桜の木の下には
誤字脱字は気づき次第直していきます。
つたないですがよろしくお願いします。
桜の木が、生えている
公園のそばにある、湖の近くに生えている桜の木。彼女もこの桜が好きだった。
いつもこの桜が咲くと、見に来ていた。名前は美桜。名前を言ったとき、素敵な名前でしょ。って笑う
彼女を見たとき、僕の心は彼女の虜になってしまった。
この桜の傍でいろいろなことを話した。お互いの家の事、学校の事、友達の事。
僕と彼女は境遇がとても似ていた。
僕も美桜も両親が多忙で滅多に家にいなかった。学校では友達は少なく、どこか空気のような扱い。
へんなやっかみを受けることも多かった。
特に美桜は酷いいじめにあっているようだった。
いつもどこかに傷があり、僕が心配そうにすると大丈夫だからと優しく言っていた。
だが、彼女の長かった髪が短く雑に切られているのを見たとき、猛烈な怒りが湧いてきた。
僕はまず、美桜のことを虐めている奴らを調べ上げた。
虐めグループは四人、男二人に女二人。僕は絶対に許さなかった。
男の一人は、美桜を毎回手ひどく殴っていた。だから、縛り上げた後バットで殴り続けた。
半身不随になり、一生寝たきりの生活らしい。
もう一人はあることないこと言いふらし、美桜を陥れた。
そいつは考え付く限りの悪評を流した。どうやら家族ともども、遠方へ引っ越すらしい。
前に家の前を通ったらすさまじい荒れようだった。
女の一人は美桜の髪をずたずたにした。そいつの髪をバリカンでめちゃくちゃにした。
うっかり皮膚を少し裂いてしまった。
もう一人は美桜に生ごみを頭からかけた。ゴミ捨て場から持ってきた生ごみの袋の中身を頭からかけた後、無理やり口に入れ飲み込ませた。
女二人はこれだけでは足りなかったので、全裸にした後ホームレスのたまり場に放置した。
四人の末路は町中を駆け巡っていった。もちろん、僕には疑いの目はかからない。
しかし、美桜だけは僕を疑った。僕が彼らに酷いことをしたのではと詰め寄った。
僕はすべて教えた。美桜はきっと喜んでくれると思ったんだ。君のためならなんだってするよと、僕が言うと、美桜はひどく怒ったんだ。
――「どうしてそんな酷いことしたの!?」
――「どうしてって…美桜を虐めた奴らだよ?」
――「そんな理由で…」
絶句した彼女を不思議そうに見ていると、美桜はどこかへと行こうとした。
――「どこへ行くんだい?」
――「あなたとは一緒にはいられない。もう近づかないで。私は確かに虐められてたけど
こんなこと望んでいなかった」
そう吐き捨てて、美桜は立ち去って行った。
僕は君のためを思ったんだ。
どうして僕を嫌うんだ。僕の傍から離れようとするんだ。
美桜は…美桜はきっとあいつらに虐められておかしくなったんだね。
きっと、気が狂ってしまったんだね。
僕は美桜を自分の家の倉庫に連れてきた。歩いているところ、薬を嗅がせて連れてきたんだ。
泣きわめく美桜を必死になだめて、なんとか正気に戻そうとした。
けど無理だったんだ。美桜はもう、元には戻らなかったんだ。これ以上、
おかしくなった美桜を見たくない。
僕は気づいたら、彼女の首を絞めていた。
ぐったりした美桜を…僕は、桜の木の下に埋めたんだ。
美桜が好きだった桜の下に。名前の通り美桜は、美しい桜に変わった。
美桜の血を吸って日に日に美しくなっていく桜を僕はずっと見ていた。
この時期になると、僕は決まって美桜の桜を見に来ていた。
ただ最近、急にまた美桜の夢を見たり美桜の声が聞こえるんだ。
きっと彼女が呼んでいるんだ。彼女のそばにまた行きたい。
僕は桜の木の下に腰掛けると、首を、掻き切った。
『続いてのニュースです。湖で自殺した男性の足元から、白骨遺体が発見されました。
鑑定の結果、五年前失踪した鷹野美桜さん、当時17歳であること判明し、殺害後、桜の木の下に埋められたものと考えられています。また、自殺した男性は美桜さんと親しい間柄だったとのことで今回の自殺と何らかの関連があるものと考えられ…』
最後までありがとうございます。