんなこといってる。まぐれだよ。きっと、まぐれまぐれ」
「バカ、頭を下げろ。ライも、ほら」
「いてて、いたいってばレイ」
レイは、ダンを捕まえ、無理やり、頭を手でさげさせようとした。ライも仕方なく頭をさげた。
力が入ったのか、ダンの顔がひきつっていた。
夏菜はあははと困った表情だった。アエリアの顔つきが優しくなった。
「よくきけ、ライ、ダン、ユメリアの宝玉は言い伝えでは、魔法で箱の中に封印されていたという。それを解除し、持って彼女の意志で光っているということは、正真正銘、ユメリア王家の血族だ」
「その通りだ。私が異世界から転生魔法でつれてきたのだ」
アエリアが淡々と説明していく。夏菜はアエリアの腰に手を当てて隠れたままだった。
レイが再び口を開き、アエリアに対して探るようにいった。
「転生魔法? そういう、剣を持ったあなたは誰ですか?」
「天使アエリアだ。夏菜姫を魔法王へ導くものだ」
「天使? ほう、こりゃまた律儀なこった」
ライが、重い口を開いた。野太い声をしている。
「どうやら、王はユメリアの末裔を転生魔法で異世界に飛ばしていたというわけだな。異世界なら敵の手に落ちることもないからか」
レイの考察は適確だった。頭がよく、回転力があるようだ。ダンたちの兄貴分というところか。
ダンは唖然となり、黙ったまま、話をじっくり聞いていた。
「飲みこみが早いですね。だが、何年も前に魔王バヌーラにユメリアの王、ラクイン様が転生魔法で夏菜
(かな)様を異世界に飛ばすのに成功したものの、最近、それにきづかれ、バヌーラが異世界に渡り、私は急
いで夏菜様の世界に魔法で飛んで追いかけたわけです」
「ねぇ、アエリア、まさか、ラクイン王ってあたしのお父さん?」
「えぇ、そうですよ。あなたはそのとき、赤子だったので覚えていないでしょうが、あなたのお父さまですよ」
「そのね、お父さんはどうしたの、生きてるの?」
「いえ、バヌーラの手に落ち……」
アエリアがふがいない顔をし、声のトーンが落ちてうつむいた。
「そう。亡くなったんだ」
夏菜も悲しそうな顔をして、半分涙目だった。
本当のお父さんがいて、死んでいたのだから、それを急に知らされれば、優しいから、なおさら辛くなったのだろう。
レイがダンとライのほうを向いた。きびしい表情だった。
なぜか、帯剣していた、細身の剣を引き抜き、ダンの喉首に向けたではないか。
「ダン、ライ、お前たち、無礼なことをしたら、俺が許さないぞ。我ら、ホーリーアークはユメリア王家、夏菜姫さまに仕える身なのだ」
レイの言葉に、二人はうなずいた。
ダンが敬礼をし、すまなさそうな顔で夏菜に語りかけた。
「夏菜姫さま、すまない。無礼を許してくれ。精一杯、貴方を守り抜きます」
「俺も、すまなかった。わからないもので、言葉が立ってしまった」
ライもいけないと思ったのか、続けて言葉をつむいだ。
「ううん、いいよ、みんな、そんなひざまずかなくてもいいから、面をあげて」
夏菜が笑顔で切りかえした。
ダンはその笑顔を見て、かわいく思えたのか、赤面になった。
「あれ、なにか落ちたよ」
「それは、ベタリアの金貨ですよ、夏菜さま」
アエリアがいった。
「ようするに、ここのお金ってことね。たくさん大袋でみんな持っているのね。どろぼうしたの? はい、これ」
「ど、どろぼう? 違う、俺たちは悪いことをしたんじゃない」
ダンが違うんだと、腕を横にふりながらいった。
ライもどろぼうというところだけは、訂正したいのか、重い口をあけた。
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おはようございます。
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ありがとうございます。
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またお会いしましょう。