田舎のおっさん勇者の保護者として魔王討伐!!・・・できるわけもなくドロップアウト、したいんだけどなぁ
きっと今目の前にいる人物、荘厳で、それでいて猛々しく強さと美しさを兼ね備えたまさしく聖剣といった風貌の片手剣をもった世間一般からは勇者と呼ばれているこの少女はこの決定が大層ご不満らしい。
「私は納得していませんがアインさんやランドベルトさんが言うようにアスマさんがここ最近きつそうなのも事実です。,,,,,,,なので、少しだけ、ほんの少しだけ、今回のクエスト一回だけ、数日の間アスマさんにはこの町でお留守番をお願いします」
とても不満そうに、納得しきれてない様をその18という年にしても幼さを残す顔にありありと写す彼女こそ、俺が所属しているいわゆる勇者パーティーのリーダー、【勇者】セラフィディーネ・ラ・ジャスマフ。最後の希望らしい。俺からしたら年の離れた妹って感じなんだが回りの目には凛々しい勇者様に写る不思議。
「そんな不服そうな顔すんなって、今回は【人食いバルベリサ】が相手って言うんだ俺じゃ役不足だよ。だって俺、戦闘嫌いだもんよ。」
「それはわかってるけどぉぉぉぉ」
「わかったわかった帰ってきたらセラの好物のハンバーグカレー作ってやるから機嫌直せってな」
「約束だからね絶対だよ」
「俺がお前との約束破ったことあったっけか」
そんな会話をしていると、
「ディーネ」
「っアインさん!!」
爽やかイケメン君の【賢者】アインス・ベル・テルメリア。大陸一の大国テルメリア王国の第一王子。複雑な事情から王太子には成れなかったが、本来なら大陸すら制圧できるほどの才能を持っている。が、肝心のあるものが彼にはなかった。そのあるものとは・・・・
「ねぇディーネ、いつまでその無能な荷物持ちとしゃべっているんだい?君は僕と同じように神に選ばれた貴い存在なんだよ?そんな君は同じ貴い僕と話すべきだと思うんだ。そうじゃないかい?荷物持ち君?」
言葉には悪意しかないが本人に悪気は全くない。それどころかこれで怒ると心底不思議な顔をする。そう、彼に足りないのは思いやり。つまるところ〈人を気遣う心〉が彼には最小限すら存在しなかった。まぁ、かといって相手を認めていなわけではないのが憎めないとこなんだがな。
「それを俺に聞かれてもだな~答えずら過ぎるだろ」
「ふむ、そんなものか、まぁいいところで荷物持ち、今日の夕食はなんの予定だ?」
ホントに言葉に思いやりないだけで基本いい奴なんだがな~。
「アインさん!いくらアインさんでもアスマさんをバカにするのは我慢できません!」
このやり取りも何度見たことか
「ふむ、なにか不味かったのか?」
「だから、」
「どこに行かれるので」
「!っなんだ、ランドベルトか。ちょっと食材を買いに行こうと思ってな」
「・・・・そんな、大荷物で、ですか?」
今の俺の格好はいつもの私服上下に調理道具などをいれたバックパックをもったどう言い訳しても少し買い物にいく程度の装備ではかった。
「・・・・もう、一緒には旅、できませんか」
「そろそろきつくなってきてな。まだセラの事を近くで見守っていたいんだがな」
「じゃぁ・・・・・」
「あいつも保護者がいる年齢じゃもうないしな」
そもそもただの料理人で特徴と言えば時間を無視して保存できる食料庫のスキルを持っていることだけ。容量は無制限だが入れれるものは食料か俺が料理に必要と認識したものだけ。剣はもちろん防具なんって入らない。だから故郷の村から近い都市で食堂をやってたんだがなぁ。
いま俺がここにいるのはただ勇者、セラが心配なだけだ。彼女は12年前俺がまだまだギリギリ10代の時に拾った戦争孤児だった。だからあいつは俺の娘でもあり年の離れた妹みたいな奴なんだ。他の奴らも7年前セラが勇者って神託が降りて王宮に連れていかれたときから面倒見てる甥っ子みたいな存在。離れるのは心苦しいがこれ以上俺がいても本当にお荷物になっちまう。
「まぁ俺は王都に貰った土地で定食屋でもやってるからよ、終わったらいつでも食いに来い、それにセラ以外はそのつもりだろ?」
俺が苦笑ぎみにそう問うと彼、ランドベルは諦めたように
「えぇアインはもちろんレイもディルも王都にいる方々は首を長くして待ってますよ」
「ははははは、やっぱりかよ帰るのが怖いな」
7年間王宮で生活していた俺は何故か使用人の子どもから貴族の子どもまでセラぐらいの子どもにすごくなつかれた。まだ結婚もしてないのに子持ちになった気分だったよ。おかげで影でロリコンなんて言われていたしな。
まぁそんなこんなでどうも王都には俺を待ってるやつらが多いらしい。
「セラへの説明はお前らに任せた!さらば」
「え、ちょっとアスマさん!・・・・もう仕方がないですね、また会いましょう叔父さん」
「おいアスマ聞いたか?」
「いつも言ってるがよランド、いくら昔馴染みとはいえ店の中ぐらい店主かマスターってよでくんねぇか?」
「俺が?お前を?マスター?もしくは店主ぅ?冗談はよせよ、」
「ったく、で何を聞いたって」
「そうだよ!あのセラの嬢ちゃんがこの町に来るってよ」
「ブゥゥゥ!!!!」
「きったねぇな!何しやがる!」
「セラがここへ?」
セラと別れ俺は王都に戻らず自分の店がある都市に戻ってきて4年がたった。国王とは月に何回か手紙のやり取りをしているためある程度情報はあったが・・・まさか魔王を手なずけ配下にしてわずか1週間でこっちに来るとは予想がつかなかったな。とにかく
「俺は王都に行く」
「また突然だな」
「今セラと会うのはまずい!」
「まぁ・・・あんだけ異性としてお前の事見てた嬢ちゃんに結婚しましたって言いづらいのは分かるが、なぁ」
「それより、もう子どもまで出来てるってのが言いたくねぇんだよ!」
「まぁなぁ~でもどうするよ、身重なベラを王都に連れていくのか?そこだよなぁ~」
熱中してたせいだろう。いつもなら気づくあいつの気配に全く気付けなかったのは。
「ふ~ん~私を置いてった上にもう結婚までしてるんだぁへ~~~」
「・・・・・よし王都に行ってくる」
ガシッ
「はなせランド!俺はまだ死にたくねぇ!」
「まぁ身から出たら錆だ、往生しろ」
「イヤだぁ~~」
「酷くないですか!?さすがに殺したりしませんよ!?」
「いや分かっててもいいたくなるだろ?」
「なりませんよ!もう、とにかくまずは、戻りましたアスマさん」
花がほころぶように20を越え十分大人になったセラのその笑顔はとても美しく彼女を勇者だと思うものはいないのではないまと思うほどに可憐だった。
「あぁお帰りセラ」