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没落!

 寧寧は目の前の病に侵され醜くなった少女が帝の家族であるというのは信じられなかった。たしか噂では帝は繍なる宰相が簒奪し、前の帝の一族は没落したということだった。でも、寧寧のように被支配者階層からすれば関係ない事であった。そう日々の生活が変わらなければ・・・でも繍麾下の兵隊によって寧寧の家族も生活も全て奪われたが。


 しばらく看病していたらその少女はなんとか口はきけるようになった。しかし、言葉は都風で優雅なのかもしれないけど、寧寧はその半分も意味を理解することができなかった。

 寧寧が理解したのは次のような事だった。その少女は、名前を緋紗媛といい前の皇帝の第十八皇女だということだった。

 繍は腐敗撲滅を訴え帝を廃し自らが即位し、前帝一族の大半は殺害されてしまった。その手から緋紗媛は逃れたが、途中で一人になり病を得ても、ある目的のために旅を続けていたという。それは東海の彼方にある伝説の島に住まう龍に会うためだという事だった。


 それを聞いたとき、寧寧は彼女も目的地は一緒だと分かった。そう龍にしてくれるという島へ。しかし彼女は耐えられそうにはなかった。


 「緋紗媛さん、どうしてあなたは龍になろうというの? ご家族を殺された復讐のため? それとも帝位を奪うためなの?」


 寧寧はそういったところだろうと思っていた。帝一族という特権階級から没落したのであれば元の座に戻ろうとするのが、権力の味を知った人間が望むことだと思っていた。しかし、彼女は意外な事をいった。


 「それはねえ・・・わたしの一族はひとびとの血をすすっていたから、こんな事になったのよね。もう、戻りたいとはおもわないけど・・・もし、会えるのなら龍神様にこの世界を救ってほしいと願うためよ。

 でも、もうわたしはたどり着けないと思うわ・・・もし、あなたさえよければ龍神様にお願いしてくれないかな。愚かなり繍の野望を止めて、この世界に安らぎを与えてほしい」


 そういうと懐から小さな璧を取り出した。そこには見たことのない文字がびっしり書いていた。それはなんかの呪文のようだった。それを寧寧の手に握らせると、最期の生気を吐き出すようにこういった。


 「あなたが持っているその龍の契約が書かれた石板だけでは龍神様の許にいけないわよ。この壁を持っていかなければ島に行っても喰われるだけよ。それがあれば龍神様に会えるわよ。あとのことは・・・あなたが決めてちょうだい」


 そういった緋紗媛はその晩亡くなったが、寧寧には彼女が持っていた多少の路銀が残された。それで簡単な葬儀を上げたが、繍の追手があるような気がしたので元帝の皇女というのを隠してあげたので、彼女の亡骸は他の貧者と同じように葬られてしまった。

 

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