第一章 半妖の少年 都上
9.都上
午後になり準備が出来たので護衛を数名連れて案内役の指示に従い都へ向かった。外部からの脅威から守るために妖退治の御三家は都を囲む形に位置しており、結界術などを得意とする綾桐家を主導に広範囲に妖を感知する結界を張っている。その結界から内側に進めば自然と都に辿り着くが、着いてからが大変なのである。まず単純に人が多い、人より妖と会う数の方が多い僕たちには考えれないような数であり、毎回人酔いしそうになる。建物も迷路のように並んでおり、迷子になりそうなくらい複雑だ。案内役がいなければ目的の場所にさえ行くことができないだろう。そのため案内役の存在は必須なのである。そしてしばらく案内役について行くと今回寝泊まりする宿に着いた。
「ここが今回泊まることになる宿となります。この後領主様や貴族様への挨拶に向かいますので荷物を下ろしましたらお集まりください」
「えぇ〜面倒だよ。私は早速調査に行きましたってことにしといて。あっ!もちろんユキもね、私の護衛はユキに頼むから問題ないよ」
誰もミヤに護衛が必要なんて思ってないだろう。問題なのはお偉いさん方にする言い訳の方である。それがわかっているのか案内役の顔が苦いものとなる、しかし今回は疫病の件が最重要項目なので、疫病がさらに広まる前に依頼を優先したと言っておけば大丈夫だろう。
「部屋にも護衛が必要かな?私はユキと同じ部屋だからそれで大丈夫だね。二人だけでいいから広い部屋はみんなで使っていいよ」
みんあ嫉妬どころか僕に哀れみを感じさせる目で僕のことを見ていた。ため息を吐きたくなるが何年も一緒にいるのだ、ミヤが自由人なのはわかっている。これくらいじゃもう狼狽ない。結局ミヤと僕が調査に行くことになり、案内役と護衛たちは挨拶を済ますため御所へ向かった。
「さっきも思ったけど以前より人が少ないような、それにどことなく雰囲気が暗い..」
「きっと病気のせいだね。でもユキ安心してこの病気は人に移るようなものじゃないから」
やはり病気のせいだろうか街には以前のような活気はなかった。
「ミヤはこの病気の正体がわかってるの?一応呪いの一種ということは知ってるけど」
「それであってるよ。呪いには呪われる条件があって、それを満たさないと基本的には呪われることはない。都には小さな妖気があちらこちらにいるし、それが関係してるんじゃないかな」
都に入っただけでそこまで分かるなんて流石だ。呪いと小さな妖気、その関連性をこれから探さなければならない。ミヤの情報から足を運ぶのは僕の役目だった。
「とりあえずお菓子食べに行こうよ。ゆっくり座って食べながら考えればいいじゃん」
口ではこう言ってるが今日はこれ以上調査する気はないらしい。既にお菓子のことで頭の中はいっぱいだろう。ミヤの出したヒントを答えにするために僕は一人でも調査を続けることにした。
「僕は少し調べてくるから後で行くよ」
その瞬間、笑顔だった顔が無へと変わる。
「それじゃ意味ないじゃん。私を一人にするの?」
あの眼だ。あの眼で見つめられると体が固まってしまう。思考はミヤと一緒にいるという選択肢を選べと叫んでいた。
「一人にする訳ないよ、一緒にお菓子食べに行こう」
気づけばそんな言葉を発していた。僕もミヤと一緒にいることはとても嬉しい。しかしあの名前で読んだ夜から少しミヤの様子がおかしくなることが増えてきた気がする。ミヤの機嫌を損ねないようにしようと心の中で思うのだった。
「やっぱユキは優しいね。大好きだよ」
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