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お題【情けは人の為ならず】

 神田正カンダ・タダシは心優しい少年だった。

 生き物が好きで、捨てられている動物や怪我をした野生動物を見ると放っておけずついつい拾ってきて世話をしてしまう性格で、鳥や動物ばかりか魚や昆虫に至るまで、とにかくどんな生き物をも可愛がり大切に育てていた。

 そんな生き物の中でも彼は特に蜘蛛が好きだったという。

 仏教の説話にある「蜘蛛の糸」の主人公の名前が、自分の名前に似ていると幼い頃に教わったおかげで、カンダタを救った蜘蛛をとりわけ大切に育てていたという。


 彼が社会人になり一人暮らしをするようになってもその情け深さは変わらず、稼いだ給料の大半を動物や魚や昆虫たちの食費や治療費、環境維持のために費やしていた。

 だが、そんな彼の性格につけこむ者も世の中には居て、彼の勤めていた工場の副所長もその一人だった。


 ある日、副所長は神田正を保証人にして多額の借金をしてまわり、更には工場の金まで持ち逃げして姿をくらましてしまった。

 借金取り達はそんな副所長の足取りをつかめなかったらしく、神田正の家に取り立てに来た。

 副所長は相当酷い所からも借りていたようで、ある日を境に神田正自身も忽然と失踪してしまう。借金取りに連れて行かれたんじゃないかと誰もが考えたが、係わり合いになろうとする者は一人もいなかった。


 そして何ヶ月も過ぎ、人々が失踪した彼らの話題を出さなくなった頃、とあるヤクザの事務所がナニカに襲撃された。

 死体はどれも粘つく繊維のようなものが絡みついており、ことごとく体液を抜かれていた。

 その翌日、失踪していた副所長の遺体も工場の入口近くで発見された。死因はヤクザ達と同じだった。


 死者が公になったことでようやく事件として動きはじめた警察が神田正の部屋を捜査した時、彼の部屋に生き物の痕跡は何もなく、ただ無数の蜘蛛の脱皮した皮のみが散らばっていたという。

 最も大きい皮は胴体部分だけで1m近くあり、専門家が鑑定を依頼されたのだが専門家が手にする前にどこかへ失せてしまった。




<終>

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