俺、異世界へ
俺、白凪裕也は退屈していた。
それは俺が中二病だからそんなことを考えている、とかそういうわけではなくちゃんとした理由もある。
人間には本来、危機や脅威を察知する能力が備わっている。
進化の過程でほとんど失われていったようだが、今でも予知夢だとか虫の知らせだとかそういうので感じ取れる人も少数いるんだそうだ。
そう、俺はその危機察知能力というのが格段に優れている。
夢を見なきゃいけないとか、胸騒ぎがするとかそんなレベルではなく明確に分かる。
ここにいたら危険、こっちの道に進むと危険。
安全な場所、安全な選択ができるのだ。
だからこそ今、初めての経験に動けずにいる。
俺は、危険な場所に行くことはできない。
高すぎる危機察知能力によって安全ではないところに歩みを進めることはできないのだ。
しかし今、この場にいてはいけない。と全身が警報鳴らしている。
それも突然だ。
こんなことは今までありえなかったことで、ありえない出来事だった。
自身に起こりうる危機を把握するしかない。
辺りを見回すが人の気配や、車の気配は無い。
だとすると地震や雷などの天災が考えられるがそんな程度のものなら今までだって避けてきたし、事前に分かる。
これはまるでとって生まれたような脅威、極めて異質だ。
警戒しながらも考えを巡らせているその刹那、自分の目では認識できていない脅威を身体が反応し避ける。
寒気がする。
身の毛がよだつほどの強烈な死の予感。
いや、死のそのものが通りすぎるような感覚。
周辺で何かが起こった気配はない。
ただ、確実に俺は死にかけた。
何が起こったか全く理解できない。
「へー、今のを避けれるんだ、人間に躱せるものでもないんだけどなあ」
……声が、聞こえた。無邪気で幼い声。
「まあ、君が運命を回避するから僕が出向いたわけだけど」
「これほどとは思わなかったなぁ」
姿は見えないがおそらくこの声の主が脅威。
フルに頭を回転させ、その脅威から逃げる策を考える。
――――「でも、次は躱せないね」
その言葉を理解する間もなく、俺の意識はここで途絶えた。
◇
目を開けると真っ白な空間にいた。
「ここは、どこなんだ?」
記憶は鮮明だし、体に異常はない。
……だが俺は殺されたはずだ。
ならここは、天国だろうか?
「ようこそ、死者の間へ」
突然聞こえたその声に俺はとっさに振り返るとそこにはおそらく10歳くらいであろう少年が笑顔で立っていた。
「お前は……誰だ?」
この声は俺を死んだ時に聞こえた声と同じ。
何故かはわからないが今は危険を感じない、しかしこいつが俺を殺したのは間違いない。
「僕は神様だよ」
こいつはどうやら神様らしい。普段だったら絶対に信じないがまあ、何となく特別だってが分かる。
なんというか雰囲気というかオーラを感じる。
先の神様の言葉からここは死者の間という場所ということが分かる。
死者の間というからにはやはり俺は死んだのだろう。
「それにしても君は素晴らしい才能をもっているね。神様からの一撃を避けるなんて、それこそ神がかっているよ」
やはり俺を殺したのはこいつか。
「お褒めに預かり光栄ですが、私を殺したのはあなたでしょう? どういう要件で私を殺したのですか? 地獄にでも送るつもりでしょうか?」
「アハハッ! そう、君を殺したのは僕だ。最初の一撃をよけるなんて思ってもみなかったよ」
金髪碧眼、少年のような見た目をした神様は笑いながらあっけらかんとして答える。
何がそんなに楽しかったのか、ひとしきり神様は笑うと不意に神様は真面目なトーンで話始める。
「まぁ、雑談はこれくらいにして、本題へ入ろうか」
雑談か。殺された本人としてはそう易々と流されるのは少し釈然としないものがある。
そんな事を考えていることを知ってか知らずかは分からないが全く気にした様子も無く言葉を続けていく。
「単刀直入にいうと、君には異世界に転生してもらう」




