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ラストカット
夜の交差帯。
風はない。
霧は低く、薄く、地面の亀裂に沿うように漂っている。
裂土の黒と、霧界の白が、静かに重なっている。
中央。
名のない形が、わずかに傾いたまま止まっている。
これ以上は進まない。
これ以上は転がらない。
同時に。
反照もまた、淡い光を内に抱えたまま、静止している。
触れ合ってはいない。
距離はある。
境界の厚みが、その間に横たわっている。
だが――
完全停止ではない。
名のない形の内部で、
目に見えぬ微振動が続いている。
乾ききらない揺れ。
反照の核でも、
光がわずかに乱れ続けている。
冷たい震え。
二つは、互いを知らない。
それでも。
同じ律動が、交差帯の奥で重なっている。
霧はそれを包み込み、
地面はそれを受け止める。
夜は深い。
だが、そこには断絶の鋭さはない。
境界は、かつて分けるためにあった。
乾きと湿りを。
止まるものと、留まらないものを。
裂土と霧界を。
だが今、境界は繋いでいる。
触れずに。
越えずに。
ただ、条件を重ねることで。
名のない形の震えが、わずかに弱まる。
反照の光が、わずかに揺らぐ。
それでも、消えない。
完全な静止は、訪れない。
夜の中央で、交差帯は静かに呼吸している。
交差は、選ばれたのではない。
起きてしまったのだ。




