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お題【めがね】

 朝起きると、僕の手の中にはめがねがあった。すると昨日のアレは夢ではなかったんだな。



 

 昨日、サークル飲み会の帰り、僕は呼び止められた。

 声のする方を見るとマンガかってくらいステレオタイプな「占い師」の恰好をしたオバサンが僕に手招きをしていた。

 ちょっと酔っていた僕は好奇心のままに近寄り、オバサンが指さした椅子へと座ったわけだ。


 僕が何か話し始める前にオバサンは僕に一つのめがねを差し出した。それは赤くてチープなプラスチックフレームのオモチャみたいなめがねだった。


「別に目は悪くないッスよ」


 僕がそう言うと、オバサンはオジサンっぽい野太い声を出したっけ。


「そのめがねをかけていると、ささやかな願いが叶うんですヨ」


 ほんとかな。

 かけてみるとフィット感は案外悪くない。

 それにしてもささやかな願い? それならお金払わないで済めばいいな。んでこのめがねもタダでもらえたらいいのに。

 冗談半分でそんな風に考えていた僕に、そのオジサンライクなオバサンはにこりと微笑みながらこう言った。


「そのめがね、差し上げますよ。もちろん占いのお代もけっこうです」


 そしてそのタダ占いでは何かといろいろ当てられて、半ば怖くなって逃げ出して……帰宅して寝て起きて今、めがねが僕の手の中にある、と。




 ささやかな願いってどのへんまでが「ささやか」なんだろう。

 あと回数制限とかあるのかな……そんなことを考えているうちに大学に着く。

 今日の休講を掲示板で確かめていると、同じゼミのナカイが話しかけてきた。


「よっ! シャレオツチープなめがねしてんな!」


 そういやナカイには昨日の飲み会参加費、貸してたはず。こいつ貸した金いっつもなかなか返さないんだよな。


「あー、あーあー。昨日、飲み会参加費、ありがとな。今手持ちあるから返すよ」


「お、おう」


 あっさり戻ってきた。

 すげーじゃん、このめがね。


 僕はそのまま午前の講義に出る。

 先週、寝坊して出られなかったやつだ。

 同じサークルのヤマブチを見つけ、先週の板書を欲しそうな目で見たら、まだ何も言っていないのに「これ、欲しいんだろ?」と、板書画像を送ってくれた。


 昼休みに学食に行き、同じ高校出身のタキタには、何も言っていないのに唐揚げ一個もらったし、このめがね本当スゲー。

 これでうちのサークルナンバーワン美少女のソノカワさんに会えたら最高なのになぁ……なんて考えていたら、学食に来たよソノカワさん。


「私に会いたいとか考えてた?」


 そんな小悪魔スマイルでなんてこと言うんだこの子。

 可愛い過ぎる。無敵すぎる。やばい惚れ直す。

 いやーこれでソノカワさんと付き合えたらなぁ。あのわがままなおっぱいを自由にできるとか、このめがねの力でなんとかならないものだろうか。


「ならないわよ。っつーか、キモッ」


 見るとソノカワさんは自分の胸を両手で隠して、今まで見たことのないエグイ顔で僕を睨んでいる。


「あれ、気付いてないの?」


 いつの間にかソノカワさんの隣に立って居たヤマブチが、僕の顔を指さしている。


「そのめがね、今『気付いてないって何が?』って文字が表示されてるぜ」




<終>

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