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平行世界の、君と僕  作者: 蟻足びび
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第十五話

「和、まさかお前も、知ってるのか」

「生憎な。僕だって伊達に舞衣と付き合ってきていない」

「あぁ?舞衣と付き合ってただと!?」

「意味がちげーよ!てゆーかお前が早くコクれよ!この、小心者!ほれ、それとも僕が今舞衣に告白するところを目の前で見せちゃいましょうかー!?舞衣ちゃん、どんなお顔を見せてくれるやら。勢いに負ける子だからもしかしたら口説けちゃうかもねー!!」

「や、やめろ!お願いだ頼む......!」


ちっちゃくなって、土下座までしそうになってしまった小心者の瑛太に、ふふーんと勝利を気取ってしまった僕だが、これはいけないと気を取り直す。

今、舞衣が起きているこの今という時間が、なんと()()()()()()()()()()のだ。何がやばいのかって?それはもう、見てみればわかる。


十時。多くの人が就寝を迎えるこの時間___

に。

たった一人の本能が、解放される。


「っっくふふふふ......!!おいおまえら!わたしは貧乏になるのは嫌よ。盛っ大に負けてやるとするわ!」


こんな台詞を形作っている声音が、いつもの舞衣の幼らしい、弱々しいものであるから、趣があってまた絶妙に良いキャラなのだけれど......

これほどめんどくさいキャラもまた、存在しない。


「んん地味に舞衣が残ってるんだよな、一人称とか」

「和ぅぅ!現実から逃げようとするな!『逃げるは恥だし腹が立つ』っていう言葉を聞いたことはないのかぁ!」

「どこかで聞いたことあるわね」

「鈴ちゃん、なんか色々違うよ!」


舞衣の変貌により、佐々木家リビングは再び騒然となった。

どうやら、皆がこの状況を理解できたようだ。

新崎舞衣は、夜十時を回ると、()()()()。別に『ウォーキング・デッド』のような(ゾンビ)化でこそないけれど、性格が、ガラリと変わってしまう。

否。性格がぽろりと出てしまう。もともと持ってた性格を、今ではある程度コントロール出来るようになって、常時抑え込んでいる、というのが正しいのだろう。


「ふふふ、なるほど!あれこそが、舞衣ちゃんのスキル、お嬢の覚醒(プレッピーアウェイク)ってことなのか!始めて見た!」

「んだよそのネーミング!中二病かっ!」

「わたし、中二だよ、おにーちゃん♡」


うわっ!ウインクをして舌を出したりするな!別にキュンとしたりはしてないがな!


「何をしているの、さっさと始めなさいよ!はっはーん、さてはわたしに多くの富を築かれるのが怖いのね!まったく、かわいそうな愚民だわ」


いちいちついてくる身振り手振りがうざったい。

てゆーか、そうゆうゲームじゃないし。むしろ逆だし。

まあ、舞衣は、そもそも勝つことなんてできないんだよな。残念だが、このゲームが始まった時点で、()()()()()()()

もちろん、運次第では勝たざるを負えない場合もあるけれど、意識的な所では、舞衣は負けてる。

彼女にとってこんなにも皮肉なゲームを用意するということは、母さん含め、菜々も野乃も、舞衣の境遇を知らないんだろう。

おそらく、他のメンバーも知らない。

が。今は舞衣に同情することよりも、鈴に勝利するというのが、必須要件なのである。


「じゃあ、僕の番だな」


意を決し、僕はルーレットに手をかける。






一時間後、時計の長針は十一時を指している。

僕は、というと......


「よっしゃあぁ〜〜〜〜!!」


佐々木家のリビングで、雄叫びをあげていた。


「やった、やった勝ったぞ!僕の優勝だ!一万点もの差をつけて、一位を掴み取ったのはこの僕だ!」

「ちきしょー、悔しいっ!やるなあ、和!見直したぜ」

「どこをだよ!どんな恨みがあったんだよ!このゲームの結果で解決するくらいしょぼい問題点なんて僕にあったのか!?」

「和すごいよ!おめでとう!」

「あ、あらそう?うふふ」

「おにーちゃん、気持ち悪い」


とにかく、僕は勝ったのだ。優勝したんだ!

なんて僕の心の安泰はつかの間、


「おめでたいものよ!ふふ、敗者のわたしを()()といいわ♡」

「や、やめろ!」


僕の胸元は両手を添えられ。頬を高揚させ、息遣いまで感じることの出来る距離に舞衣の顔があった。

破廉恥な台詞がセットじゃなければ、ドキッとしてたかもしれないのに......

どうやら冗談じゃなかったらしく、払いのけられると、「ぷぅ」と唇を尖らせ明らかに不機嫌そうになった。

お、恐るべし......早く寝てくんないかな......

と、おもむろに、


「今日のゆーしょおはぁ......ひっく。かじゅ選手でしたー!」


ゲーム中に一本飲みきった母さんは、どうやら泥酔状態でそういった。弱すぎでしょ。

一瞬その場がしらけたあと......


「「和、おめでとう!」」


みんなの声が揃った。

へへ、と嬉しそうに頭をかいていると、ふと、不思議な光景が目に写った。

そこでは鈴が、なぜか嬉しそうに頬を緩めていた。







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