ダンジョン、養殖される
盗賊を逃がしてから丸3日が経過した。
「あ、もう起きてたの? ユーヤ、コボル、おはよう!」
エンジェルを頭に乗せたルナが部屋から出てくる。
「キュイ!!」
コボルと俺は適当に挨拶を返すと再びダンジョン内を映し出すモニターを眺めている。
モニターに映し出されているのはダンジョン内、そう、ついにDPを得ることに成功した俺たちは"ダンジョンモニター"(500DP)を大広間に設置した。
めっちゃ魔王っぽい。安地からダンジョン内を眺める俺ら!魔王っぽい!
そして……早速きたか!
「ガァ……!」
ゴブリン3匹。
このダンジョンに迷い込んでくるモンスターは最初から満身創痍。
あの日以降、このダンジョンにはある異変が起きていた。
本来、このダンジョンがある森にはゴブリンが生息しない。
そう、俺の狙い通りダンジョンには毎日モンスターが届けられていた。
しかし……こんなわかりやすい養殖なんてあの盗賊は馬鹿なのか?
うーん、でもまぁ、それだけ侮ってるということかな。
そのモンスター達は敵が来たら迎え撃つよう指示してあるウルフとゴブリン達になすすべもなく倒されていく。
しかし、あいつら何もしてないのに結構強いな。
良くコボルが鍛えたりしていたが、その成果なのだろうか。
ゴブリダの死後、ゴブリン達はみな一様にやる気を見せていたので鍛えてあげるよう指示したのだが。
「私たちの狙い通りだね。この状態いつまで続くのかな?」
「まだしばらく続くと思う。低ランクのモンスターばかりだしね」
このダンジョンは早々にDPを使い切ったため、モンスターが非常に少ない。
その様子を調べていた盗賊はわざとダンジョン内でモンスターを倒させ、俺たちのレベルアップを図っているのだろう。
「キュイ! キュイ!」
しかし……このスライムも完全に馴染んでいるなぁ。
ルナの頭上に少し手を伸ばしてスライムを撫でてあげる。
うーん、ひんやりしてて気持ちいい
「キューン」
心なしか喜んでいるような気がする。
かわいいやつだ。
「…………。俺はこのダンジョンが馬鹿にされてるように感じて、ムカつくぜ」
コボルはそう言う。
こういったプライドのない行為はあんまり好きじゃないらしい、しかし実際このダンジョンはコボル頼りの節があるからな。
しばらくは我慢してもらうほかない。
しかし……
「コボル……言おう、言おう。と思ってたんだけどそのキャラなんなの?」
そう、このコボルのキャラ!
ずっとこれを言いたかった。
「……はッ? かかか変わってねえから! 何言ってんだお前!」
この狼狽えよう、面白いくらいにコボルの顔がどんどん赤くなっていく。
「へーそうなんだー」
冷やかしたように言うとコボルは平然を取り繕っている。
すっごい尻尾と耳が立ってるよ、コボル……。
「そ、そうだ! 元々こんな話し方だったぜ? 俺は!」
「そうかなー、俺にはなんだか進化してから口調が変わったように見えたけどナー」
「そそそそんなことねえし!」
そんなやり取りをしばらく続けているとルナも参加してくる。
「私も気になってた! コボルってなんかしゃべり方、前と変わったよね?」
「 」
コボルはとても恥ずかしそうにしている。
ルナはいたずらっぽく笑っていて楽しそうだ。
しかし、コボルが涙目になって黙ってしまった。
うつむいて恥ずかしそうにしている、このくらいにしといてやるか。
「まぁ、この養殖は俺たちの戦力アップに繋がるんだ。利用させてもらおうじゃないか」
そういって話を戻すが、コボルはこっちを睨んでいる。
「クッ……おぼえてろよ……」
ふっ、まだ反撃の意思があるとは。またこのネタでいじってやるよ!
「このダンジョンももうすぐレベル10になるもんね!」
3日間、定期的にモンスターを補充されているこのダンジョンは"成長"の効果もあってかかなり上がっている。
ダンジョンレベルはダンジョン内の危険度を総合的に総合的に判断して上昇しているようだ。
「Lv10になったらダンジョンの機能が本格的に開放されるからそれまでDPは節約しよう」
開放されるダンジョンの機能は俺もまだ詳しくはわからない。
しかし、その情報だけは頭の中に入っている。
◇
しばらくコボルとルナと談笑しているとまたモニターに変化があった。
いつも通りダンジョンの中に何かが進入してくる。
そう思ってモニターを見ると、そこに映っていたのは ――――ボロボロの少女だった。
……は?
「人間?」
「……あの娘……魔族」




