第一章 半妖の少年 刀鍛冶
5.刀鍛冶
「どうした遅かったじゃないかユキト?」
「いや紅様とちょっと話し込んでて」
紅様との話が終わると屋敷から少し離れたところにある鍛冶屋の里に向かい、目当ての人物でもある神楽 御鷹に会いに行った。彼女は僕と同じ16歳ながら不知火家に一人前と認められた異例の刀鍛冶である。僕が気さくに話しかけることのできる数少ない人物だった。
「紅姉は説教し始めると長いからね。それじゃあいつも通り刀を見せてもらえるかい」
御鷹と紅様はとても仲が良く、まるで姉妹の様であった。彼女は僕の刀『白錆丸』を打ってくれた人でもある。白錆丸は特殊な刀であるが故にこうして戦闘後にはメンテナンスのために彼女の元へ行くのが日課となっていた。
「今日は刃こぼれせずに戦うことができたから、大丈夫だと思うけど..」
上手く妖力を刀に伝えることができなければ、白錆丸はただのボロボロの刀である。刀を貰った最初の頃は鍛錬だけでも刃こぼれを起こし、良くこの工房に通っていた。最近は妖力の調整も上手く行く様になり、自然と工房に行く回数も減っていた。
「とても繊細な刀だからね、見かけは大丈夫に見えても中が痛んでいるのさ。その証拠に今日何も考えず力を注いだだろ?これは少し調整が必要だね」
そういえば今日の大蜘蛛退治の時にそんなこともあった。刀を視るだけでわかるなんて流石は天才鍛冶屋だ。
「それに最近誰かさんが会いに来てくれないからね、刀をあげて「はい、終わり」じゃ寂しいじゃないか」
「ごめん、御鷹。今度からちゃんと通う様にするよ」
刃こぼれしなくなったとはいえ、まだ僕には白錆丸を十分に扱えているわけではない。それに御鷹も基本的に鍛冶屋の里にいるため、同年代と話す機会も少なく僕との会話を楽しんでくれている様だった。今度から戦いが終わった後はちゃんと工房によることにしよう
「それがいいさ、じゃないとその刀を君にあげた意味がないからね。まさしく君のため、いや私のための刀だ」
「?ありがとう、御鷹」
後半の意味はわからなかったが半妖の僕の鍛錬のために打ってくれたという意味だろう。調整のために刀を預け、僕は工房を後にした。
御鷹はユキトが出て行ったのを確認し呟いた。
「白錆丸の使用難易度を上げとかないと、じゃないとユキトが私の元に来てくれなくなるだろうからね」
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