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ロックンロールの核心は「ズレ」にある — あるカリスマ・ミュージシャンが語るリズムの哲学  作者: はまゆう


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第2回 1960年代、あの狂騒の日々—ビートルズ、ストーンズ、そしてブルースの逆襲

みんな、元気か。俺だ。


今回はリクエストに応えて、1960年代の話をしよう。俺がまだ20そこそこだった頃、ロンドンとリバプールと、そしてアメリカから流れてきた音楽の話だ。


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■ ビートルズ — あの4人に会った夜


1963年。俺はまだ無名のギタリストで、リバプールの小さなクラブでくすぶってた。ある晩、マネージャーが「すごいバンドがいるから聴きに行け」って言うんだ。場所はあの有名なキャバーン・クラブじゃなくて、もっと小さい汚い箱だった。


そこで見たのがビートルズだ。


驚いたのはな、ステージに立った瞬間の空気の変わり方だった。それまでは騒がしかった客が、一瞬で静まり返る。そしてポールがベースの最初の1音を鳴らした——「I Saw Her Standing There」のあのイントロだ。


あの時、俺は悟った。


「あ、こいつらは違う世界に行くんだな」って。


ジョンのギターはがさつだった。正確さなら俺の方が上だったかもしれない。でもな、彼には「間」があった。音を出す前の一瞬、客をじらす間合い。そしてリンゴのドラム——なんであんなに独特なのか、長い間わからなかった。


後年、リンゴと酒を飲む機会があって、直接聞いたんだ。「お前のあのノリ、どこから来るんだ?」って。


彼は笑ってこう言った。


「俺、左利きなんだ。でも右利き用のドラムセットしかなかった。だから全部、裏返しに叩くことになったんだよ」


つまりな、彼のグルーヴの秘密は「物理的な制約」だったってことだ。不便さが、独自のスタイルを生んだ。完璧じゃないことが、彼の武器になったんだ。


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■ ストーンズ — キース・リチャーズと出会ったスタジオ


次にストーンズだ。


1965年、俺はロンドンのオリンピック・スタジオにいた。たまたま知り合いのエンジニアがいて、セッションを見せてもらえることになったんだ。入ってきたのはローリング・ストーンズ——まだ若くて、ガリガリに痩せてて、目だけがギラギラしてた。


その日録音してたのは「(I Can't Get No) Satisfaction」だ。


あのギターリフ、どうやって生まれたか知ってるか?キースが言うには、安いホテルで夜中に目が覚めて、ギターを手に取ったらたまたまファズ・エフェクターが繋がったままだった。で、適当に弾いたフレーズをテープレコーダーに録って、また寝た。翌朝聴き返したら「なんてこった、これはすごい」ってなったらしい。


つまり、あの伝説のリフは寝ぼけてた時に偶然生まれたんだ。


でもな、ここが重要なポイントだ。偶然だけじゃない。キースはあのリフを聴いて「これだ」と直感した。そしてバンドに持ち込んで、みんなで肉付けした。


偶然を見逃さない目。それが天才ってやつだ。


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■ ブルースの逆襲 — 白人の身体に入った黒い魂


60年代のイギリスで起きた最大の事件はな、アメリカのブルースが若い白人の身体に乗り移ったことだ。


俺たちはみんな、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、B.B.キングのレコードを聴いて育った。でもその音楽が生まれた場所には行ったことがない。ミシシッピ・デルタなんて、地図の上の点に過ぎなかった。


だから俺たちは「想像でブルースを演奏した」。


クラプトンはそれを「本物を求める旅」にした。ジミ・ヘンドリックス(彼はアメリカ人だけどイギリスでブレイクした)は「黒人音楽を黒人でない方法で表現する」という逆説的な道を選んだ。


そしてストーンズは「悪い白人のブルース」をやった。ビートルズより汚くて、危なくて、でもなぜか品があった。


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■ 本当の話 — ある日のマディ・ウォーターズ


1964年。マディ・ウォーターズがイギリスに来た。俺は必死でチケットを取って、最前列で見たんだ。


演奏が終わって、楽屋に忍び込んだ。会いたくて仕方なかったんだ。警備員に怒鳴られたけど、マディ本人が「入れろ」って言ってくれた。


俺は震える声で言った。


「あなたの音楽がなければ、俺たちの音楽はありません」


マディは笑って、こう言った。


「息子よ、音楽に国籍はない。ただ、真実か嘘かだけだ」


その言葉を、今でも胸に刻んでる。


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■ 次回予告


さて、長くなった。編集者がまた怒るだろうな。


でもな、1960年代はまだ終わらない。次は「1967年、サマー・オブ・ラブの真実」だ。あの年、何が起きて、何が変わったのか。そして俺が体験した、ある伝説的セッションの話をしよう。


それまで、レコードを聴いて待っててくれ。


ロックンロールは永遠だ。

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