化け物との対峙:前編
俺は予感した。
これは詰んだな…と。
状況を説明しよう。
俺の後ろにはさっき出逢った少女。
そして目の前には見上げるほど大きい鳥らしき化けもんだ。
例えるならそうだな…グリフォンかな。
ライオンのような胴体に鳥の頭。もちろん羽がある
そしてこいつは見覚えのある俺の作った不格好なワシ?を加えている。
こいつにやられたのか。
この洞窟に入った途端嫌な予感がしたんだよなぁ。
やけに広い空間に食べかすのような残骸。
おそらくこいつの巣だな。
さて、どうするか。
後ろの少女は…うん。だめだ、使えない。
完璧に腰を抜かしている。
俺一人なら出口に近いから逃げれるだろうが、そうなると少女が確実に死ぬ。
俺もあの爪に切り裂かれれば死ねるな(確信)
俺と少女が生き延びれる方法…くそっ、思いつかねぇ。
それなりに経験は積んだが実践は今回が初だ。
頭が真っ白になって何も考えれない。
このままじゃあ共倒れだ。
その瞬間化けもんが足を振り上げた。
その足はそのまま俺に向かって振り下ろされる。
俺は間一髪それを避けた。
あっぶねぇ。俺のいた場所は踏み潰されへこんでしまっている。
俺は少女の横まで追いつめられてしまった。
あいつの動きはでかい分、鈍い。
何か隙が出来さえすれば逃げる可能性がある。
何か持ってないか。
ポケットをまさぐる。
ナイフ…無駄死にするだけだ。
拾った果物…気はそらせそうだが時間は稼げない。
学生手帳…こんなもんまだ持ってたか
百円玉…あっちの世界にいたとき無くしたと思って たやつだ。
なかなか使えそうな物がない。
その間にあいつはじわじわと近づいてくる。
俺は次に石を取り出す。
「これは…」
確かまだ牢屋にいたとき婆さんに形見として渡された魔法石だ。こんなことも言っていた。
「命に危険が迫ったらこれを使いなさい」
今こそそのときだ。すっかりこの石の存在を忘れていたがこんな場面に使えるとは。
ありがとよ、婆さん。いつかしっかりした墓を立ててやるよ。
婆さんへの感謝を胸に俺は魔法石を…………………
………しまった。使い方を聞いていない。
いや、まだ望みはある。
この世界の住人である少女に聞けばきっとわかる。
「なあ、これの使い方知らないか」
「…知るわけないでしょ」
予想はできていたが、現実は厳しいな。
こうなったらやけだ。
手当たり次第に物を投げる。
やはり敵は動じない。
「くそがぁぁ」
最後に残った魔法石を敵に投げつける。
望みが消えた。魔法を使うにもパニック状態で頭がうまく働かない。
異世界に来てここからって時に死ぬのかよ。
突然洞窟が光に覆われた。
下げていた頭を上げると敵に投げた魔法石が輝いている。
「魔法石が発動したのか…?」
魔法石はそのまま輝きを増してゆく。
「くっそ、何にも…見えねぇ」
輝き続ける光に耐えきれず俺は目を閉じた。
それからどれくらい経っただろうか。
次第に輝きは少し和らぎ俺は目を開いた。
未だに輝き続けるが少し異質だ。
光が変形している。
空中にあった光は地上へと降りてきて小さく変形してゆく。
最終的にその光は俺くらいのサイズに変わった。
その後形態が変わり人型になりだんだん光は失われていった。
光は完全に光は失われ残ったのは
俺と同い年位のピンク髪の少女だった。
………………は?