真実の願い
この話もそろそろラストスパートです。
ENDマークまでもう少し・・・
星くず桜 Pary13 真実の願い
「でしょう、毎年これを食べるのがあたしの楽しみなの。味もすごくおいしいし、でもね」
「でも?」
「去年まで、おねえちゃんと真矢さんが仲良さそうに食べてるのが羨ましかった。お母さんにはお父さんがいるし、あたしだけひとり・・・」
「彼氏とか、いなかったの?」
聞いていいことなのかわからないけど、少しばかり気になることも事実だ。
「あたしモテなかったもん。あたしに近づいてくる人って、みんなおねえちゃん目当てだったし」
「まさか・・・」
こんなに可愛いのに、美紅自身に関心を持つ男がいないなんて、とても信じられない。
「本当だってば。高校のときなんか・・・ああ、もう、そーゆー不愉快なことは思い出したくない!」
「まあ、俺も他の男のことなんか聞きたくないな」
うん、これが本音。今美紅の隣にいるのは俺なんだし。
「そうだね、今年は蒼くんが一緒だから、すごくうれしい。早く食べよ!」
美紅が嬉しそうに言う。来てよかったな、今日初めてそう思った。
葛桜を黒文字で切り、口に運ぶとひんやりとした食感とともに上品な甘さが広がった。
うちで食べていたものよりはるかに高級だけど、葛の滑らかな口当たりが子供の頃のことを思い出させる、懐かしい味だ。
「今日はごめんね、無理矢理家に連れてきたりして。緊張したでしょ」
「うん、正直言って昨日はあまり眠れなかった。でも、今は美紅の家族に会えてよかったと思ってる」
「あたしね、本当はちょっと怖かった。おねえちゃんを見たら蒼くんがあたしよりおねえちゃんがよかった、って思うんじゃないかって」
「美紅・・・」
(婚約者がいなかったら、お姉さん好きになってもいいわけ?)
さっき、何も知らなかったとはいえ、ずいぶんひどいことを言ってしまった。
今さら謝ったところで、美紅の気持ちが治まるとは思えない。
いや、かえって惨めな気分にさせるだけかもしれない、コンプレックスとはそういうものだ。
「美紅、さっきの話だけど」
「さっきって?」
「もし、織姫と彦星みたいに年に一度しか会えなくなったら、って話」
「うん」
「そんなこと考えるのもいやだけど、もし、そうなったとしても、俺はずっと美紅が好きだから。たとえ何年経っても他の人を好きになるなんてことはないから。今までも、これからも、俺が愛するのは美紅だけだ」
そう、朱里さんに恋人がいようといまいと、そんなことは俺には無関係だ。
どんなに美人でも、才能があっても、朱里さんは美紅の姉、それだけだ。
美紅は俺にとって唯一の大切な人、愛する人。
誰にも美紅の代わりは出来ない、出来やしない。
俺は美紅を見つめた、見つめ続けた。
この思いが美紅に伝わるように。
美紅の辛い気持ちが少しでもなくなるように。
もう、自分のことはどうでもいい。
美紅が幸せな気持ちでいてほしい。
美紅に笑っていてほしい。
願いごとは、それだけだ。
他のことは
なにも望まない・・・。
今、俺が欲しいのは
愛する人の笑顔だけ・・・。
何気ないひとことが、その人にとっては致命的だったりすることもありますね。
でも、真実、相手を思いやる心があれば、きっとその思いは届くと信じています。




