第二話 ドナルドパンダ動物病院
真希と別れてから、数分いっしょけんめい夏菜は子猫を抱きかかえて、近所の動物病院ドナルドパンダに向かって走っていた。
もう、視界に動物病院は映っていた。目と鼻の先だ。
「はぁ、はぁ、着いた。せんせー、いますかぁー?」
夏菜は勢いよくドアを開けて、大きな声で呼びかけた。
すると、奥のほうからアフロヘアで三角のサングラスをかけ、白衣ではなく、派手な服を着た男性が出てきた。どうやら、この病院の医院長みたいだ。
「あらまぁ、いらっしゃ~い。誰かと思えば夏菜ちゃんじゃな~い。どうしたのかしら」
「ドナルドパンダ医院長、話しはいいですので、この子、助けてください。お願いします。道に倒れてたんです」
そういい、大事そうに抱えていた子猫を前に突き出して、先生にみせた。
先生はサングラスを指で上にあげて、興味深く子猫をのぞきこんだ。
子猫は、かなり衰弱していた。さっきより、体力が落ちているようだった。
「まぁ、血だらけじゃない。まかせときなさ~い。あたくしにかかれば、どんな病気でも治せるかしらね」
医療品をおいてある棚から白衣を取りだして着ると、腕を自信ありげに大きくふった。
今にも泣きそうな顔で夏菜はネコを心配そうな顔でみつめていた。
「ネコちゃん、だいじょうぶかな」
「(に、逃げるんだ)」
「だ、だれ? 誰もいない? だけど、今、誰かの声が聞こえた?」
謎の声が、夏菜の脳裏には聞こえていた。いったい、だれの声だろう。逃げろとは?
「なにかしら? あたくしの声かしら。あたくし今、話さなかったけど」
「はは、空耳かな。そうですよね、はは」
夏菜は、苦笑いをした。たしかに、夏菜と先生以外には誰もいなかったからだ。
しかし、空耳のようで、たしかに夏菜には聞こえていたのだ。
おかしく思い、夏菜は首をかしげていた。
そして、医院長はネコを診察室につれて行き、カーテンを引き、応急処置をはじめた。
処置がすむまで、しばらく時間がかかった。
夏菜はずっと診察室の外にあるベンチに腰かけて待っていた。
その間も頭の中に聞こえた声を不思議に思っていた。
二十分くらい経ったとき、診察室のカーテンがガラリとあいた。
「はぁ~い、子猫ちゃんよ。応急処置はしたから、命にまでは別状はないわ。後は、安静にしていればだいじょうぶよ」
医院長のウィンクが夏菜にとんだ。夏菜は苦笑いをした。
そして、医院長は子猫をゲージに入れて夏菜にわたした。
「ほ、ほんとですか。よかった。あ、そういえば、お金ないや、どうしよう」
「いいのよ、いいのよ。夏菜ちゃんとは長い縁だから、困ったときはおたがい様よ。お金はいらないわ」
「あ、ありがとうございます。ドナルドパンダ医院長! アフロ決まってますね」
「ベリーナイスよ! 走ってきたみたいね。汗がひくようにジュースつけちゃうわよ」
軽く医院長のウィンクが飛び、グッドラックのポーズをとった。
近くにあった業務用冷蔵庫からオリナミンDという炭酸飲料を一本とり、手わたした。
「え、いいんですか、助けてもらった上に、こんなものまでいただいて」
夏菜は嬉しそうだった。表情がとてもなごやかだった。
子猫も助かったからだろう。心配がはれたのだ。
「うふふ、いいのよ、機嫌がいいから。エクセレントよ。助かるわよ、ネコちゃん」
「はい、では、これで失礼します」
笑顔でぺこりと夏菜はお辞儀をして、ドアをあけて動物病院を出ていった。
でていくときも、医院長のウィンクはもちろん飛んでいた。
女性にはまったくの興味をしめさないアフロヘアのおねえ医院長だった。
「でも、さっきの声なんだったんだろう? ドナルドパンダ医院長の声でもなかったし」
スタスタと自宅のあるほうへ歩きながら、夏菜は子猫相手にのぞきこみながらいった。
不安はかくせなかったのだ。
「ねこちゃん、よかったね。助かるってさ」
でも、夏菜は気持ちをきりかえた。子猫が助かってほっとしたのだ。
嬉しそうな顔だった。
「とりあえず、治るまで安静にしないといけないから、あたしの家にいっしょにいきましょ」
だが、家に帰ると、動物が行くということは、ひとつの問題があるのだった。
飼うか、飼わないか、動物禁制の家ならなおさらのことだった。
夏菜もそれはわかっていた。
☆☆
やっと、少しだけですがファンタジーぽくなってきましたね。
時間があればまた更新します。
アフロヘアのこんな動物病院のせんせいたら面白いですよね。
個人的にはいいと思います。
またお会いしましょう。
こんなご時勢なのでおうちでのんびりポテチでも食べながらゲームでもいいと思います。
想像力の糧にはなります。
読者様も感染症お気を付け下さい。