1/36
1 彼は凡主(ボンシュ)(平凡な主人公の略)であった
俺の名前は真壁庄太郎。
奉日町という海岸沿いの小さな町に住む、一七歳の高校二年生。
親にとやかく言われない程度に勉強をこなし、クラスの連中に馬鹿にされない程度に運動もできる。
ルックスは、決して女子にモテモテというほどでもないけど、かと言って問答無用でクラスの女子達にさげすまれるほどブサイクでもない。
多分・・・・・・。
まあとにかく俺は、『ホメラレモセズ、苦ニモサレズ』という、誰かの詩の一節にあるような生き方を地でやっている、
極々(ごくごく)平凡で普通の男子高校生なのだ。
そんな俺だから、取り立ててこの場で話せるような不思議体験や大冒険を経験した事はほとんどない。
こんな俺じゃあ熱血少年漫画のヒーローにはなれないだろうし、大冒険小説の主人公もとても務まらないだろう。
しかし、そんな俺だけど、今まで生きて来た中で一度だけ、不思議と言えば不思議な体験をした事はある。
しかもあの出来事が現実だったのか、それとも夢だったのか、正直俺はハッキリ分からない。
ただ、どちらにしてもあの出来事が、ハッキリと俺の心と記憶の中に刻まれている事だけは確かなのだ。