第一章 半妖の少年 新しい依頼
8.新しい依頼
「雅には都に行ってもらおうと思うの」
大蜘蛛騒動からしばらくたった後、朝の集会の最後に紅様から宮に声がかけられた。どうやら都にて何か問題が生じたらしい。基本政治関連は姉の紅様が取り仕切っており、戦闘特化のミヤはあまり都についていくことはなかった。つまり妖に関した話なのであろう。
「いいけどユキも連れて行くね」
話の詳細も聞かずに了承していいのだろうか、しかも自然と僕も巻き込まれることが確定してるし。まあ僕の役目は姫様であるミヤを守ることであるため、この依頼がきた時点で僕はどのみち都に行くことになっただろう。
「それは大丈夫だけど今回は二人だけという訳にはいかないわ、それ相応の護衛はつけてもらうからね」
「えぇ〜」
わざとらしく頬を膨らませるミヤだったが、その表情は嬉しそうだった。久しぶりに都に行くのが楽しみなんだろう。僕もミヤも都は詳しくないため、今回護衛がついてくれるのは道案内やお偉いさんたちに挨拶する役目もある。面倒ごとを引き受けてくれるため、僕にとっても有り難かった。
「それで依頼の詳細を話すわね。都にある謎の疫病が広まり始めたのがことの発端よ」
それから紅様は都に起きている問題について語った。その疫病は原因不明で、医者も治療法がわからなかったらしい、そこまでならよくある話である。しかしその症状というのが瘴気に纏われ、高熱を出し倒れてしまうというものである。瘴気を纏うというのがポイントだ。もちろん普通の病で瘴気など出る訳もなく、妖が施したの呪術が原因ではないかと推測された。それに合わせ都の中で複数の妖気を観測したという報告もあり、妖の呪術による疫病であるとわかったのはいいが、肝心の妖を見つけられないでいるらしい。妖気を辿ろうにも大きな反応があってもすぐに気が霧散してしまいたどり着くことができない。そこで不知火家に相談があり、その中でも妖気に人一倍敏感なミヤに依頼が来たという訳だ。
「今日の午後出発してもらうから準備をお願いね。通常のお仕事は他の人に頼むから心配しないでいいわよ」
「わかったよ姉様。それならユキ行きましょ」
ミヤはスタスタと部屋を出て行くが僕はきちんと一礼して部屋を出た。それにしても都か..面倒なことにならなければいいけど。妖もだが一番面倒なのは人である。権力闘争に巻き込まれることもあるし、他の三名家の者たちとも遭遇する可能性だってある。基本的にミヤはあの自由な性格もありトラブルメーカーなのだ。特に位の高い方にも全く媚びるようなことはない。尻拭いをするのはいつも一緒にいる僕だった。毎回ギリギリの綱渡りで問題をどうにか収めてきたが、ミヤはそんなことは気にせず我が道を行く。それが僕には羨ましくも思えた。そんな僕の気も知らず前に歩いていたミヤは振り返りいうのだった。
「都には最近美味しいものがたくさんあるらしいよ、さっさと妖退治してたくさん回ろうね。もちろん二人だけだよ」
心に中でため息を吐きつつ、表面上わかりましたと言わんばかりに肯く。やはり今回の依頼も一筋縄ではいかないようだ..。
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