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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

【余韻が残る3分小説】あの音を、まだ覚えてる

作者: 花*Hana
掲載日:2025/12/22

「とうもろこしの粒って、何個あると思う?!」

薄暗い教室の中、得意げな笑顔を私に向けてくるコイツが嫌いだ。


この広い世界に知らないことなんて山ほどあるに決まってる。

楽しそうに毎日調べては私に問題を出してくる。


「必ず偶数になってるんでしょ。」

だから私は死ぬ気でうんちくを覚えた。

そうすることで私はうんちくに勝った気になれるのだ。

「えー!それも知ってるの?!」

「萌が知ってることは私も知ってる。」

「本当に瑞希はすごいね!」

そう言って、いつもクシャっと笑う。

一生懸命うんちくを探してる時は、そこにしか気持ちが行かないことも知ってる。

だから私は死ぬ気で覚えた。


早く飽きればいいのに。


綺麗に整列した机と椅子をわざと壊して2人だけで話しているこの時間は、少しだけ私を悪戯に自由にしてくれる。


だけど世界は優しくない。

スピーカーから流れる大音量の機械音は、センチメンタルな気持ちを現実に戻させる。


「瑞希、帰ろっ!」

萌が机からジャンプすると風に混ざり甘い香りが鼻を刺激する。

「そのシャンプー本当にいい香りだよね、私も変えてよかった。教えてくれてありがとう、萌」

下校の鐘に紛れ微笑む。

聞こえてるのだろうか。


帰り道は割と平和で、電柱の並ぶ商店街を通り抜け、踏切を渡り、その先のY字路でバイバイする。

コロッケのいい匂いに負けて2人で半分こするときもあった。

1日の中で1番好きな時間だった。


「鐘の音って世界でいちばん好き!なんかさ…“変わらないもの”って感じがして好き。私がどんな日でも、ちゃんと鳴ってくれるから。」


目の前が白く、黒くなっていくのを感じる。

頭は冷たく、次第にこめかみから熱くなってくる。踏切の鐘が鼓動と一緒に鳴り響く。


「だったらさ、」


五時を知らせる、夕焼けチャイムが鳴った。


色んな鐘の音が鳴ってるよ、ほら。

これが好きなんだよね?

好きなものになれてよかったね!


ずっと知らないふりをしていた。

警鐘はとっくの昔から私の中で鳴っていた。


今、あの音は、私にとって――

世界で、二番目に好きなものになった。

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