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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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③ 咀嚼の選択(転換点)

ヒロインの手のひらに、欠片がある。


薄く、均一な焼色。

断面には幾層もの線が走っている。


軽い。

だが、存在は明確だ。


彼女はそれを見つめる。


時間は長くない。

しかし、選択肢は十分にある。


捨てる。


絨毯に落とせばいい。

誰かが片付ける。


叫ぶ。


「医者を!」

「魔法を!」

言葉はいくらでもある。


泣く。


崩れ落ちれば、物語は正しい方向へ進む。


だが彼女は、そのどれも選ばない。


視線が、わずかに柔らぐ。


それが愛情かどうかは分からない。

確認かもしれない。

無意識の動作かもしれない。


説明は、与えられない。


彼女は手を口元へ運ぶ。


止める者はいない。

止める理由も、まだ定義されていない。


欠片が唇に触れる。


一瞬、光を反射する。


そして、消える。


もぐ。


広間に響く音は、先ほどと同じだ。


王子が立てた音と、同じ高さ、同じ湿度。


沈黙。


咀嚼はゆっくりだ。

急がない。


味わうように、確かめるように。


誰も動かない。

息を呑むという行為すら、控えられている。


音が止まる。


彼女は飲み込む。


何も起こらない。


少なくとも、すぐには。


広間の空気は変わらない。

王子は壇上にある。

欠けた縁は、そのままだ。


ヒロインは顔を上げる。


まだ何も言わない。


沈黙が、均一に広がっていく。

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