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ダンジョン、憤怒




 あれから、コボルは少女を無事、保護してきた。



「主、連れてきたぞ」


「ありがとう、コボル。俺の我侭(わがまま)でごめん」

「私からも、ありがとね」


「構わない。それよりこの少女は明らかに衰弱している。とりあえず何かを食べさせたほうが良いだろう」

 そういって背中に背負っていた少女を床に降ろす。

 

 モニター越しでは分からなかった事だが、その黒髪の少女はとても痩せていた。

 盗賊に連れられていたんだ、良い待遇では無いだろうとは思っていたが……

 少女は明らかに栄養失調と思われるその貧相な身体にボロボロの布切れを身に纏っている。

 見た目は8歳くらいだろうか。 所々に痣が有り、とても汚れている。

 その瞳は色を失ったように虚空を見つめていて、一言も言葉を発しない。


 明らかに尋常ではない、筆舌に尽くしがたい行為、待遇が成されていただろうと容易に想像できるその姿を見て俺は憤りを覚える。

 俺はダンジョンコアになってから俺はその場の感情に飲まれやすくなっている気がする。


 しかし……こんなことがあっていいのか? 死ぬ寸前じゃないのか? 大丈夫なのか?

 あの盗賊たちがやったのか?

 そんなことを考える。


「……あぁ、とりあえず何か出そう」


 そう言ってリストを出すとルナにご飯を出してもらう。

 ご飯を満足食べられない状況であったことは用意に想像できるので、身体に優しく消化に良いものをチョイスしてもらう。


「とりあえず、卵粥と水、柔らかく煮込まれた野菜スープと摩り下ろしリンゴでいいかな?」

 このダンジョンコアで作れるもののレパートリーの多さには驚かされる。

 それにルナはこういったことに手慣れているかのように食事を選んでいく。


「充分だと思う、医者じゃないから分からないけど」


「じゃあはい! これ、食べて!」

 そう返すとルナは手早く30DPほど使ってだしたそれらの食事を全てを少女の前に並べる。




「…………。」


 少女は自分の前に出された食事を見ても食べようとしない。

 明らかに満足に食事ができていない状態であることは分かるのに食べ物を前にしても見つめるだけなのだ。


「食べないのか……?」

 そう問いかけるとこちらを一瞥した後、食事に手を伸ばした。

 考えていることが全く読めない。




 こうして、1時間ほどかけて全てを食べ終えた少女に問いかける。

「君の名前は?」




「…………。ミラ」


「そうか、俺の名前はユーヤだ、こっちの赤いのがルナでこっちの犬がコボルだ」


「ちょっとユーヤ! 赤いのって何!?」

「誰が犬だ」


 すぐさま突っ込みが入る。

 だって、特徴をそのまま伝えるとそうなる。


「キュイ! キュキュ!!」


 なんだか、すごいアピールしている。


「あぁ、このスライムがエンジェル」


「キュ!」

 満足そうに少し飛び跳ねるエンジェル。

 

「で、ミラ。俺たちはミラに危害を加えない。できれば何があったか教えてほしいんだけど、嫌なら別に言わなくてもいい」

 

「…………。」


 ミラは少しこっちのほうを見つめると少し間を置いて話し始める。



 自分がダンジョンマスターだったこと、開放した途端に盗賊たちに攻め落とされたこと。

 奴隷にされたこと、酷い仕打ちを受けていた事。

 


 それを聞いていたルナは服を握りしめて苦い表情になっていた。



「……私は、負けたから」



 全てを諦めた表情はまるでこの世に絶望しているようだった。 

 いや、絶望しているのだろう。


「……なんでミラは、その歳でダンジョンマスターをやってたんだ」

 そもそもそれが問題だ。

 どうみてもまだ少女と呼ぶような年齢だ、ルナも16歳だと言っていたから見た目と年齢が比例しないということもないだろう。



「ユーヤ、魔族は魔力が少ない者からダンジョンを作って独り立ちしなくてはならないの。有望なものほど力を蓄えてからダンジョンを作れるの」

 ルナはそう、俺に告げる。これが、ルナの生きていた世界の常識。

 力無きものは死ねと言っているようなものだ。


「……私は魔族だけど、魔力が、ほとんど無いから。 魔法も、初級魔法しか使えない」


 思わずその言葉に絶句してしまう。なんなんだ、この世界は。

 死ぬさ、こんな少女が一人でダンジョンマスターだと? 異世界間戦争? そんなものが無くてもまともな世界には思えない。

 

 俺はほとんどこのダンジョンから出ていないがその片鱗はすでに感じている。 



「……それだと魔力の少ない魔族は」


 俺はそこまで口に出すと、言葉に詰まる。

 コボルはそこまで驚いていないのか無言を保っている。



 

 

「……ミラ、一緒にここで暮らしていくか?」

 おもわず口に出してしまう。


「……無理。私は、奴隷契約、されているから」


 奴隷、その制約を俺は何も知らない。

 気軽に言ってしまった言葉には後悔しかない。




「ルナ、奴隷ってのはどうなるんだ?」


「主人と主従を関係を取り付ける契約だよ、詳細は契約内容によるけど主人の不利益になるようなことは話すことは出来ないはず」


「そうか」


 詳細に関して口に出したくないのかルナははぐらかす。

 ……まぁ、大体わかった。

 こんな少女に、何をしていたのか、想像するだけで吐き気がする。





 あぁ、この感情は。



 胸糞悪い、胸糞悪い、胸糞悪い。

 




 このダンジョンが落とされたらルナもコボルも同じような目に合うのか?




 沸々と感情に呼応して魔力が溢れていく。

 顔が熱くなっていく、魔力が流れ出ていく。



「主、魔力を抑えろ」


「あぁ……」


 自然と滲みだしてしまう魔力。



 



 胸糞悪い、胸糞悪い、胸糞悪い、胸糞悪い

 胸糞悪い、胸糞悪い、胸糞悪い、胸糞悪い



 あの盗賊、ルナを奴隷にするとか言っていたなぁ。






 ふと、思う。


 







 ――――殺すか。










「……ルナ、主人を殺したらその契約は切れるのか?」 


 その言葉に全員がこちらを驚いたように見てくる。

 



「う、うん」 

 



「ミラ……お前の主人は盗賊か? それだけ答えられるか?」


 ミラから答えは返ってこない。

 




「……ルナ、コボル。予定を繰り上げよう」









「盗賊狩りだ」







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