第一章 半妖の少年 幕間 ミヤビ2
12.5 ミヤビ2
旧鼠が悪足掻きで分身体を結界の外に逃した、私は結界の中にいるため追うことができない。ユキがこちらにまかせろと言って来るが不安だ。ちゃんと捕まえてくれるかではもちろんない。少しでも目を離すことが不安なのだ。ユキは私を守っているつもりだろうがそうではない、私がユキを守っているのだ。妖だけではなく人からもである。ユキは強いがずば抜けてというわけではない、それこそ私とは比較にならないだろう。しかし物語はユキを中心に回っているかのように問題があればその渦中にはいつもユキがいる。それに女の影も..ユキは端的にいうとモテるのだ。口では一緒にいると言うが少し隙を見せるとふらっといなくなり気づけば人助けをしている。そして女の匂いを付けて帰って来るのだ。もちろん私の元に帰ってきてくれるのは嬉しいが同時にはらわたが煮えくり返るような激情に飲まれそうになる。そういう時は決まってユキにイジワルすることで溜飲を下げていた。私だけを見て欲しい。胸にある気持ちはそれだけだった。だから私は守らなければならないのだ私だけを見てくれるユキを。
ユキを追っている途中、爆発的な妖気を感じ取った。直感でしかないがそこにユキがいるのだろう。私が着いた時にはすでにユキが倒れ眠っていた。幸い、命に別状はなさそうだ。起こそうとしても深い昏睡に入っているのか全く目を覚さない。それでもユキが生きてる証として心臓の音を確かめるために抱きしめる。するとまた普段のユキとは違う香りがした。ユキが無事で嬉しいはずなのに心の中に暗く黒いものが溜まっていくのがわかる。しかしユキは安静にしなければならないため、この気持ちをぶつける場所がない。とりあえず、護衛の者に後始末を任せ館へ帰った。そこから丸一日は眠ったままだったが、私はそばでユキの顔を見続けた。ユキが起きた時に一番に見るのが私であって欲しいから。
ユキが起きた。しかし何があったか聞くと誤魔化されてしまった。ずっと一緒にいるのだ、追求されたくない時の仕草など全てわかる。ユキの意図を汲んでこれ以上聞くのをやめた。それでも他の女の匂いを付けたままなんて許せない、それに秘密ごともするなんて..私はこれまで溜まったものを吐き出すようにユキへ飛び込んだ。いつも通りユキは受け止めてくれる。その優しさ暖かさを一度感じてしまうと離れることはできなかった。気を抜いた瞬間、ユキの腕が背中に周り抱きしめられた。油断していた私はビクッと反射的に反応してしまった。こんな幸せいいのだろうか。私もマーキングする様に強く抱きしめた。ユキが私のものであるようにきっと私もユキのものなんだろう。だから誰にも取られたくないその思いは増すばかりだ。でも今だけは純粋に幸せを感じていたかった。
この後姉様にこってり絞られたが、その間も私は満たされていた。だってユキさえいれば他に何もいらないから。
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