お題【ライフポイントカード】
ある朝突然に、全ての人類の額にカードが貼りついた。
カードの中央には光る数字のみが表示されていた。
政治家や大富豪の数字は桁違いに大きかったため、最初は資産とかカリスマとかの値じゃないかと憶測されたが、医者やアーティスト、アスリート、アイドルの中には数字がマイナスになる者も少なくなく、数字の意味についてはブックメーカーの対象にさえなった。
最初の一日が過ぎるとカードはなくなったが、強く念じる間は再出現するということがすぐに判明した。
見えなくなっただけで、消えたわけではなかった。
自分の数字を見るには鏡を見て念じる必要があった。
鏡による媒介が可能ならばとカメラ撮影をはじめ様々な方法が試された。
生放送で、顔が映っている状態ならば、テレビだろうがインターネット経由だろうが、誰か一人でも見る人が念じればカードは出現することが突き止められた。
生活の中で数字が増減することもあったため、人類は根気よく数字の意味を探り続けた。
そしてたどり着いた人類の答えは、「他人の人生を踏みにじると数字が増え、他人の人生を助けると数字が減る」というものだった。
例えば、近隣の住民二十人へ執拗な嫌がらせを行っている者は毎日二十ずつ数字が増えた。
百人の従業員を安い賃金でこき使う経営者は、毎日百ずつ数字が増えた。
詐欺や性暴力、虐待、いじめなどを行った者は、二万、三万と数字が増えた者も居た。
被害者の未来を閉ざした場合、その未来の日数そのものも全て加算されるのだとわかった。
殺人の場合は未来日数の二倍、加算前に反省がない場合も二倍、あとはどうやらそれらの加害を加算前に隠蔽しようとした場合も二倍……合計して八倍ついたと思われる者も居た。
全ては統計から導き出された結論だった。
誰かが、数字の多い者は人類にとっての癌細胞のようなものだから殺しても良いと言い出し、実際それを実行する者も少なくなかった。
そこまでではなくとも、数字の多者たちは投獄されたり、暴力に曝されたりもした。
ただ、数字の多い者は強い権力を持つ者も多く、そういった人々は安全を確保できていたし、また、数字の多い者への私刑に参加した人たちの数字もそれはそれで増加したため、数字狩りは次第に沈静化していった。
それからしばらく経ったある朝突然に、天より声がした。
『ライフポイントを使用すると人類を救う事ができます。ライフポイントを使用しますか?』
大きな数字を持つ者たちの中には狂喜乱舞する者がいた。
数字を集めておいてよかったと、数字は強さだと、生き残るには数字が必要なのだと。
それとは逆に、ポイントを減らすべく私財を投げ売って慌てて人助けに走る者も居た。
自暴自棄になる者も現れ、数字の意味が決定された直後以上に人が殺された。
一日が経過したとき、誰がどう決定したのかわからないまま、天から再び声がした。
『ライフポイントカードを使用します』
人々が次々と死に始めた。
ポイントの多い者から先に死んでいるということは、誰もがすぐに気付いた。
まだ死んでいない人たちが、自分のポイントを見つめながら怯える中、世界中を飛び交っていた訃報が突然途絶えた。
何もかもが突然だった。
ライフポイントの使用により人類は半減したと、後の調査には記録されている。
<終>




