化け物との対峙:後編
この時の俺の頭は冴えていた。
有り得ないようなものを何回も見たから感覚が麻痺したのかもしれない。
結果はどうあれ魔法石の光のおかげで相手に隙が出来た。
このチャンスを逃す手はない。
俺は二人の手をとって洞窟の外へと抜けた。
そのまま岩陰に身を隠し化け物の動きを見る。
化け物は洞窟の中から出てくると辺りを見渡す動作をしばらくすると、羽を広げ飛さっていった。
ふぅ、助かった。
九死に一生を得るってまさにこの事だな。
さて、残る問題をどうするか…。
俺は問題の二人と向き合う。
洞窟にいた身元不明の少女となぜか婆さんの魔法石から出てきたまたまた身元不明の少女。
手も触れれたし幻じゃないよな。
「久しぶりじゃの。若いの。」
石から出てきた少女に話しかけられた。
久しぶりって会ったことないよな…?
「あの…俺達会ったことありましたっけ?人違いじ ゃないですか?」
「何抜かした事言っておる。牢屋で仲良くしたじゃ ないか」
「婆さんしかいないが」
「私がその婆さんじゃよ」
「いや…、婆さんは俺の目の前で死んだんだけど」
「だからここにおろう」
「ははは、じゃあ今の婆さんは幽霊ってことです? 面白いこというなぁ」
「そうじゃ、そうじゃ。生きているお主が憎くて死
んでも死にきれんかったわけじゃ」
「はは、もちろん冗談ですよね?」
婆さんならやりそうで怖い。
「もちろん冗談じゃよ」
冗談でよかった…。
真面目な話に戻ろう。
「一応確認するけど婆さんで間違いないですよね」
「なんじゃ。まだ疑っておったんか。しつこい男は 嫌われるぞ。見た目で分からんか?」
そう言われると何となく面影が……ない。
「婆さんの髪の色は白だったし」
「全部白髪じゃ」
さいですか。
「そもそも何で若返っているんですか」
「正確に言えば若返っているとは違うがの。
お主に渡した石には魔力でわしの記憶が刻まれて あってな。魔法石にはわしが死んだ後発動したと きに蓄積した魔力が最も力を発揮出来る形を成す ように作られておる。わしの最盛期は17、18じゃ ったからこの姿じゃ」
一応納得は出来た。
「魔法は使えるんですか?」
「ああ、使えるぞ。ただし制限がある。
魔法石に蓄積した魔力量しか発動できん。それを 超えればわしは体もろとも消える。だから緊急事 態意外は見守るだけはするから頑張れよ」
足手まとい要員確定。
洞窟の少女もさっきの様子見てれば戦う事は無理そうだしな。
今の俺達はいわゆる弱小パーティーだな。
異世界で生き延びるのも女運の悪さが仇になるか。
「とりあえずまとまった話は後にして山を降りるぞ あいつが戻ってきたらヤバい」
俺たちは山を下り始める。
追伸。家族へ。
俺、精一杯生きています。